2008/10/13

病院で死ぬということ(’93)ー追悼・市川準監督ー  日本

ある病院での入院患者、家族、医師と看護婦の様子を描いた市川作品。原作はホスピス医山崎章朗氏の小説。他作品と共にレンタルしていたものの、タイトルからして、また訃報続きの時期的にやや見るのが重い気分ではあった。でも実際見てみると、末期医療というテーマながら、市川マジックというのか、結構淡いタッチの瑞々しさもある作品で、見てきた中では双璧の「BU・SU」「つぐみ」に続く、市川作品マイベスト3にランクしても、と。

様々な患者、家族の群像劇の様相でもあり、主に6人部屋の向かい3ベッドや個室病室ベッドを固定カメラで捉え、患者達と医師役岸部一徳、家族、看護婦達との何気ないやり取り、終盤患者達が、不安から周囲に当り取り乱す姿も少しはあったけれど、大方は淡々と、穏やかな空気。

その病院の描写に、折にストーリーとは関連のない、外界の四季折々の、都会の街、下町の一角、行楽地、仕事場、そこで過ごす人々の姿、花火、花や緑の自然、等の映像がシンプルなピアノ等のメロディをバックに何度か、暫く流れたのがインパクトで、この作品の好感の元の一つ。

冒頭に市川監督の言葉で、「この映画のドキュメンタリー部分に映っている、多くの今を生きる方々に、心から感謝します」という旨のテロップが出たのだったけれど、

何気ない風景の数々が、病院、という空間と対比して、通常の作品より何だか瑞々しく鮮やかに見え”人生、生活(の喜び)って”、等という感慨のようなものが浮かんだりもして、スパイスとして効いていた、という感じ。

患者達では、最初に登場の、ツイン病室、というのか、老夫婦(山内明、橋本妙)が同じ病室でベッドを並べ、夫が妻に謎々を出したり微笑ましい風情。治療の関係で、妻が別の病院に移り、寂しがる夫と家族の意向で医師に相談、夫を妻に会わす事になり、病室No.と患者名がマジックで書かれた透明の栄養剤入りの袋、が街を走る映像が、何だか人情的温かみが漂う感で、印象的シーンだった。

人物のアップ等もなく、岸部一徳の医師が主、折に看護婦、終盤告知を受けた元サラリーマンの患者(塩野谷正幸)、の状況や心情のモノローグ、彼らの交流もおっとりとその患者の背景に触れたり、先日の「風のガーデン」での病院等のような、実質的な手術や病状のシビアさはほとんどなく、

岸部一徳の、病院は死ぬための場所でなく、良く生きるための場所であってほしい、という理想的モノローグもあったけれど、先日「SONGS」で知って本人は実際京都出身、劇中でもそういう設定、サラリーマン患者に訛からそれを当てられ、余り京都弁、というのは気付かなかったけれど、家族のために少しでも長く生きられるよう努めたい、という心境になった患者に、「なら、そうしまひょうか」等と対応していたのが最後のやり取りだった。

病院は、それぞれの患者の人生に立ちはだかってしまう物、という気がしてしまう、旨のモノローグもあり、怪我や回復を見越した病気で数ヶ月入院、という、考え方によっては人生の休憩場、とはニュアンスが違い、サラリーマン患者や、気丈そうな中年女性患者が、末期の段階で”家に帰りたい”と表す心情は、記憶的にもやはりしみじみした。

現実的にはどうなのか、行き倒れの身寄りない末期病人の男性(田村廣)が、治療を受け、看護婦のモノローグでは身奇麗になり、病室の人と写真を取り合ったりという交流をして、ある日空いたベッド、遺骸はケースワーカーが引き取った、というくだりがあり、”患者”という人格は持って扱われていたのもさり気なく市川作品らしさ、だろうかとも。

また「会社物語」とは趣が違うけれど、構成的に、やはり一貫した、というより、ドキュメンタリー部分の挿入含め、各シーンの積み重ね、で出来た作品、という感で、場面転換が多く、重くなりそうな展開が、ふっとフェイドアウトして小刻みに別シーンに逸れる、見方によっては浅い、綺麗に作りすぎ、なのかもしれないけれど、私にとってはテーマの重苦しさが軽減されて見やすかった、という後味。

良く知る俳優は岸部一徳位で、他は余り馴染みない俳優陣だったのも、この作品では良かった感。淡く、大げさに描かれる訳ではないけれど、絶望を超える、生を受けた事自体への感謝、それぞれの距離感での人の優しさ、普段の生活の中の何気ない美しさやありがたさ、のような余韻がしんみり残る、タイトルの物々しさ、よりは意外な異色の珠玉作だった。(http://www.amazon.co.jp/%E7%97%85%E9%99%A2%E3%81%A7%E6%AD%BB%E3%■追悼・市川準監督■BU・SU(’87)大阪物語(’99)東京マリーゴールド(’01)トキワ荘の青春(’96)会社物語(’88)東京夜曲(’97)東京兄妹(’95)竜馬の妻とその夫と愛人(’02)

★10/14追記:AOL表紙で知った、またもや訃報、峰岸徹さんが肺がんにて、享年65才、と。一癖ある渋さを持つ幅広い脇役ぶり、印象的だったのは、ドラマ「ニューヨーク恋物語」で田村正和のライバルで敵役の商社マン役、落ちぶれた正和さんを言葉でいたぶる時のニヒルな嫌らしさ、「高校教師」での桜井幸子の破滅型の父役等。

それとドラマで共演したアイドル岡田有希子の死に関係が、と噂が立った時の当惑ぶり。岡田有希子、の名も久方、1冊当時のエッセイ+イラスト本が手元に。吉川晃司と同期、正隆氏プロデュースもあったのだった。峰岸徹さんは市川作品出演はなかったけれど、「廃市」「さびしんぼう」等大林作品常連でもあったのだった。遺作も11月公開の大林新作「その日のまえに」に。ご冥福を祈ります。(http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2008/10/13/06.html

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