(1)意識は内界の印象を外部に投影することで世界を認識している。外部からの入力と、そしてその印象を外部に投影する無限のフィードバックループ。その投影と外界の重なりあった合像が我々の認識している現実だ。
(2)我々の内面に存在する現実の鏡像としてのイメージ。アイソレーションタンクの体験はこの外部からの入力系を遮断することによってもたらされる。
(3)アイソレーションタンクの内部は完全な闇である。360℃全周を取り囲む真球としての闇。これは完全なスクリーンのようなものだ。完全な真球としての闇に内的なイメージを投影するとき、漆黒の外部が内界そのものとなる。
(4)我々はイメージを、瞑想をするとき自分の内部とも言うべきベクトルを仮定し想像の力を集中させる。アイソレーションタンクを体験しているときその内的な集中は存在しない。それは私を取り巻く闇こそが内部、無意識そのものであることを直感的に理解しているからだ。
(5)意識にはレイヤーが存在する。その無限のレイヤーの奥に、完全なる静止した意識が存在する。それは凪だ原初の海であり、真空であり、ゼロ磁場、情念の影響を受けない無重力の宇宙であり、鏡、我々の意識の源でもある。
(6)アイソレーションタンクの体験は他のドラッグの効果を無効化する。マリファナ、LSD、アルコールを服用してアイソレーションタンクを体験してみればいい。タンクによる無の経験はドラッグの効果より深く、各種の薬物の意識変容作用を超えてあなたを思考不能の領域に導くだろう。これは各種のドラッグの影響がより表層の意識のレイヤーに作用しているだろうことを意味する。ただしリリー自身が耽溺したケタミンは例外なのかもしれない。これはよりタンクの体験と近似した意識の層に働きかける薬物だと仮定される。
(7)アイソレーションタンク体験はこの無、そして空の体験との出会いであり、われわれはこの体験を通じて神秘的、超越的な何かとの交流を体験する。理解や意識、言葉さえ放棄した先の純粋な体験そのもの。理解を超えた満足や充足、孤独と自由を体験する。それは死、もしくは眠りに似た何かだ。

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