日本における原子力発電所立地受入れの政治過程 (3)関西電力大飯原子力発電所増設をめぐる政治過程 1  政治のはなし

V 関西電力大飯原子力発電所増設をめぐる政治過程

1 電源開発手続きと財政制度
 本稿で原発受入れの政治過程を分析するに際して、その対象として選んだケースは、福井県大飯郡大飯町に立地する、関西電力大飯原子力発電所に関してのものである。大飯原発では現在、最大電気出力117.5万kwの1号機と2号機、同118万kwの3号機と4号機が運転されていて、この4基だけで京都・滋賀・奈良3府県の総消費電力をまかなうことができるほどの巨大な発電所であり、関西電力の設置している原発の中では最新のものである。
 この大飯原発と大飯町についての記述を始めるにあたって、まずその前に電源開発の制度体系について若干の説明を行っておきたい。
 原子力発電所の新増設は、電源開発手続きに則って進められなければならない。その手続きは基本的に、電力会社と地元自治体・住民との直接交渉に委ねられており、地元市町村の同意や用地問題・漁業補償問題の解決を受けて、知事および関係省庁が同意を与えることで、国の電源開発調整審議会(電調審)17)によって電源開発基本計画に組み入れられ、その後いくつかの国による認可を経て、工事計画が認可される運びとなっている。この手続きは水力発電所や火力発電所の建設のときも同じであるが、ただし原発には特別に二度の公開ヒアリングと安全審査が必要とされている(図表4)。
 このように、原発立地を進める際には「地元の意見」が求められるが、それは立地市町村と知事の同意によって代表され、これ以外には手続き的には必要とされない。そして、住民の直接の声が入る機会としては、公開ヒアリングや、首長や議会が自主的に開く懇談会などがあるが、あくまで参考意見を求められるにとどまり、公的に保証されたものではない点をまず指摘しておきたい。これが、アメリカや西ドイッなどと比べて日本は「拒否権地点が少ない」といわれる所以である。
 また、電源開発手続きとともに重要なのが、電源三法交付金をはじめとする一連の「電源立地促進財政制度」である。1970年代になると、原発反対運動が高揚し新規立地が難しくなっているにもかかわらず、石油代替エネルギーである原子力発電をできるだけ早急かつ大量に開発しなければならないというジレンマに原発がさらされていたことはすでに述べたが、これに対処すべく通産省は、従来のような体制・法制度だけでは原発の円滑な立地が進まないという認識のもと、74年には新たにいわゆる「電源三法」(発電用施設周辺整備法、電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法)を制定した。その後、立地が難航する中でこうした一連の財政的措置は81年以降毎年少しずつ拡充されて次第に多様化し、その対象は公共用施設のみならず地域産業の振興や福祉の充実などにも広げられ、地域の生活に関係するほとんどの事がらに対して補助金が交付されるようになっている18)。また、財政についていえば、税制の影響も大きい。村松岐夫の指摘にもあるように、日本の地方税制が固定資産税や事業税法人割を一般財源としていることで、地方政府が工場誘致に魅力を感じる一因となっているといえる19)。
 これらを踏まえつつ、次節からは実際に大飯町が原発を受入れる過程を検証していくこととしたい。
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