このCICADAジャケ攻撃といわんばかりの黒とブルー、宇宙人メイクのインパクトに驚嘆しながら、ちょっと浄化目的で南の島の写真と、ディープな読み物などを。
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なんだかんだ言いながらも、現在もサイケデリックトランスを聞き続けている。
自分でもかなり諦めが悪い部類に入っていると感じてはいるが、いかんせん強力な
体験をもたらした物からはやはり簡単に離れられないらしい。
初めて大学5年の頃タイのパンガン島でトランスの体験をしてから、かれこれ9年10年になろうというところか。大学5年の夏に一ヶ月のメキシコ旅行をして、旅の熱にハマりきっていたとき、東京でレコード屋を経営していた親友とともにパンガン行きの話が一気に盛り上がり、計画からたった一ヶ月でタイに到着してしまった。友人は完全に舐め切ったもので、コンビニのビニール袋にタオルとひげ剃り歯ブラシのみの荷物しかなかった。俺は旅慣れた風にバックパックなぞ担いでいたが、友人のその自由なふりというか自由な態度に、笑って突っ込みながらも憧れてもいた。
手持ちには俺が8万。彼が6万。
これで2週間パンガンで遊んだ。
食い物は清潔なレストランで、完全にリゾート仕立ての、しかも安くて味も最高の食事を毎日食べ、嗜むドラッグにも全く困らずに、遊び尽くした。
もちろん初めてのパンガン旅行で、コミュニティーの深部まで入り込む事は出来なかったが、パンガンのバックヤードというクラブを中心としたパーティーコミュニティーと、大きなパーティー開催にまつわる様々な駆け引きが存在する事ぐらいわかるくらいには、ハードリンビーチに居着いていたと思う。
2週間の間に3回の大きなビーチサイドパーティーがあった。
俺たちはLSDを喰って音の渦へ飛び込んで行った。
友人は東京の一番ヤバいといわれるクラブでドラッグとパーティー、トランスの洗礼を既に済ましていたので最も濃くハマっているフロアーの中心へ潜り込んで行った。
初めて体験するレイヴという完全に狂気のカーニバルの中、世界中から集合した電子音楽と自然の融合を夢中に夢想する連中の中で、まるで体験した事も無い昭和の盆踊り風景をタイのこの地で体験させられているようなあり得なさに大笑いしながら、俺はフロアーを彷徨っていた。
ビーチパーティーなのに黒のドレスにハイヒールで完璧に決めて踊り狂う女の子。
カーボーイハットにウエスタンブーツでバウハウスのt−シャツを着ている髭のおっさん。
老若男女人種を問わずそれぞれに絶頂を目指しながら踊り狂っている。
東洋人がフロアの向こうから笑顔でこちらを見ているのと目が合う。
エクスタシー。完璧な気づき。
「わかってる わかってる」
その目が無言で語りかけてくる。
距離が次第に縮まる。
最高の笑顔で語りかけてくる。
英語で。
「えーーーー!!!日本人???見えないって!!!!!」
フルムーンのビーチパーティーは渡し船でないと辿り着けない、ハードリンからは死角のビーチで行われた。
夜の0時に真っ暗闇を渡し船に乗せられ、満天の星のもと真っ黒な海の上を滑るように進んだ。
ぶっ飛んだ頭で不思議に不安は感じる事はなかった。宇宙空間に浮かんでいることを心地よく感じながら、パーティー会場を目指した。その晩のパーティーでは櫓が組まれ、デコレーションは炎を用いたものだった。
バーニングマンのTHE MANを持ち出すまでもなく、炎と原始的宗教の密接な結びつきを、魂のから吹き出す衝動と精神の自由を求める心のもっとも力強い姿が融合する姿を瞬間的に受け入れる。
太いベースラインに体をロックされ、体中を電気が駆け巡る。全身が音に完璧にシンクロし始める。
大地を踏みしめて、飛び跳ねて、時の転がって踊る。
パーティーは夜明けとともに終了した。
婆さんしわがれ声が休んでる俺たちの頭の上で響く。
蛍光色のボディイペイント屋の婆さんはドラッグディーラーでどのパーティーに行っもフロアの中心に場所を構えている。
ボディペイントを客に施す振りをしながら、ドラッグ(主にLSD)を売っていたのだと思う。
俺たちもパーティーの外でこの婆さんから買い物をした事はあるが、パーティーの中では声をかけることが出来なかった。
というのも、ボディペイント屋でカムフラージュしているという事は、買った人間全員が蛍光色のボディペイントを施されているわけで、このフロアで婆さんからLSDを買った人間は一目瞭然でマーキングされているってわけ。
この婆さんとハードリンのビーチパーティーを仕切ってる、レイバングラサンの兄ちゃんの二人が、結局ハードリンのその頃の一番の顔役だったようだ。
こんな体験を毎日のように繰り返し、2週間は過ぎて行った。
未熟な若者2人組は、心底この場所に潜り込めた訳ではなかったし、気後れして出来ない事も数多くあった。
ほんの少しの未練を残して、ハードリンの港からサムイに戻って行った。
サムイの空港で、トイレの鏡の前で二人並んで互いを眺めながら思わず
「おまえ、えれーサッパリした顔してんな」
「あたりめーじゃん。おまえもな」
交わした一言がこの瞬間を思い出という結晶に変えた。
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いあy〜〜〜。一回書いときたかってんだよね。
とりあえず。

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