古代法典の「延喜式」には、祭祀における捧げ物として、絹織物、米、海産物などが挙げられています。
こうした捧げ物は主に収穫物であり、神からの恵みであると考えられてきました。
人々は神から授かったこれらを神々に捧げることで感謝を表しました。
やがて、これらの捧げ物が村々から持ち寄られ、交換されるようになると、流通の場である「市」が生まれました。
この「イチ」は「斎」「厳」と同源の言葉で、神を祀る神聖・清浄な場所を意味します。
商売の起源は神への捧げ物を交換することで始まりました。
当然その場には神が介在します。
市場には市神が存在し、この市神をまつることで自由な交易が保証されると考えられました。
商売が神のもとで行われる神聖な行為であったことは、昔の商人が穢れを嫌った点にも表れています。
商家では、商売を始める前に必ず手を洗い、開店前に出入り口を掃き清めて打ち水をし、盛り塩をします。
このように商売と神道は密接に関係しています。
人々は、収穫を神の恵みと考え、その一部を捧げることで神への感謝を示してきました。
豊かな生産と安全・繁栄を祈る神道祭祀の理念は、日本人の「働くことを善として喜びを見出す」と言う勤労観に生きているといえます。
今日でも、日本企業の多くは「企業神社」を持ち、会社や工場には神社や神棚が祀られています。


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