期待のライヴであったがそれ以上。なんだか凄いものを見せてもらった気分になれた。
アコギ一本だけを抱えて出てきたときの立ち居振る舞いやMCは小柄でシャイで人が良さそうなおじさんだが、
ひとたびギターを鳴らし始めると演奏にすっかり入り込むタイプの人で、足を鳴らし上体をひねり大きく天井を仰ぎながら白目さえむいている風なのは、何となくもっとクールに演奏するのかと思っていたので予想外だった。
しかし素晴らしい演奏で、ときに囁くように、ときに弦も切れよとばかりに強く鳴らすギターのダイナミズムは想像以上でありながら、ベースラインには一分の乱れもない。スモーキーなボーカルも深い陰影をたたえている。彼の音楽の大きな根幹を成すのがブルースであることは間違いないが、それ以上の幅とオリジナリティを備えた詩情とでもいうべきものを感じさせてくれるミュージシャンであった。
割合ゆったりと見られたのは良かったが、そう数が売れるタイプではないとは分かっていても同時にもっと多くの人に知ってほしいアーティストだと思う。

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