現代科学の偉大な方程式、という副題が示すとおり、自然の法則や秩序を表現するものとしての方程式の美しさというものに焦点を当てた科学エッセイ集です。
シンプルなモデルで自然界の振る舞いが説明できるというのはやっぱりある種の快感をもたらしてくれますよね。
高校で習うような古典物理や化学でも、複雑怪奇で乱雑にさえ見える自然界にも一貫した法則を見出せることや、逆にそれを数式として表現した方程式で確かに実際の現象が説明できることに感心したというような経験は多くの人にあるのではないでしょうか。
実際には方程式そのものの解説よりも周辺事情をめぐる解説が中心なので、それほど読みづらくはないと思います。ただ、数学的な議論を避けている分、理論の美しさというものがあやふやになっている面もあるのは致し方ないところでしょう。
やはり物理学の数式というのがメインですが、この分野の成果の本当の意味でのスマートさというかエレガントさを感じるには少々高度な理解が必要なのでは、とも思えます。
一応大学まで理系で通した身としてはなかなか楽しめる読み物ではありましたが、今や全く縁のない生業についているもので、いやすっかり忘れてるなあ、ともどかしい思い半分でもありました。
シャノンの情報・通信理論を紹介した「情報をビットで刻む」やカオス/複雑系の話題「生きているのに最高の時代」などはさほど難しくないけれど、中高では学ばないようなトピックなので特に面白く読めると思いますよ。

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