思いつきでいろいろ書いてます。
よかったら読んでみてください。
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2005/7/2
[10189] 031:盗 廣西昌也 2005年03月29日 (火) 17時50分
盜まれた青い自転車への思い奥で一子とつながっている
なくしたものはひとつのはこにいつもしずかにねむっています。
[10191] 033:魚 廣西昌也 2005年03月29日 (火) 17時54分
くらやみで指を絡めた冷たさは女が魚だからであろう
夢で魚を見ると欲求不満だって女性は言われるらしい。稚魚の鱗は女のようだ。
[10199] 040:おとうと 廣西昌也 2005年03月29日 (火) 18時07分
現実のおとうとが見るまぼろしの姉も奪われ続けていたり
初恋の少女がなぜか今は不幸な境遇にあり、数限りなき男性遍歴を経ているとしても、彼女自身も私も何も奪われてはいないのだと茶を飲むくらいの勇気ならある。
[10205] 046:泥 廣西昌也 2005年03月29日 (火) 18時39分
泥濘のなかに小さな虫がいて誰かを待っているような春
誕生とはそんなにすがすがしいものではないだろう。確かに春には虫が蠢く。
[10208] 096:留守 みずき 2005年03月29日 (火) 19時53分
留守といふノスタルジーの中にゐて今日もいちにち海をみてゐる
感傷の真昼間の海夕の海汀がそっと手のひらに乗る
[10210] 097:静 みずき 2005年03月29日 (火) 19時55分
静寂に若干あをを混ぜたいろ欝の初めはそれだけだつた
音と色を混ぜ合わせて形を作っていくものなのだろう。
[10216] 023:うさぎ 田丸まひる 2005年03月29日 (火) 20時57分
従順なうさぎがほしいちぎれ雲いくつかわたしのものにする朝
あの空の群れなす雲がうさぎならとつま先立って見上げてばかり
[10224] 018:教室 笹本ふう 2005年03月29日 (火) 22時03分
教室に 置いてきたんは おもいでか それともただの 忘れ物なん?
思い出は忘れ物だったのか。こんなにたくさんあるのに誰も叱ってはくれない。
[10230] 040:おとうと 穴井苑子 2005年03月29日 (火) 22時33分
共通の話題などないおとうとがくれた時計は捨てられなくて
これを読んで例のご兄弟のことを思った。共通の話題がありすぎるのも問題なのだろう。
[10232] 025:泳 丸井真希 2005年03月29日 (火) 22時46分
背泳ぎで進んでるけど行き先が分からないっていう人生だ
背泳ぎの快楽は空を見ているという一点にだけあったりもする。
[10245] 052:螺旋 こはく 2005年03月29日 (火) 23時19分
触れるたび螺旋が崩れ落ちてゆく 現実的に歯ブラシを噛む
ある人の家にいったら、歯ブラシがすべて噛み跡だらけだった。にこやかなこの家庭の中にあるもの。
[10251] 014:主義 荻原裕幸 2005年03月29日 (火) 23時36分
パスタ巻く春の右手の辺りから主義が気化してゐるのが見えた
主義はそこまで人を染めるか。主義と習慣の境目とはなんだろうか。私の心の習慣とは?
[10296] 036:探偵 橘 みちよ 2005年03月30日 (水) 10時24分
休業の遊園地のなかゆき巡り探偵ごっこになりゆく女男(めお)は
何も遊べるものがない。楽しみは目の前で停止している。だからあなたと遊ぶしかない。
[10305] 052:螺旋 廣西昌也 2005年03月30日 (水) 13時32分
永遠に僕が苦手なものとして螺旋階段回転扉
バットに頭をつけて廻った。ひとりは狂喜し、一人はのたうちまわった。快楽とはそんなもので、内包するグルグルの量とは関係ない。
[10381] 013:焦 本田瑞穂 2005年03月30日 (水) 22時14分
一日が長いどこかでまちがえたことに気づいて焦りはじめる
目に見えた間違いも正解もない毎日の中で、そこに安らぎがあるかどうかがよすがなのだろう。ふとなくなるととても怖い。とても寂しい。
2005/6/28
[10001] 024:チョコレート みあ 2005年03月29日 (火) 00時55分
神様に叱られたのかな?チョコレート色した川は答えてくれぬ
清流だったら応えてくれるのだろうか。汚れた大人の沈黙かも知れぬ。
[10004] 003:つぼみ 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 00時57分
それは蛹 芽よりつぼみは罪深く、ゆつくり石になれゝばいゝね
身を売って買った財布を取り出して眺めたままの十五の少女
[10005] 004:淡 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 00時57分
肺胞にまだゐたんだね、淡水魚 透きとほりゆくとほい日の檻
私の血は深海の水と同じ塩分でできています。淡水魚、お前はもうどこにも流れる術はない。
[10011] 010:線路 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時00分
海だけを探してゐたのはとほい夏 線路の脇の草いきれ、まだ
探しても、探すのをやめても、はじめからないものはなく、あるものはある。
とりあえず鉄臭いのは夏のせい踏み折られたる向日葵は逝く
[10012] 011:都 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時00分
首都高は夜を斜めに分断し 首長竜の骨の啼く音
高速道路は刃物であるというのは私も常々感じています。
ぎらぎらと腿の古傷切り裂いて高速道路は真夏に届く
[10013] 012:メガホン 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時01分
プラチックのコップ、逆さに風といふ星を聴く 血がメガホンになる
下の「血がメガホン」が好きです。上で形状を歌っているけれど、無形の中の性質の類似が好きです。
[10019] 018:教室 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時03分
やはらかい棘 教室の窓たちが創る迷路に鬼薊咲く
教室はただ棘だけを栽培し野に放つのみ血まみれの野に
[10026] 025:泳 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時05分
泣き疲れて眠つた夜の夢は沼 泳がないでね、沈んでゐてね
夢は確かに沈むもの。夢を泳いだらどこに着くのだろう。さあ。
[10046] 045:パズル 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時13分
海馬には海馬のパズル また今宵、シーツの海に榜ぎだせるから
神経の一つ一つにまだ過去が生きているから今日も眠れる
[10049] 048:袖 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時14分
半袖の肘は反逆 もう少し、もう少しだけ甘えさせてよ
夏は肌と肌が触れ合う。そんなことでも恋が生まれ、人は泣きながら愛し合ったりもする。
[10075] 100:マラソン さゆら 2005年03月29日 (火) 01時22分
眈々と狙はれてありマラソンの野へさしかかるあへぎの足音(あおと)
ゴールしてもまだ後続の足音を聞いている。追い越されてしまう恐ろしさに震えてしまう。そうして明日の練習計画を書くコーチにしがみ付いて泣く。レースとはそんなものだろう。私たちの闘争本能とは。
さゆらさん完走おめでとうございます。素敵な歌をたくさんありがとう。
[10090] 084:林 遥悠(天晴娘々) 2005年03月29日 (火) 01時27分
哀しみのカタチは林檎 いま光るあの星に会ふことはできない
欲望は千里を走るでも僕は本当なんて知りたくもない
[10111] 051:泣きぼくろ 17番 2005年03月29日 (火) 02時08分
左目の泣きぼくろ妙に愛しくて目を見ずそちらを見詰めて話す
目は口ほどにものを言うとか。泣きぼくろをや。
[10117] 052:螺旋 吉野楓子 2005年03月29日 (火) 07時20分
なつやすみ螺旋にのびるアサガオの絵日記つけた 多分あなたも
まったく知らないあなたとこうして過去を共有しているという不思議。これを事実とすると美しいが、縁と考えると賢しらな気もする。
[10118] 053:髪 吉野楓子 2005年03月29日 (火) 07時22分
戯言で「切るな」といったきみの手のふれることなき胸までの髪
離別で触れなかったのだろうけれども、離別するまでもない関係とも読める。触れてほしいという欲望だけが現実なのか。
[10147] 014:主義 中瀬真典 2005年03月29日 (火) 14時59分
ずいぶんと現実主義者になりまして今はプリンを先に食べます
たくさんたくさんプリンを盗まれて大人になるしかないとしたら、プリンも私たちも悲しい。
[10159] 027:液体 茶琥チヤ子 2005年03月29日 (火) 15時24分
きしめんの味の事など言ひながら告げたきことは液体になる
言葉は固体なのか。ガラスが液体なのは知っていたけれど。言葉は固体なのか。
2005/6/21
[9805] 018:教室 PDP 2005年03月28日 (月) 00時09分
教室の立ち位置変わる瞬間に性癖露わになるのはお止し
中学時代憧れていた先生が結婚し妊娠した。すごい劣情だった。するんだ。
[9806] 022:弓 五十嵐きよみ 2005年03月28日 (月) 00時15分
「矢」は女性、「弓」は男性名詞だと知ってひとつの暗喩を迷う
去る者と去らせる者。ゆく者とゆかせる者。殺す者と殺させる者。どれだ。
[9830] 096:留守 謎彦 2005年03月28日 (月) 04時56分
これ以上できないほどの真顔して観潮楼の留守をあづかる
潮を見ることなんてたいしたことじゃない。フローなんて単にフローだ。致命的な病でもあるまい。
[9833] 098:未来 謎彦 2005年03月28日 (月) 04時58分
「近未来的」はかならず銀白のヒップラインが宙をゆきかふ
いつの世も性欲は尽きないのでしょうか。裸身に纏わせるものを誰が変えさせていくのでしょうか。
[9851] 017:陸 吉島恋太郎 2005年03月28日 (月) 09時36分
ぐつぐつとあずかり知らぬ場所で湯が沸く陸上自衛隊員の朝
飯なんてどこでも食えると嘯いて3日限りの愛の巣を編む
[9862] 017:陸 武山千鶴 2005年03月28日 (月) 10時31分
陸上部とは名ばかりで校庭の掃除ばかりだ補欠の補欠
社会スポーツと競技スポーツという区分の意味のなさと惨めさを感じた。その区分に何があるのか。壊れたくない人はどこにでもいて、壊れたい人もどこにでも居る。壊したい人はもっと偏在している。それだけではないのか。カタルシスは生得的なのか、後から与えられる文法なのか。
[9895] 050:変 樹里 2005年03月28日 (月) 16時02分
生き場所を変えてみたのよ少しだけ。お互い毒になるだけだから
偽悪とはこのこと。あなたは私の毒ではないことが多い。
[9896] 051:泣きぼくろ 樹里 2005年03月28日 (月) 16時03分
泣きぼくろ頬も伝ふることのなき涙集めて形となるらし
そうか短歌は泣きぼくろなんだ。どうしたって基調は痛みと悲しみだからだ。切ない。
[9913] 074:麻酔 鈴木貴彰 2005年03月28日 (月) 19時13分
いつまでも切れぬ麻酔に痺れたり記憶のへりに投げだす四肢は
麻酔という言葉には不思議な魅力がある。酒も性交もゲームも煙草も麻酔になる。痴への志向は完全に麻酔だ。
[9921] 007発見 方丈いほり 2005年03月28日 (月) 19時39分
北きつね大発見と車中から写真に収める善良なエゴ
私たちが日常いいかげんエゴイストなのは周知の事実。満員電車から生み出される社会に住んでいるのだから。
[9922] 008鞄 方丈いほり 2005年03月28日 (月) 19時43分
朝毎に意味なき鞄持ちて出る足取り重く背中丸めて
今点検した。メモ帳・ティッシュ・ガム・数冊の本その他。なくたって問題はないわな。
[9926] 023:うさぎ 今岡悦子 2005年03月28日 (月) 20時13分
針ほどの記憶もないか実験を逃れたうさぎがためらわず寄る
遊びだと抱いた女がこの朝もおもちゃの棚に微笑む不思議
[9940] 022:弓 田丸まひる 2005年03月28日 (月) 21時16分
わたしだけ見て弓なりの背すじ見ていまだに硬いふくらみを、見て
かなり昔に有名写真家の撮影風景を見た。事前の契約はあるとはいえ、あそこまで褒めれば女性は脱ぐのだと思った瞬間に、その当時の彼女の顔を思い出した。その後雑誌で見たそのときの写真はすばらしかった。
2005/6/18
[9587] 027:液体 kitten 2005年03月26日 (土) 20時28分
[9588] 028:母 kitten 2005年03月26日 (土) 20時29分
『ぼくの父さんわ《液体》ですがしゃべるしちゃんと朝刊も読みます』
『ぼくの母さんわ《まがいもの》ですが父兄参観にわ必ず来ます』
本当に「わ」を使う若者が増えた気がする。kittenさん2首まとめさせてもらいました。さらさらの液体というよりはゲルっぽい父親と、まがい物なので普通以上に母らしい母に囲まれている「わ」を使う若者の家庭の情景が目に浮かんだ。
[9590] 020:楽 飛永京 2005年03月26日 (土) 20時33分
! エクスクラメイションマーク幾十も集まりタンポポ光楽章
感嘆符の形をした命。そこから伸びる萌芽は?だったりもするのだけれど。
[9594] 021:うたた寝 暮夜宴 2005年03月26日 (土) 21時21分
うたた寝の君の背中に少し泣く かけがえのないぬくもりだから
少しって言葉は使いやすいので多用している私ですが、人には厳しくしています。でもこれは実感があっていいな。下の素直さが嘘じゃない感を強めているように感じました。
[9601] 064:科学 りり 2005年03月26日 (土) 22時19分
子宮がね拒んだみたいあなたの子科学じゃないの魂のレベルで
心が愛し合っても体が結合しても魂だけ乖離していることもあるのか。勉強になった。女性は愛し合っているときにこんな魂を感じているのだろうか。
[9615] 015:友 星川孝 2005年03月26日 (土) 22時44分
若かりし友の形見のひとつにてバックミラーに映る夕陽は
形見はバックミラーなのか夕陽なのか。私は夕陽と読んだのですがいかがでしょうか。百万態の笑顔を夕陽がバックミラーの中に描いている姿を。
[9632] 020:楽 五十嵐きよみ 2005年03月27日 (日) 00時03分
悪口ハ楽シイカラネという真理教わるのど飴と引き換えに
もっともっと悪口を言って甘苦く私の扉が開くまで言って
[9659] 092:届 謎彦 2005年03月27日 (日) 06時19分
届け出るほどの過敏といふまいが新体操を正視できない
私も体操・新体操・シンクロナイズドスイミング・フィギャースケートの芸術点(全部がそういうかはわかりませんが)とやらの意味合いがよくわかりません。バレエなどの芸術点と比較してよいのでしょうか。短歌の選考に体育点は不似合だと思うのですよ。それで、その芸術点のために開脚してゆく少女を私も正視できません。
[9662] 095:翼 謎彦 2005年03月27日 (日) 06時19分
「毒」の字を掲げるタンクローリーにしろい翼をつけてください
楽しいドライブ。美しい彼女。最高の天気。しかし急カーブを切るとそこには「毒」の字のついたトラックが列を成していたとしたら。しかもそれが徐々に増殖していったとしたら。
[9665] 020:楽 桶田 沙美 2005年03月27日 (日) 08時14分
過ぎ去りし乙女の時間あの女性(ひと)は音楽のように愛してくれた
愛しているのは女性として読みました。女は乙女をいかなる術で口説き落とし、乙女であることを保たせたまま以下に愛すか考えてしまった。
[9669] 003:つぼみ 風亜祐宇 2005年03月27日 (日) 09時11分
自らは開かぬつぼみに指をふれ ふたり溺死体でいる時間
率直にエッチです。でも溺れるものは水でも愛でもあってはいけないとも感じました。無論デジタルな快楽でもなく、声にならない獣性などにおぼれたまんまに眠ってみたい。
[9672] 006:時 風亜祐宇 2005年03月27日 (日) 09時14分
あすのこの時間の君の気持ちなど予測できないまま君を抱く
そんなこと考えていたら不純といわれます。でも普段は少し先の気持ちを考えてないと冷たいと言われます。何でだろう。
[9674] 008:鞄 風亜祐宇 2005年03月27日 (日) 09時15分
謎めいた気持ちもつ君の一番小さな部屋としてある鞄
そしてきみはその中へ帰って行く。どんなにはしゃいだ後も愛し合った後でさえも。
[9711] 010:線路 風亜祐宇 2005年03月27日 (日) 12時14分
夜の果ての果ての果てへと線路伸び 消失点でも消せない何か
平行なものはやがて交わるのだけれどずっとまっすぐである気配を残して交わって行くのですね。
[9716] 061:じゃがいも 尾崎弘子 2005年03月27日 (日) 12時23分
欲しいとか要らないとかさういふ問題ぢやなくてそれは私のじやがいも!
所有とはこういうことだろう。手のひらにある欲求ではないということだろう。
[9727] 026:蜘蛛 黒河更沙 2005年03月27日 (日) 13時31分
蜘蛛の子の一つ一つを数えども思はぬ人を思ふものかは
ここまで嫌われても好きなものは好き。でも蜘蛛の子がルビー色に輝いていたら素敵だったりもする。
[9741] 100:マラソン 足立尚彦 2005年03月27日 (日) 14時51分
マラソンのランナー多く、走られているマラソンは痒くはないか
足立尚彦さん遅ればせながら完走おめでとうございます。蟷螂の子の逃走みたいだ。蜘蛛の子の追走みたいだ。初めて自然薯を食べたあとの痒さだ。
[9744] 025:泳 あみー 2005年03月27日 (日) 14時55分
素っ裸で水着をしぼる 水泳の授業のあとは髪がパリパリ
真実は裸体だとしても着衣を自然と思っているのが一般的だが、こんなにみずみずしい裸体はそのまま心にしみてくる。
[9753] 048:袖 丹羽まゆみ 2005年03月27日 (日) 15時56分
福寿草のきいろが冬をとき放つ朝かろやかに半袖を出す
冬は呪縛だったのですね。黄色は不思議な色だ。
2005/6/14
[9387] 013:焦 黒月秋哉 2005年03月25日 (金) 20時05分
(君だけに焦点合わす)瞳孔の引き絞られる音がきこえた。
瞳孔のフォーカスはカメラのような一瞬のはためきではなくじっくりとしたものだろう。速度とは別のじっくりさなのだろう。
[9391] 026:蜘蛛 唐津いづみ 2005年03月25日 (金) 20時22分
目に見えぬ蜘蛛が素肌をはうように 波長を具体するのはゆるい
作者の体験というか実感だろうな。下の言葉の感じからそう思える。実感のある歌がいいなと最近は思う。それがフィクションでもノンフィクションでも。
[9404] 044:香 今泉洋子 2005年03月25日 (金) 20時39分
隣家の白木蓮(はくれん)匂ふ春昼(しゆんちう)に香盗人(かをりぬすびと)われは近づく
なんとゆっくりとした足取りなのだろう。木蓮の香りを盗む足取りというのは。
[9415] 020:楽 田丸まひる 2005年03月25日 (金) 21時05分
スプーンの重さに今日も耐えかねて楽しい夕餉の時間が終わる
逆説は重い。作り笑いも重い。その中に本当に楽しさを見つけようともがいている様子がうかがえる気もする。
[9433] 028:母 仁村瑞紀 2005年03月25日 (金) 22時13分
眼を閉じよ身を横たえよ 触れるのは父なる空と母なる大地
この命令の主は誰なのだろうか。父でも母でもなくその父母以上の何者かを感じる。誰なのだろう。
[9435] 022:弓 ひぐらしひなつ 2005年03月25日 (金) 22時26分
弓形に眉をひくとき心持ちあかるく逸れて跳ぶ草雲雀
楽しそうだ。眉頭にうすうすと描かれる夏草とそこから時々羽ばたく雲雀と。その額を持った人の笑顔に会いたい。
[9450] 085:胸騒ぎ 謎彦 2005年03月25日 (金) 23時20分
胸騒ぎしづめむときも眼薬を左と右にたつぷりと差す
流れる涙を装うのだろうか。涙が流れるから胸騒ぎは鎮まるのだろうか。目がすっきりすると何でも見通しているような錯覚に陥って、私もまたメガネをかけなおしたりもする。
[9451] 086:占 謎彦 2005年03月25日 (金) 23時20分
「買ひ占むること」と「支配」の空隙をさかあがりする腹の筋力
微妙なベクトル自体が地平になるとき、静かに震える腹筋が微妙な平衡を保つための長い長い運動をする。
[9452] 087:計画 謎彦 2005年03月25日 (金) 23時20分
計画の「画」のあたりに憧れのマスクメロンを感じてしまふ
見立てとしての新鮮さよりも、マスクメロンを思い浮かべてしまう計画の内容を考える過程が楽しかった。
[9468] 055:ラーメン 尾崎弘子 2005年03月25日 (金) 23時59分
郵政はまだまだ未熟全国ラーメンフェアのポスター謙虚に貼られ
そうか。商売において遠慮は未熟なのか。すべては計略の中で処理されてゆくのか。
[9493] 064:科学 天藤結香里 2005年03月26日 (土) 08時27分
科学者の想定内の出来事は決して未来をひらいてゆかない
科学者が時々ニュース報道に異議を唱える。地震は来るかもしれないがマスコミの騒ぎ方は間違っているという。そういう情報が通用してしまう悲しさを彼らは感じてないのだろうか。
[9518] 022:弓 みあ 2005年03月26日 (土) 14時08分
ぶくぶくと羊水の中うかぶあわ母性は女(メス)を弓形にする
知人が妊娠したせいもあって気になるが、悪阻に苦しむ背中と陣痛に苦しむ腹とどちらもしっかりと弓形なのだと感じた。それとともに吉野弘の「I was born」を少し思った。
[9531] 066:消 やそおとめ 2005年03月26日 (土) 15時08分
発展的解消とまれ美しゆう恋はおはらぬ闇夜のあやめ
闇夜のアヤメの形が、漆黒の中の青い宝石のようで冷たい。華やかで寂しく冷たいエンディングがすべからく好きなのだろう。我々は。
[9568] 096:留守 足立尚彦 2005年03月26日 (土) 19時02分
真実と嘘とが温く溶け合って人の数だけ留守があるのだ
私たちは誰かに対して存在するときには、別の方面へはいつも不在だ。誰かに対しているときに、私は正直者か嘘つきかのどれかだ。思い当たる。
[9569] 097:静 足立尚彦 2005年03月26日 (土) 19時07分
新じゃがの毒をおそれて芽を深くえぐる 静かな朝だ、まったく
新じゃがなんかまだ芽がないのに。過剰に謀略を恐れてみせる朝が来たのですね。
[9570] 098:未来 足立尚彦 2005年03月26日 (土) 19時09分
ふたしかな未来を過去となすためにセットしている目覚し時計
その通りだ。はっきりと自覚できる風景だ。