2008/10/6

東京兄妹(’95)−追悼・市川準監督ー  日本

「東京夜曲」等と共に小津作品へのオマージュ、とも言われる、東京の一角に住む兄と妹の姿を描いた市川作品。古本屋に勤める兄、高校卒業後写真ラボ屋で働く妹、2人の平和な暮らしに、妹の恋、という波乱が起きて、という物語。

舞台は、「鬼子母神」という商店街アーチの表示も見えたけれど、「トキワ荘・・」と同じ豊島区、雑司ヶ谷〜鬼子母神という辺りらしく、劇中兄妹が乗っていた一両で走っている都電荒川線の鬼子母神駅、もあるようで、江ノ電のような車両含めてノスタルジックな風情。

赤い鳥居が連なって並んでいたり、やはり何気ない街ののどかな風景のショットの数々。家の中はやはり固定のローアングルが多い印象。昔ながらの、なべを持って買いに行く豆腐屋や、醤油の貸し借りをする近所付き合いの様子。

やはり小津作品の原節子と笠智衆の二人暮しの父と娘の話が重なり、後でタイトルを確かめたら「晩春」('49)だった。これは現代の兄妹版、結婚は妹が二十歳になってから、という意向のため、恋人が離れていき、「晩春」では父のため自分を抑える娘、という自然なバランスではあったけれど、ここでは妹がそういう兄の姿への、見えない息苦しさを感じ、そのはけ口のような、兄が連れてきた男との恋。

おそらく初恋、のカメラマンらしき相手の影響で、ファッションも変っていく姿。妹役粟田麗は、美人系ではないけれど、色に染まっていく無垢な少女、という風情が出ていて、緒形直人は久方、今回の兄役は、何処か頑固さもありつつソフトな物腰に合っていた感。飲み屋で酔いながら、繊細な豆腐屋の豆腐の事を隣の客に語るのが、そのまま妹の事、のようで仄かな切なさ。

結局その恋人の突然の死で恋が終わり、妹は戻って来たけれど、その状況詳細の説明もなく心情も語られず、また流れていく2人の日常。

今時にしては、互いへのスタンスがやや御伽噺的純朴な兄妹、でも冒頭妹の半裸をさらした入浴シーンや、ラスト、やはり説明はないけれど、いつものように帰宅しながら家に入るのをためらう兄等、仄かに漂う男女の意識、のようなものも加えた感もあるけれど、市川風現代アレンジの「晩春」的でもあり、小津作品の影響、は聞いてはいても、追悼含めて今まで見た中で、一番その趣を感じた市川作品、でもあった。

私は東京に20年近く住んでいても、荒川線に乗ったことはなく、改めて、これは10数年前の作品ではあるけれど、浅草等以外でもノスタルジックさ残る街並みを、作品通して知った、というやはり和みの感触。(http://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%85%http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%BD%E9%9B%BB%E8%■追悼・市川準監督■BU・SU(’87)大阪物語(’99)東京マリーゴールド(’01)トキワ荘の青春(’96)会社物語(’88)東京夜曲(’97)

★10/8追記:この作品に出演の緒形直人の父、緒形拳さんの訃報、AOL表紙で知り、今日新聞にも先日のポール・ニューマンの時と同じ位扱いの記事。8年前肝硬変が見つかり、5年程前肝がんに移行していた、との事で、享年71才、と。

人間味というものが滲み出るような演技で、数々の出演作品、鮮烈だったのは「楢山節考」、じんわりとナイーブさが印象に残っているのは、裕木奈江とのドラマ「ポケベルが鳴らなくて」等。結構前奈良在住だった友人が、ロケに来ていた緒形さんに、まだ小さかった子供を抱いている時だったか、写真を撮らせてほしいと言われた、というエピソードを聞いたりも。最新見たのはDVDで「ミラクルバナナ」での紙職人姿だった。遺作は、製作発表会見したばかりだった、明日から放映のドラマ「風のガーデン」に。ご冥福を祈ります。(http://mainichi.jp/enta/art/news/20081007k0000m040152000c.htmlミラクルバナナ(’05)

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