大連立レッタ政権が両院で歴史的信任投票
深刻な財政危機 と不況のただ中にあるイタリアは、今年もマイナス成長1,7に下方修正、失業者も400万に達する。国民の税負担率は対GDP43,8%と史上最悪記録で悲鳴をあげている。伊国全産業の平均30%が外国の資本に支配されている。国の翼、再建アリタリアは倒産寸前でエアーフランスが資本注入、国の最大電話会社テレコムは経営悪化でスペイン電話会社が筆頭株主になった。 ファッション界ではグッチやフェンデイ、ブルガリがフランスに、加工食品はオランダのネッスルに買われたと言う具合だ。ユーロ圏第3の経済大国イタリアで政局混迷を引き起こせば金融市場は景気回復や財政再建が遅れ、ユーロ圏の危機が再燃した。事実、イタリア国債10年物の利回りは8月半ばには4.1%台だったが、9月27日には4.5%台へと上昇した。
深刻な財政危機から脱出するため4月に発足したばかりの大連立レッタ政権がこの5ヶ月の間、ささやかな対策を成立させたものの、安定した政権を必要としているにも関わらず、内紛の連続で、ベルルコーニによってほとんど機能していなかった。10月1日から付加価値税の1%引き上げ(21から22%になる)を巡り、撤回を求めるPDL自由国民と税収確保を重視する経済・財 務相らとの対立が激化。ベルルコーニは「付加価値税引き上げは連立協定違反」とレッタ首相を非難、9月28日自由国民(PDL)党所属の5閣僚を辞任させて政権基盤が極めて脆弱なレッタ内閣を一気に崩壊させる倒閣の脅しをかけた。
レッタ首相はナポリターノ大統領の勧告を受けて国会の両院で信任投票に訴えた。首相は中道左派勢力が上院では過半数割れ しているため、ベルルスコーニ元首相の中道右派政党「自由の人民」の穏健派議員の切り崩しを進め、レッタ首相は10月2日の上院で演説し、経済再建を進める同国は「安定を追求すべきだ」と述べ、政権の継続を訴えた。倒閣に動いていたベルルスコーニ元首相は、PDLが国益より私益ベルルスコーニを優先すると批判が集って内部分裂を起こし、投票直前の土壇場でベルルスコーニは造反を知り倒閣を断念し、レッタ政権の継続が確実になった。レッタ内閣に対する信任投票は賛成235票、反対70票で政権を信任した。
ベルルスコーニ国会で公職追放命令が追認
しかし、倒閣の本当の目的は8月1日、イタリア最高裁が脱税事件で起訴されていたベルルスコーニ元首相に禁錮4年の有罪判決と公職追放を言い渡たした。その結果、彼の恐怖感は国会で公職追放命令が追認され、上院議員の地位を失って、彼の政治家生命は終焉を迎える。つまり、倒閣は元首相自身の保身の口実にすぎない。元首相は少女買春容疑等を含む訴訟事案を抱えながら国家の非常事態を逆手に執る、盗人猛々しいとはまさにこのことを言うのであろう。上院の特別委員会は10月4日、ベルルスコーニ上院議員資格剥奪を賛成15反対8で決定した。最終決定は21ごろまでに委員会報告決定が上院本会議に上程され正式に決まる予定である。
PDLの内部分裂はベルルスコーニ時代の終焉?
ベルルスコーニは77才の誕生日を迎えたのはつい数日前であった。 メデイア王と言われ、立身伝中のベルルスコーニの支配下には三つのTV放送局の全国チャンネルの他、ラジオ、日刊紙3紙、週刊誌や他のメデイア有する彼の右に出る者は皆 無である。ちなみに彼の3TV放送局と国営RAITV を比べても視聴率は互角である。ベルルスコーニが今日なお強い影響力と人気を得ているのは正にマスメデイに依拠 したTV放送で自身の人を引きつける人なつこい会話力とスマイルなソフトな発信であろう。 更に彼はユーロ通貨に対して懐疑者であり、与論調査でもベルルスコーニ支持率が今でも20%有る。それは30%の市民が昔のリラ通貨体制を支持している事実に反映している。
右派の最大悲劇は次代を継ぐリーダーが居ない事。 ベルルスコーニほどのカリスマ性を持った右派の政治家リーダーが他に居ない、故に77才の老いたベルルスコーニを喚起している。 彼は危機感から<夢はもう一度!>でForza Italia(がんばれイタリア)を復活させた。 この復活させたFIとPDLをプラスするとベルルスコーニ個人への支持者は80%いる、と言う。
しかし、10月2日、上院での内閣信任投票の本会議で政府閣僚席のレッタ首相にPDLの幹事長で副首相アルファーノはPDL上院議員の内訳をメモ書きレッタに伝えた。ベルルスコーニ支持32、棄権24、ベルルスコーニと決別25人、彼は20年間イタリアの政界に君臨して退く自分の歴史的な敗北を知り、 己の意思を翻す決意をしたと思われる。
イタリア人は失望感を抱きながらも統一EU連合体と共に前進する!
最近の与論調査の結果(9月中旬)を参考にしながら選挙民が望むイタリア政治体制を展望すると EU連合への信任は 33,5% (2000年次56,8%) 統一EU連合成立はこの10年間は統一して;57,8% 強くなった、弱くなった10,6% 変わらない31,6% イタリアはEU連合に留まるべき 69,5% EU連合から 脱退すべきだ30,5% イタリアがEU連合から脱退した場合現在より; 悪くなる43,5%, 良くなる23,4% 変わらない25,4% 統一ユーロ通貨体制:良い46,5% 悪い40,6% 解らない12,4%
上記の与論調査から見えてくるイタリア人の苦悩は現在がどんなに苦しくともよほどの不祥事が起きない限り統一EU連合成立と通貨体制を支持して決して後戻りはしない強い意志が伝わってくる。
政党支持を見ると
28,5 % (25,4%) PD民主党
4,8% (3,2%) SEL左翼連合(再建共産党派を除く)
26,2% (21,6%) PDL自由国民
3,1% (4,1%) Lega Nord北部同盟
2,2% (2,0%9) Fratelli D‘italiaイタリアの兄弟(右翼)
20,9% (25,6%) Mobimento 5 Stelle 5星運動 3,6% (8,3%) Scelta Civica con Montiモンテイと市民選択 2,6% (1,8%) UDCキリスト教系中道 8,1% (8,0) Altriその他
( )内は2013年春の国政選挙結果
このようにPDとSELがつまり中道左派系が春より伸びて中道右派系は縮小した。5星運動に至っては国政の羅針盤が無く内部分裂(PDとの連携派)を起こしてさらに分裂の様相を呈している。PDLは内部分裂(旧キリ民党系)が表面化してベルルスコーニの押さえは効かなくなった。
次期政権の有力候補者
与論調査の人気投票によれば民主党・フィレンツエ市長レンチ マッテオが32,8%とダントツの勢いだ。
2位は現首相レッタで17,2%
以下3位8,1%のベルルスコーニと続く。
なお、5星運動の党首グリッロはたったの4,5%にすぎない。
民主党・フィレンツエ市長 レンチ マッテオ
1975年フィレンツエ生まれ、 38才、大卒(法学部)政暦はキリ民党から別れたPPI(人民党)、マルゲリータ、民主党に合流、フィレンツエ県知事をへてフィレンツエ市長に選ばれて2期目。彼のスローガンは<チェンジの方向に。。。>別名ロッタマトーレと言われる世代改革者(クズ鉄廃品回収者の意味)だが党内の古い指導者から世代の若返りを主張して一躍人気を得た。
党内200人の国会議員の支持を得て有力な次期首相候補となった。
但し、フィレンツエ県知事を経てフィレンツエ市長に成った若い38才のレンチは国政が全く未経験であるがために国家指導者としては未知数である。
イタリアの将来を決める国家の制度改革の審議促進
レッタ政府が取り組むイタリアは経済危機からの脱出と大統領の諮問を受けて5人の賢人が答申した国家の制度改革を今期議会で成立させる。
答申されて居る内容は次の通りである。
*2005に発効した現行の選挙法は違憲の可能性あり、直ちに法改正が必要、
*2院制度を廃止して下院の議席数を現行630から480議席に減らす、
上院は120の参事会で州議会員を州人口で配分
*政党に対する補助金は必要、しかし現行制度は見直し
*国民投票の必要署名数を引き上げ見直し、
*首相の職務権限の強化
*大統領職の権限強化は不必要
最大党PD
党全国大会は11月24日で書記長・次期首相候補に指名される。 現在4人が立候補している。最有力候補者は若い中道左派指導者である30代のレンチ・フィレンツエ市長で、人気がありPDを再建させる可能性を秘める人物だ。春の大統領選出経過で 世代間交代を巡る党内抗争で若手との乖離、<特にベルルスコーニの党とは一緒にやれない>シニア派は「五つ星運動」に連合を働きかけたが、<PDは死んだ党>として拒否された。
レッタ新政権への信任は統一したが現 在PDは10の派閥があり党分裂の縁に立たされている。大統領選挙会では傘下にあったSEL左翼はPDの候補者には投票せず「五つ星運動」に同調した。かってのイタリア共産党の影響力は低下の傾向にあり、当時、共産党のプリンスと謳われた首相や閣僚を務めた古参の有力者は世代改革者レンチ・フィレンツエ市長派によって第一線を退かされた PDは党大会を開 いて新しい書記長を選ぶがそれまでの間は<摂政職>社会党系のエピファニ氏が繋いでいる。
民主党の次期首相候補を決める事前投票
その後、12月8日予定にはPD次期首相候補を決める事前投票が実施される。 前回の事前投票には400万人以上が参加している。 今回2ユーロを提供するだけで誰でも投票出来る。
完

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