ことしは2週間で6回足を運んだダーバン映画祭。
やはり子どもがいると6.7本が限度ということがこの数年でわかった。後半観た3本は、「
El Bulli」「
Toast」「
Rubber」。それぞれ全く違うタイプの映画の作りと内容だったけれど、満足満足。
El Bulliはスペインの有名なレストランを題材にしたドキュメンタリー。恥ずかしながら私は全く聞いたこともなかったこのレストラン、毎年6カ月間だけのオープンながら、ミシュランガイド3つ星、世界一予約が取れないという店だったらしい(というのも、私がこの映画を観に行った2001年7月31日を最後に休業に入ってしまったから)。会席を思わせるオブジェのような皿がコースを埋め尽くす。毎年店をクローズしている間に、実験の様に繰り返される味とテクスチャーの研究。もう、食べ物というものが毎日の人間の胃を満たすものだということをすっかり忘れてしまう。(あまり美味しくは見えない)料理が完璧なタイミングとサービスでテーブルに出されて行く様子。その完璧さを完結するために世界中から集められたスタッフたち。その不思議な視覚と味覚の融合する場所に、行ってみたい。計算し尽くされた料理を食べてみたい、と心から思った。
Toast。イギリスでは大変有名なシェフ/料理評論家ナイジェル・スレーターの子ども時代をモチーフにした映画。英国のあまりに退屈な家庭料理を食べさせられていた子どもナイジェルが自分で料理することに目覚める話。そして幸福な家族に恵まれなかった話。映画は普通の作りながら、小さな子どもの悲しい境遇にすっかり弱くなってしまった昨今。こんな普通の映画で、と恥ずかしくて みんなに見つからない様にこっそりと何度も涙を拭き続けた。
そしてRubber。タランティーノの乾いた残酷さも持ち合わせた映画は、びっくりするほどシュールで皮肉で面白い。夜10時45分始まりということもあって、映画が始まった時には このタイヤをタイヤ目線で2時間ちかく見続けられるのだろうか?と焦ったけれどあっという間に終わっていた。とにかくタイヤ、タイヤ。タイヤの話。夜中近くに観てよかった映画だった。もしくは暑い夏の真っ昼間に、ギンギンに冷えた映画館の中か。