先日のLSDアフターパーティーの翌日は、日本橋まで足を伸ばしてハイエンド・オーディオの狩猟に向かう。クリニックをオープンするにあたり、せっかくならばシーリングの埋め込みオーディオなどではなく、趣味のオーディオで患者さんをお迎えしたいところ。
日本橋には以前は秋葉原同様多くのオーディオショップが軒を連ねていたが、この不況の影響か、はたまた若者のオーディオ離れのせいか年々オーディオショップが減少する傾向にあるらしい。そこで今でも気を吐く河口無線とシマムセンという有名ショップに向かう。
自宅ではJBL4343をバイアンプで中高域真空管、ウーハーは業務用アンプという濃い構成で聞いている。プリアンプはMark LevinsonのML-1。これはThe LoftのDevid Mancusoに近いシステムで、そもそもディープハウスを気持ちよく聞くためのシステムだった。実際ジャズ特にトランペットやサックスなどの金属系の響きは鳥肌物だし、ウーハーの沈み込みは素晴らしく、R&Bなどを聞くときにはとても深いいい音を出す。
しかし、近年音源がPCに移行してきてからは音のクリアネスや分離感を重視するようになったきた。しっかりとした定位と高域、中域、低域の分離、そして左右に大きく広がる音場。これはJBL4343の奏でるライブ感たっぷりの熱い音とは対極の音作りで、オーディオの楽しみのもう一つの極でもある。
数ヶ月前に秋葉原に行ったときにAvaloneのsymbol2を聞いてその音の繊細さと緻密さ、粒立ちのいい音の粒子が空間にひろがるサウンドスケープに驚いた。今まで聞いたことのない音だった。それまでのデフォルトといえばダイナミックオーディオの最上階で聞いたAvangardeの最上位機種(確か1300万!!!!!!!)にViolaか何かのアンプで駆動していた物で総額2000万くらいのシステムだったと思う。このときの音はひたすら写実的な輪郭の音が、一切のノイズ感なくホーンのドライバーから迫ってくるような音で、この音が脳内の基準になっていたと思う。
ある意味この音は先ほどの音像型か、音場型かというオーディオの2大命題を高次元で融合したような音で、どこかJBL4343でのシステムも次第にこの音を目指してPCトランスポートへ移行していったところがある。最近はML-1を通さず、AirMacからのデジタル出力をDACに直差しし、PionnerのデジタルDJミキサーに通しデジタルイコライジングで整えた後に、チャンデバに通すことをやっていたりした。そういった意味では音場型のクリアでハイエンドな音への感心は知らず知らず高まっていたのかもしれない。
今回の目的の一つは、候補のスピーカーMonitor AudioのPL200、PL300を聞く事。これは100万円付近のスピーカーの中では雑誌、ネットで非常に評価が高く気になっていた機種。これをデジタルアンプで駆動することで分離感や定位のしっかりしたハイエンドな音を低価格で目指すというのが目標であった。
河口無線ではMonitor Audioの取り扱いはなく、仕方なくJBLのエベレストやS9900の音を聞く。確かに刺激のないいい音だがあまり興味を感じない。ところが河口無線の隅っこに下取り品として忘れられたように置かれているあるスピーカーから流れてくる音が非常に気になった。それはどこか優しい広がりを見せながらも、各楽器の音がしっかり分離し、しかも広く音が広がるなんともいえない心地のいい音。これがPionnerの
S-3EXであった。しかもアンプは
Aura NoteというFM,CDプレイヤー一体型のアンプ。

しかしこれが本当にいい音を出しているのだ。しかし何となく後ろ髪を引かれつつも、シマムセンに移動する。
こちらのハイエンドフロアにはMonitor Audioがあった。早速視聴してみる。ソースはオーケストラ。しかしリボンツイーターの綺麗な高域に期待をしてきてみたものの、中域を中心に分離が悪く、音が団子になっているように聞こえる。そこでそこにあるスピーカーで同価格帯の物を片っ端から聞かせてもらう。Sonus faber cremona、KEF205、JBL4338、どれもしっくり来ない。
しかし次に聞いたスピーカーがまた自分の好みにピッタリ!それまでは奥に引っ込んでいたり、質感がざらついて膜が張っているようだったりした音が突然、映像で例えるとハイビジョンの画質になったような高解像度で展開し、しかも広く両翼に広がりえもいわれぬ心地よさで広がっている。え!これ何?と聞くとPionnerの
S-1X であった。またしてもPionner!全くノーマークだったけど、こんなに良いスピーカーを作ってたんだと驚嘆する。
しかし流石にS-1EXはサイズが大きすぎるので、先ほど河口無線で聞いたS-3EXに切り替える。低域が若干量感がなくなり、やや細身の表現になるものの、しばらく聞いていると馴染んできてS-1EXとの違いもあまり気にならなくなった。 どちらもスピーカーの存在が消えてしまう。
しかしこんな素晴らしい(あくまで俺にとってだが)音がわずか実売価格60万円前後で買えるとは信じられない。海外ブランド価格だと100万円以上〜天井知らずの世界のクオリティ。
そこでスピーカーはこれに決定。しかしアンプは一体何だ?尋ねてみるとこれがMcintoshの最新型MA6600。これも驚き。今までのイメージだとMcintoshはまるでアメ車のような、低音がダラダラでのっそりとした分離の悪い音、雰囲気はあるけど、ハイエンドとはほど遠い選り好みの強いアンプのイメージがあった。そこでアキュフェーズのアンプやTrigonなどに切り替えてもらうがどこか細身だったりとしっくりこない。どうやらこのスピーカーの分離の良さとMcintoshの独特のトロ味のあるサウンドが相まって、柔らかさと分離の良さそして音の粒子が空間に広く散らばるような音作りになっているようだ。
ややこれは困った。当初の予定とは全く変わってしまった。しかし予算は大幅に節約になるし、このスピーカーに代わるものはもう出会えなさそうだしで、まるで運命の彼女に出会ったかのように購入を決めてしまった。
あーやっちゃった。

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