年末、長女の合格祈願のため、熊山遺跡へ行くことになった。熊山遺跡とは岡山県の東部に位置する熊山の山頂にある弥生時代に起源があるといわれる遺跡で、山頂にあるピラミッド型の建造物が有名な遺跡である。今回長女がこの熊山近傍にある中学校へ受験することになったため、この地の神にご挨拶をと訪れることにした。
今から考えると、この遺跡へ至る道筋そのものがこの不思議な旅の行方を暗示するものであった。なんどか過去にも訪れていたにもかかわらず、今回は高速道路を利用したためか、車一台が通るのがやっとの、ガードレールさえない道を崖から落ちないように細心の注意をしながら山道をのぼってゆく羽目になっていたのである。対向車があればこの危険な道を数百メートルはバックしなくてはならないような道をひたすら対向車が来ないことを祈りながら、十分ほど突き進むことになった。なんとか無事に熊山遺跡入り口の駐車場にたどりついたのだが、たどり着いてみてやはり完全に裏道をずっと走ることになっていたらしい。駐車場の反対側には広い道が国道に向かって伸びていたのだった。
山頂の遺跡へと至る山道は、12月末の寒さながら清々しく澄み渡っていた。樹齢1000年を超える天然記念物の千年杉が頭上に茂り、木々の間からは木漏れ日が差す。山頂に達すると4段組のピラミッドが姿を現した。
このピラミッドは諸説あるが、このピラミッドの石室に納められていた陶製の筒型は奈良時代に作られたものであったらしい。昭和初期の頃に宮内庁が発掘調査を下らしいが、すぐに調査が中止されたらしく、それはその埋葬品の中には天皇家へと繋がるものがあり、現在の皇国史観を揺るがすもにになりかねないために早々と調査を引き上げたものだともっともらしく噂されている。
この熊山には同じような石積遺跡が32基もあるらしく、今ではこの山頂の遺跡以外はほとんど廃墟となっているようである。
能勢氏によれば、これらの石積遺跡は弥生期以降の朝鮮に存在する墳墓と全く同じ構想らしく、ということは朝鮮をルーツにもつ民たちの祭儀場の跡地であったのかも知れない。また、ここには多くの磐座があり、縄文時代から信仰の対象でもあったようだ。事実このピラミッドは磐座の上に建てられているという。
この熊山の磐座は瀬戸内を中心として当時栄えた、吉備王朝と機内、九州を結ぶ海洋交易ルートのランドマークとして機能していたのではないかといわれる。そして瀬戸内を近畿から九州へ貫く磐座のレイラインが存在しているという。
久しぶりに訪れた熊山遺跡は、その姿を変えず目の前に佇んでいた。この建造物が何故、誰の手によって作られたものかとイメージし思いを馳せる。その当時、悠久の時間を超えて、後世へ自分たちの大切な信仰を残そうとした気持ちが伝わってくる気がした。このピラミッドの中心に据えようとしたものは一体何だったのであろうか。それは彼らの霊性を象徴するような魂であったに違いない。
この遺跡は正確に東西南北を示している。この土地に祀られた神々に思いを馳せる。そして神々との縁を取り持つような心持ちで祈りを捧げる。
このピラミッドのあるエリアには寺の跡地があったり、道祖神が祀られていたり、猿田彦が祀られていたりと様々な霊統が混合していて特別の印象を残す。
その後、更に山頂にある熊山神社へ向かう。ここで合格祈願を行う予定にしていたからだ。熊山神社は大国主命を主祭神としているらしい。そういった意味でも国津神系の神社であって、なんだか昨年の出雲大社参りといい、国津神系の神様に縁があるなと妻と話しつつ参拝をする。
参拝はつつがなく終わったのだが、神社周囲を散策してみると、8方に祠が存在しており、天照大神や素戔嗚尊、菅原道真候などが祭れれている。一つ一つの祠を眺めてゆくと、その中に、「水の宮、祭神 水速女命」とある。そのとき天啓のごとき霊感が貫く。これは「はやめ」と読むのではないか。そして「はやめ」とは私の娘の名前そのものなのであった。
はやめという娘の合格祈願に訪れた神社で「水速女命」という名前の神に出会う。もちろん、この神様とのご縁を深く願いつつ、ことのいきさつを伝え、この地を後にした。
そして「水速女命」のよみは「みずはやめのみこと」そのものであった。
熊山遺跡
水速女命/ミヅハノメ
from wiki
ミヅハノメは、日本神話に登場する神である。古事記では弥都波能売神(みづはのめのかみ)、日本書紀では罔象女神(みつはのめのかみ)と表記する。神社の祭神としては水波能売命などとも表記される。淤加美神とともに、日本における代表的な水の神(水神)である。
古事記の神産みの段において、カグツチを生んで陰部を火傷し苦しんでいたイザナミがした尿から、和久産巣日神(ワクムスビ)とともに生まれたとしている。日本書紀の第二の一書では、イザナミが死ぬ間際に埴山媛神(ハニヤマヒメ)と罔象女神を生んだとし、埴山媛神と軻遇突智(カグツチ)の間に稚産霊(ワクムスビ)が生まれたとしている。
神名の「ミヅハ」は「水走」と解して灌漑のための引き水のことを指したものとも、「水つ早」と解して水の出始め(泉、井戸など)のことともされる。古事記には他に闇御津羽神(クラミツハ)があり、これも同じ語源と考えられる。「ミツハ」に「罔象」の字が宛てられているが、罔象は『准南子』などの中国の文献で、龍や小児などの姿をした水の精であると説明されている。
灌漑用水の神、井戸の神として信仰され、祈雨、止雨の神得があるとされる。丹生川上神社(奈良県吉野郡)などで淤加美神とともに祀られているほか、各地の神社で配祀神として祀られている。大滝神社(福井県越前市)摂社・岡田神社では、ミヅハノメが村人に紙漉を教えたという伝説が伝わっている。
金蛇水神社

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