花粉症などのアレルギーに対する免疫療法
内科/舌下免疫療法(SLIT)
インフルエンザ流行が猛威を示す中、咳が止まらない、鼻水が出るなどの風邪(ウイルス感染症)に似た症状を示す方が多くいらっしゃいます。2月に入り、スギ花粉症の症状が現れ始めているのかも知れません。スギ花粉症の有病率は全国で20%を超えると報告され、IgEという免疫グロブリンが肥満細胞や好塩基球に結合し、アレルギー惹起物質であるヒスタミンなどの生理活性物質が放出される事で血管内皮細胞、平滑筋などに働き浮腫、掻痒感、咳などの症状が現れます。このIgEが関与する即時型過敏反応をI型アレルギー反応といい、花粉症などのアレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などの疾患が現れます。多くの治療には、抗ヒスタミン剤が使われ、数カ月間で症状が消えた場合はこれらの対症療法でやり過ごせばよいですが、ハウスダストやダニなど1年中存在する抗原(アレルゲン)に感作されている場合は薬を飲み続けなければならなくなります。この厄介なアレルギー疾患に対しては、微量のアレルゲンを継続投与し、身体が反応しないように慣れさせる脱感作療法という治療方法があります。なかでも舌の下に微量のアレルゲンを投与する舌下免疫療法は、注射による投与に比べて安全・効果的・在宅治療が可能であることが明らかとなり、日本でもスギ、ダニに対するアレルギー性疾患に対して抗原特異的免疫耐性を誘導し、アレルギーにかかりにくい身体を作る方法が開発され、2014年にスギ花粉、15年にダニアレルギーが保険適用となりました。
舌下免疫療法の効果が現れてくる仕組みとしては、制御性T細胞(過剰な免疫反応をおさえる細胞)が活性化する、1型ヘルパーT細胞(アレルギー反応を抑える細胞)が増加する、抗原特異的な2型ヘルパーT細胞(アレルギー反応を促進する細胞)の増加を抑える、IgEとアレルゲンの結合を妨げる抗原特異的なIgG4/IgA抗体産生が増加するなどが知られています。Th2T細胞の活性化は喘息などのアレルギー性疾患のみならず、腹部大動脈瘤等の発症の仕組みにも関わっている可能性があり、今後の臨床研究の成果が期待されています。
当院でも適応がある方には舌下免疫療法を行っておりますので、お困りの方はお気軽にご相談下さい。
※1.2論文引用
1 K.Shimizu, ATVB 26 :987-94, 2006.
2 K.Shimizu, JCI 114 :300-308, 2004
鎌ケ谷総合病院 内科部長 清水 浩一
☎047(498)8111 千葉県鎌ケ谷市初富929ー6
その6は、本日発行の朝日れすかで掲載しています。
「腎機能を把握して健康的な生活を送りましょう」
竹川記

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