選挙戦の報道は右派より!?
投票まであと、3週間と迫り、選挙戦も白熱化してきた。
PDのヴェルトリーニは既に69県を特別バスで全国遊説を続け何処の政治集会所も大変な盛況である。
PDL に9ポイントと水を開けられその差は縮じまらない。
その原因の一つはメデイアの右派支持の偏った報道だろうか?
3月22日のローマの有力紙イル・メッサッジェロは放送監視委員会の警告として「PDL 優先の報道は "パール コンデイチオ" に違反してる」
と掲載した。イタリアの全国ネットを持つTV局は国営が3,民間TV局が4(内、3局はベルルスコーニが有する)、計7局であるが、
1日の平均TVニュースの放送時間は PD が国営31分(民放26分), 虹の左翼連合SA が国営11分(民放8分),
PDL が国営33分(民放42分)になってる。
"パール コンデイチオ" とは平等に扱うと言う意味だが違反すると、警告、罰金が課せられる。
イタリア民主主義を守る重要な法律である。
今回のテーマは市民の政治と政党に対する深い不信感をレポートする。
レポートにある数字の出所だが有力週刊誌「エスプレッソ」グループが2006年に発表したウルビーノ大学政治社会研究所が実施した与論調査「あなたが信任するイタリア国家と諸制度を選んで下さい」の中から信任度が最も低い項目を筆者が逆に「深い不信感」として項目とその割合を%で表示した。
選挙民の政治・政党・国家・公務に対する不信度
不信度 1位 諸政党 91,3%
それらの幾つかを拾ってみよう。
* イタリア病と言われる安定した政治勢力がなく、強力な政治決定が不可能。
理由は小政党が数十も有り、機能しない。
結果として党利党略が横行して国庫金を盗んでいる、と言う。
例えば今回の総選挙でも僅か1%の得票を得れば莫大な現金が国から支給される。
* 中道左派連合のクリーン度とモラルの低下であろう。
最大与党の旧DSのクリーン度が剥げ委員長、書記長が介在疑惑を招いた左派系銀行のTOB事件。
党首と書記長の二人が左翼系のUNIPOL銀行の頭取からTOBの経過を電話で聞かされて、歓喜して異口同意に
「、、、え! われわれの銀行(UNIPOL)傘下に国立労働銀行も入る、、すばらしい!われわれにその実現の夢を見させてくれ!!」と答えたと、2005年夏から秋への盗聴によって発覚したのだ。
今のところ、政治資金に係わる不正は無いが政党の最高幹部が何故、「すばらしい!」と歓喜したのか謎である。
このスキャンダルを調査した判事は職権乱用で最高司法会議で責任を問われている。
不信度 2位 77.5% 国会上下両院
機能しない政治に高い不信と危機感であろう。
イタリアの政治コスト高はEU連合国内でも有数に数えられ。
上院議員の歳費は月額22097ユーロ、下院議員は21521ユーロ(いずれも税引き前)で仏独国会議員歳費と比べるとイタリアは約44%も高いのだ。
更に政党助成金の交付(国会に議席を持つ政党)は2億ユーロを越え仏独の約2倍が諸政党に国庫金から支出されてる。
それにも拘らず市民の生活状態は改善されない物価高への痛烈な抗議だ。
不信度 63 % 3.位 国家・中央政府
イタリア国家・社会の清潔度は先進国中42番目(2004年)と最悪である。
このランキングは国の政治のクリーン度(経済犯罪汚職・贈收賄割合を除いた)を計る。25人の閣僚と約50人の副大臣がいる。
国庫の歳出は莫大な経費になる。
何故こんなに政府閣僚が多いのか?
答えは8会派から各会派の勢力に合わせて人事を配分するからだ。
国家の歳出を削る為に次の内閣からは12閣僚に大幅に削減する法律を制定。
* 上院議長を含む主要政党要人たちがその地位を利用して購入した住居費が市価の20―30%超低特価であったこと、で市民から抗議が上がった。
* 前法務相が現職時ミラノ・モンザで開かれたF1国際グランプリンレースに息子を連れ私用で政府専用航空機を使って見物に行ったこと、批判に対して法相は前ベルルスコーニ政権はわれわれの倍以上に私用していたではないか、と反論。
不信度 4位 57% 司法・犯罪との戦い
治安の悪化であろう。
新大統領ナポリターノの就任に便乗して恩赦法が右派のベルルスコニーと議会運営上の取引で成立。
監獄が一杯になり42000人の収監者を恩赦で出獄させた。
間もなく2年になるが監獄はすでに受刑者で一杯、再犯を犯し監獄に戻った。
恩赦にによって出獄した受刑者の中にはかなりの重罪の凶悪犯も含まれ、
これですっかり左派政権の信用をうしなった。
各地で重犯罪が各地で発生しミラノやボロニャの市長は自冶体にもっと「警察権」を要求してる。
イタリアの裁判は刑事立証が弱く刑が軽過ぎる。
また、民事では判決が出るまで長期に渡る。
正義は何処にある?と問う。
マフィアとの戦いを放棄した裁判所
事の発生は今年の3月11日シチリア州ジェーラ裁判所。
エデイ・ピナット判事が8年前マフィア・コーサノストラ組の幹部2人と幹部の妻の3人に有罪判決を言い渡し収監した。
ところが、判決後8年経っても判決理由を明示せす2年前に時効になった。
時効になった為、ジェーラ裁判所は収監中のマフィアとその妻を釈放してしまった。こんなバカな事が起きていい事かとイタリアは蒼然となった。
法務相は激怒して最高司法会議CSM は当該の判事を召喚して制裁する。
イタリアの裁判は判決主文は法廷で直接被告に申し渡すが判決理由は後日文書で通知される仕組みだ。
それにしても、何故、判事は判決理由を書かなかったのか謎につつまれてる。
マフィア絡みはとかく謎が多い。
携帯電話の盗聴について善し悪し
ところイタリアの凶悪犯罪摘発率はかなり優秀で逮捕率は高い。
しかし、大掛かりな不正や凶悪犯罪のほとんどの重要捜査は電話盗聴による。
* 007秘密警察によるテロ活動、クーデター陰謀と違法な諜報活動
* 汚職 贈収賄 (政党団体、政治家、企業家、役人)
* マーフィア等の組織犯罪(犯罪の中心は公共事業費のピンハネ。逃亡中のすべての大親分を捕まえた)
* 密輸・武器、麻薬、人身売買、売春組織等
* 大掛かりな株のインサイダー取引・不正金融による企業合併
* 粉飾決算などの企業犯罪
* 昨年夏大問題になったカルチョトポリ(八百長サッカー)
* 大掛かりな脱税者 等、等
以上の凶悪犯罪は100%電話盗聴によって発覚し、捜査され、犯人が逮捕されている。
電話盗聴の実態
法務省が発表した2005年の電話盗聴内容は以下の通り。
* 年間常時33000人が監視下に置かれ
* 毎年10万件が盗聴され(順番にローマ、ミラノ、ボローニャ、ナポリ、パレルモ)
* 盗聴された市民は年間150万人
* 盗聴費用は2004年が2億6300万ユーロ、一回の盗聴費は23ユーロ、
盗聴が問題になる時は一般市民が巻き沿いになり、報道機関に流れる事だ。
一方、盗聴制度を容認しないと国家・国民の治安維持が保たれない。
そこで、盗聴を規制しようと左派政権は考えている。
電話盗聴の規則の内容は
1,最高90日、例外としてマフィア
2. 延長する場合は検事長の裁決を要する。
3. 秘密の秘守義務と広報・公開の禁止
4. 盗聴センターを現在の116から26個所に減らし、高等裁判所に移す
5. オペレターが違反した場合は3000から18000ユーロの罰金の制裁がある。
6. ジャーナリストの違反は60-1000ユーロの罰金
不信度 5位 54.5 % 市町村行政府 ・公務員のモラル低下
公務員のモラルと公務サービスが改善されないため市民が怒っている。
イタリアの公務員数は約361万人(2005年)、その内、約50% が国家公務員。
高年齢化して35歳以下は8%に過ぎない。
北イタリア南チロル州のボルザーノ市で5人の職員が解雇された。
理由は怠け者で万年欠勤、さすがに誰も5人の怠け者を擁護しなかった。
平均20%の公務員が毎日、722.000人が全国で欠勤している。
この国の公務員の意識の中には「公僕精神と専門職意識」を持っていないか、
または全く欠如していてその数は少なくない。
最近は公務がコンピュータ化したので一面便利になったが、パソコンが何らかの理由で機能が停止すると、
とたんに業務が停止され、責任をPCが停止したから業務出来ないと言い訳をする。
その最悪の例は納税者宛に申告漏れやミスの修正申告書と納税加算通知が送られてくる。
それらの通知書はコンピュータの操作間違いで送られる事が大半である。
税務署に出頭して抗議すると役人は決して非を認めず、PCが機能しなかった、と言い訳するのだ。
納税者が間違えると罰金に追徴金まで加算請求されるのに役人の間違えはただの言い訳で幕引き、こんな役人の横暴さが許されていいのか!
一方、彼らを養うための歳出は国民総支出の約11%を占め一人当たりの平均賃金は29.654ユーロ(2005年)。
つづく

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