さて、いつものようにハチがご隠居の所にお茶菓子を目当てにやって来るのが落語でございます。これもまたワンパターンでございまして、いい加減やめたらいいじゃああ〜りませんか、というパターンなんでございますが、まあ、これはひとつの何といいましょうか、決まりごとでございまして。。。
さて、ご隠居はハチとの会話を楽しみにして茶菓子を用意していますってえところに、ハチがやってまいります。
ハチ ちは〜す。ご隠居いるかい?ちわ〜す。ご隠居。ご隠居!
隠居 はいはい、そんなに大きな声をだすんじゃあない。ハチだね、はいっといで、はいっといで。
ハチ うぃっす。ご隠居。あ。いや。ひさしぶりだぁあなあ!
隠居 はははぁ。昨日もこの時間に来てくれたじゃないか、ま、すわんなさい。
(ハチいつものざぶとんに座ろうとするが、やはりいつものように飼い猫の玉が座っているので、ハチは目線を玉に合わせるようにしゃがみこんで覗き込む)
ハチ おい、玉、おめぇ、また俺のおざぶに座ってやがんな、このやろう。玉なんて名前で、俺より字数が多いからってえばってやがんな。
玉 にゃあ。(右手を軽く上げてじゃれる)
ハチ おい・・・あたた。玉、てめえ、また俺の顔をひっかきゃあがったな、このやろう!
(玉はハチの顔に右手を乗せただけ。ハチはそのまま玉を抱きかかえて、座布団に座る)
(玉とハチのやりとりはいつものことなので、ご隠居は気にしたそぶりもない。)
隠居 ところで、ハチや、今日はおめぇにひとつ聞きてぇことがあるんだがな。いいかい?
ハチ おや、なんでぇ、なんでぇ。ご隠居さんが、急に改まって。ご隠居にも分からねぇことがあるのかい?なんだか、うれしいねぇ。かわまわねえよ。なんでもかまわねぇよ。聞いとくれ。聞いてとくれ。ほら、聞いとくれ。
隠居 うるさいねえ。こちらが言う前から、ぽんぽんぽんぽんと。本当にせっかちなやつだねえ、お前さんは。。。いや、なに、と言うわけわけでもないんじゃが、まあ、いい。おめぇさん、「共謀罪」と聞いて何を思うかの?
ハチ 「共謀罪」?こりゃあまた難しいことを聞くねえ。
隠居 いや、難しくもなんともありゃあしないんじゃがの。何、簡単でいいんだ。教えておくれ。
ハチ ご隠居さんの頼みとありゃあ、しょうがねぇなあ。よし!
隠居 よし!じゃあないよ。教えておくれ。思ったままを話してくれたらいいんだ。
ハチ うん。分かった。分かりやしたよ。。。ところで、その前に、ちょっと質問していいでやすか?
隠居 うん、いいとも。
ハチ キョウボウってのは、どんな棒なんすかねえ?この、なんていうか、凶暴な棒なんすかねえ?それとも巨根のことですかい?そうか。そかもしんねえな。うん。
隠居 ははは。共謀というがな、棒じゃあありゃせんのじゃ。まあ、そうじゃな、一緒に何かをたくらむっていう、まあ、そんな意味じゃな。
ハチ するってぇと、それを飲むと一緒に何か悪さをしたくなるような薬のことでやすね。けったいな薬があるんでやすねえ。でもって共謀剤っていうわけですかい。そりゃだめだ!そんなわりー薬はいけねぇ!だめでやす!飲んじゃいけねえや!
隠居 ははは。早とちりするんじゃない。共謀罪の罪ってのは、罪のことだ。そうさな、殺人罪のザイと同じ意味だ。
ハチ ザイはザイでもツミのことですかい。たはは。それならそれで早く言ってくださいよ。ご隠居もお人が悪い。
隠居 そうじゃな。先にそういえばよかったなあ。すまんすまん。で、どう思うか聞かせておくれ。
ハチ そうさねえ。一緒に悪巧みをした連中は根こそぎ捕まえちまおうってえ法律でげしょ?いい法律じゃねえですか。いいねえ!おらぁ賛成だね。賛成!
隠居 そうか、やはりそう思うもんかのぉ。うううむ・・・
(隠居は真剣に顔をしかめる)

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