2008/3/14

検証-ムッサー・エレクトリック・ヴィブラフォン・・  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


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毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。第八十六回目の今日は「ムッサー・エレクトリック・ヴィブラフォン-検証編」です。

今から40年ほど前に、ヴィブラフォンを電化する試みが製造メーカーで行われていました。唯一市販に至った、純粋にエレクトリック・ヴィブラフォンと呼べるものはディーガン社の「エレクトラ」というポータブルタイプの電気ヴィブラフォン。
これは現在でもコアなファンが所有して実際に使っているので、ヴィブラフォンを追っ駆けていると、いつかは出会うでしょう。

ディーガン社のライバルで世界最大のヴィブラフォン・メーカーであるムッサー(MUSSER)社はどうしていたか?

その辺りの事やヴィブラフォンの電気増幅に関しては昨年6月後半から7月にかけて金曜特集で「エレクトリック・ヴィブラフォン小史」としてまとめたので参照して下さい。

■金曜特集『エレクトリック・ヴィブラフォン小史』
その1/07年6月29日
その2/07年7月6日
その3/07年7月13日

また、僕自身も電気増幅を試みた時期がありその時の事は同じく金曜特集の『ビブラート効果の考察・・・前半』で触れています。

先日、当BBSにアマチュア・ヴァイビストのMoriさんからブログで取り上げた「エレクトリック・ヴィブラフォン」に関する投稿をいただき、やり取りをする内にMoriさんがムッサー社オリジナルのバーマイクロフォン付きのエレクトリック・ヴァイブ(カタログに表記されていたそうです)を現在でも使われているとのお話をお聞きしたので、「是非画像を!」のリクエストに応えていただきました。

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M45にバーマイクが標準装着されたムッサー・エレクトリック・ヴァイブ
M55に装着されたタイプも販売されていた

よく見ると「MUSSER」のロゴが二重になっていますね。下が本体に標準のロゴ、上がバーマイクに表示されたロゴ。

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フレームの外側にバーマイクが装着されている

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そのままバーマイクのシールドをアンプに差し込めばOKというシンプルなもの

この時期はノーマルなヴィブラフォンにバーマイクを装着して演奏するのが流行りました。
少しその頃の資料を調べてみました。

1970年頃の写真を見ると、すでにムッサーはバーマイクの開発を完成させていて、あちこちでノーマルなヴィブラフォンにバーマイクを装着して演奏する姿があります。

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ゲイリー・バートン1970年のショット。バーマイクを装着している

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ロイ・エアーズも同じムッサーのM55にバーマイクを装着している

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対して御大ミルト・ジャクソンがMJQでディーガン「エレクトラ」を演奏する珍しいショット。

70年に入ると世の中電化一直線だったのですね。

ムッサー社はディーガン社のように「エレキヴァイブ」を作るのではなく、装着型のバーマイクを作ってどんな機種にでも装着できる(電化できる)という路線を打ち出していたのでしょう。MoriさんのバーマイクにわざわざMUSSERのロゴが入っているのも他社製品に装着した時のアピールと思えば納得ですね。

しかし、純粋なエレクトリック・ヴァイブの「エレクトラ」を除けばどの写真を見ても必ずマイクも併用している事からもわかる通り、バーマイクは演奏者サイドとして音量の補助としては満足するものの、音色やアタック音に関しては従来のマイクロフォンに頼っていたようです。
実際にこのバーマイクを使うと、アタック音がボコボコという独特の音色でヴィブラフォンよりは発音がマリンバ的な音の印象があり、ソリッドなサウンドを求めるヴァイブ奏者には不満があった。

これはマイクを鍵盤の下に装着するとマレットのアタック音を100%拾えないという宿命で、バーマイクに限らずパイプで上に向かって音を増幅する楽器全てに言える事です。

その為には電気的にアタックなどの効果を作る必要があり、様々なエフェクターを付け加える事になります。

さて、1971年。
ゲイリー・バートンが来日した時に、見慣れたムッサーのM55からパイプを取り除いたような楽器を持って来ました。

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実はこれはムッサーがプロトタイプとして開発した純粋なエレクトリック・ヴィブラフォンだったのです。
その残骸をラッキーにもバークリー時代に練習室で発見して隅々まで調べました。
これはM55とサイズは同じながら、ボディーは別物の今となっては幻のムッサー・エレクトリック・ヴィブラフォンだったのです。

いろいろと考えられていて感心しました。

ただ、バーサスペンションコード(鍵盤に通す紐)をピンホールに通すなど、まったく分解を考えていなかったので、鍵盤を装着したまま運ぶというのはディーガンの「エレクトラ」と同じで、とても一人じゃ運べないという欠点がありました。

また、エフェクターを使わない場合はマイクでアタック音を拾う必要があったり、と、一台で全て完結する楽器ではなかったようです。

やがてムッサーはバーマイクの生産を止めてしまい、他に専門のメーカーがアタッチメントを開発して現在に至ります。
ムッサーが最初に考案した通り、エレクトリック・パーツとしてバーマイクの需要がその後のアタッチメントの開発へと繋がったわけです。
ミュージシャンに様々な層から意見を求めた結果でしょう。
今のメーカーは見習ってほしいものです(笑)

シンセパッド系のシンセヴァイブも発売されましたが、これらは音そのものを別に音源モジュールに頼らなければならず、本体から発する音が無いので魅力がありません。
キーボーディストの世界を見ればわかるように、シンセサイザー専門の演奏者が90年代に入り激減している事からも、時代の流れには乗れない位置にシンセ全体があり今後の発展には期待していません。

やはり楽器は楽器。本体から出る音がなければ玩具に過ぎません。
21世紀の現在から過去を振り返ると、40年前でエレクトリック・ヴィブラフォンの歴史は終わっているのかもしれませんね。

でも、面白い楽器が作れるならこれらのノウハウを生かして飽きのこないエレクトリック・ヴィブラフォンをいつか作ってみたいと思っています。

貴重な資料を送っていただいたMoriさん、ありがとうございました。

おしまい



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