今朝の新聞一面の書籍広告に『クロ物語 氷海に飛び込んだ犬/独活 章 著』という本が載っていて目に止まったんですが、帰ってきたらちょうどその欄でも予告されていたとおり
「奇跡体験!アンビリーバボー」でその犬、クロを取り上げているのを見ているところでした。
エピソード自体は本当にいいお話だと思うのですが、それを「感動」「号泣」というキーワードで売るTV番組手法はやっぱりちょっと苦手です。当時は犬も気軽に飼えないほど国内も貧窮していたということが一番印象的だったり。
が、それで思い出した本というのはそれとは直接は関係ない
『彼方なる歌に耳を澄ませよ/アリステア・マクラウド 著』
というもの。
この長編小説にも、スコットランドからアメリカに向かう移民船に泳ぎながら追いすがり、ついには飼い主について新大陸に渡った犬のことが重要なエピソードとして登場していた、というのがその理由です。
主人公の両親らはその移民二世にあたるわけですが、灯台守をしていた彼らが、通い慣れた冬の道である凍りついた海の上を渡っていているときに、氷が薄くなった場所に気がつかず溺れ死んでしまったときに、とっさに海に飛び込んだ犬もまた、遠く離れた故郷から一緒にやってきた犬の子孫だったのです。その犬の最期は結局、灯台守の後釜に座った新参者に吠えついて撃ち殺されてしまうという悲しいものなのですが。
そして、主人公らが「情が深すぎて、がんばりすぎる」と言う飼い犬の性は、他でもない彼ら移民一族自身の気質そのものでもあります。
成功した矯正歯科医である主人公が、アル中でどん底の生活を送る長兄を訪ねる一日の中の回想。極論すれば、それがこの小説のすべてなのですが、同時に、文字通り時空を超えた広がりも併せ持っていて、上質の短編を密度はそのままに長尺に引き伸ばしたような、味わい深い作品でした。
ロレーナ・マッケナイト(アイルランド系カナダ人シンガー)とか聞きながらってのはどうでしょう。
『クロ物語』の好きな人にも(私はまだクロ物語読んでないので)多分、お勧めです。

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