「どんな国民国家にも義理がない企業の活動を国民国家が挙げて支援する義理は特にないと思います:内田樹氏」
TPP/WTO/グローバリズム
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片山杜秀さんが朝日新聞に新自由主義者がナショナリズムを活用するのが、その方が「安上がり」だからだと書いています。
僕もまったく同意見。
朝日のオピニオンに書いた記事も「なぜ現に国民国家の解体を進める政権が過剰にナショナリスティックになるのか?」についてです。
安倍政権のねらいは国民国家の資源をグローバル企業に付け替えることですが、それに国民が同意するためには「日本が勝つために」という綱渡り的な詭弁が必須です。
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グローバル企業は実際には「日本の企業」ではもうありませんが、それが「勝つ」と日本人の優秀性が証明されたような気になる。
「日本の企業」というのは国民国家内部的な企業のことです。
日本人の若者を雇用し、地元の地域経済にトリクルダウンし、国庫に納税することを「責務」と感じる「身びいき」な企業のことです。
それなら国民と利害は一致するからその経済活動を国民国家が支援することは筋が通っています。
でもグローバル企業(無国籍企業)は違います。
いちばん人件費が安いところで人を雇い、いちばん製造コストが安いところで操業し、いちばん公害規制がゆるいところに工場を建て、いちばん法人税率が低い国に納税する。
それは経営者として当然の経営判断です。
どんな国民国家にも義理はない。
どんな国民国家にも義理がない企業の活動を国民国家が挙げて支援する義理は特にないと僕は思います。
でも、「日本を勝たせる」という魔術的な言葉づかいで、国民は「グローバル企業が世界市場でトップシェアをとるためにわれわれは何を犠牲にできるか」と問い詰められる。
ナショナリズムは「『日本を勝たせる』ために、私たちは何を犠牲にできるか?」と問う
国民たちが、原発の再稼働を受け容れ、消費増税を受け容れ、TPPによる農林水産業の壊滅を受け容れ、最低賃金制の廃止を受け容れ、サービス残業を受け容れ、独裁的な政体を受け容れる方向に誘導する装置です。
ですから、私企業のために国民国家の資源を投じることを「日本が勝つためには必要なのだ」と言う人たちはおおかたが「オリンピック誘致」派で「クールジャパン」派で「グローバル人材育成」派です。
そういう人たちはそういう人たちなんです。

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