米核廃棄物処理の新事情:米国基準に照らせば、日本は、廃棄物永久処理場は当然、原発再稼働に適した場所さえ皆無投稿者 あっしら 日時 2014 年 2 月 27 日 から転載します。
論考は、酷い事故が継続している福島第一に日本国民の多くが“無反応”であることに驚いている米国メディアの記事を取り上げているが、その問題は脇におくことにする。
日本は、原発を即時廃炉にする政策に舵を取らなければならないと考えている。
同時に、それを国策とするにあたって大きく立ちはだかる難関が使用済み核燃料(放射性廃棄物)の処分問題だとも思っている。
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政府が「エネルギー計画」で“原発は重要なベースロード電源”としたのも、原発を何とか存在させたい勢力の願望が込められていることを否定しないが、使用済み核燃料問題が火を噴くことを考えると「原発はもうやめ」と言えない事情が大きく関わっているとみる。
技術も未確立、危険性がより高く、費用も膨大という見通しも取り柄もない「核燃料サイクル」や「高速増殖炉もんじゅ」についてさえ、政府が“やめる”と言えない状況がある。
昨年秋に下北半島のむつ海岸に3000トン規模の新たな中間貯蔵施設ができたが、それも、「核燃料サイクル」事業の継続が前提で受け容れられたものである。
日本列島には、使用済み核燃料棒が1万7千トンほど保管されている。六ヶ所村の再処理施設には頼み込んで運び込んだ2900トンほどが保管されており、残りの1万4千トンは、各原発施設内にあるプールに保管されている。
エネルギー政策策定に権限を有する政府が、「原発はもうやめる」と言った途端、原発の後処理を押し付けられてきた六ヶ所村や下北半島は、当然、再処理に使われることを前提に預かっている使用済み核燃料棒を元の原発に返還するよう主張するだろう。(昨年秋にできた中間貯蔵施設も受け入れを拒む)
六ヶ所村が返すと言ったからといって、各地の原発立地自治体がそれを受け容れることはできない。各原発の使用済み核燃料保管プールの余裕がなくなったからこそ六ヶ所村に移送したという背景があるからである。
というより、この使用済み核燃料棒問題は、そんな対立がたわいもないことのように見えてしまう大騒動に発展してしまうエネルギーを秘めている。
賢明な選択とは言えないが、原発立地自治体は、経済的利益のために危険を承知で誘致し稼働も認めてきた。それゆえ、原発が廃止されるとわかった途端、使用済み核燃料棒にとどまらず、原発プラントまでの“超絶危険物”を地元からすぐに撤去するよう強く求める。
米軍基地についてはウソやゴマカシであっても“必要性”や“存続メリット”といった言い訳ができるが、どんに強力な政権であっても、「原発施設&使用済み核燃料棒」の撤去を求める運動を鎮めることはできないはずだ。
原発廃絶を国策にするためには、何が何でも、使用済み核燃料棒の最終処分に見通しをつけなければならないのである。
そうしなければ、本音は脱原発であっても、使用済み核燃料棒問題を抑え込むためだけに、“安全な”原発は稼働すると言い続け、解決を先延ばしにすることになるからである。
官僚は、火が噴くような問題を提起する根性はないから、ずるずると先延ばし策を選択する。
総選挙で勝利し内閣総理大臣に指名されたものが、責任を持って解決策を提示しなければならない。
これまでも書いてきたが、私は、恥をさらすことでもあり心苦しいことでもあるが、“核のゴミ”の受け入れを政策ともしたロシアのプーチン政権と交渉し、使用済み核燃料棒最終処分問題の解決に向け道を拓いて欲しいと願っている。
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「静岡新聞」2月25日付第2面「論壇」より
米核廃棄物処理の新事情
ニューヨーク大名誉教授 佐藤 隆三
岩塩層地帯に処理施設
ニューヨークタイムズ紙は原発と核廃棄物処理に関する記事を頻繁に掲載するようになった。これは、原発ゼロの都知事選候補者が敗れ、原発をベース電源とする自民党支援の舛添要一新知事が就任して以来、特に顕著となった。
記事の一つは、福島第1原発汚染水漏れで、約100トンもの高濃度汚染水が漏洩した、との報道である。過去6カ月間で最悪の事態となり、放射性物質1リットル当たり2億3千万ベクレルが検出された。これは、日本政府による安全基準の380万倍の濃度である。にもかかわらず、政治的問題に発展していないのは、日本人がこうした事実にもう馴れっこになっているためか、と疑問を投げ掛けている。
同紙の別の著名人り記事は、小泉純一郎元首相の核廃棄物処理に関する問題提起に触発されたものである。米原発もこの問題は回避できない、として詳細な現状報告を行っている。一口に核廃棄物といっても、核兵器の研究開発からの廃棄物と原発や核の平和利用からの廃棄物は異なった性質を持っている。前者の廃棄物の放射能は低レベルだが長い寿命(1万年)を持っている。一方、原発などからの高レベル放射能廃棄物は比較的短命である。
米政府は核兵器の研究で生じる廃棄物の恒久的処理のため、ニューメキシコ州に米国核廃棄物隔離試験施設(WIPP)をすでに設置している。この記事は何故WIPPがこの地域に設置されたかを一般読者向けに平易に説明している。
この地域は数億年前につくられた岩塩層でできている。廃棄物保管場所は地下約700bの岩塩層につくられている。廃棄物を入れると、その熱で水分が少しずつ蒸発し、岩塩層が更に硬化する自然現象が起こり、数億年後には廃棄物も岩塩層の一部となる。
一方、原発などから出る高レベル放射能廃棄物に対しては、米国でもまだ最終処理場所は決まっていない。議会はネバダ核実験場のあるユッカ山脈に核廃棄物処理場をつくることを決めた。だが、地元住民や米国の有力議員リード氏の反対で計画は頓挫している。
日本には適地「皆無」
前述記事の執筆者は、地質学者やその他の専門家の意見をまとめて、ニューメキシコ州に設置したWIPPの岩塩層地帯に、原発などからの廃棄物も永久的に封じ込めることが科学的見地から最適であろう、と論じている。
だが、ここでも地元住民や環境保護団体は、この地域でとれる食用塩が放射能まみれになる、と猛反対をしている。ただも、賛成者も反対者も同意しているのは、この岩塩層地域には何億年もの間地震の発生が皆無で、処理場の必要条件を満たしている、という点である。
小泉−細川連合の主張では、地震大国日本には、どこを探しても地震発生ゼロの必要条件を満たす地域など存在しない。原子力規制委員会が認めても米国の基準から見れば、廃棄物の永久処理場は無論のこと、原発の再稼働に適した場所も日本には皆無ということになる。
コメント
01. 2014年2月27日 17:28:02 : AQXA1bTwkA
地震大国日本に原発を作ること自体が正気じゃないんだよなあ
それなのに原発推進派ときたら…
02. taked4700 2014年2月27日 17:41:33 : 9XFNe/BiX575U : obdl8yuqRM
>賛成者も反対者も同意しているのは、この岩塩層地域には何億年もの間地震の発生が皆無で、処理場の必要条件を満たしている
これは事実かも知れませんが、少なくとも
>この岩塩層地域には何億年もの間地震の発生が皆無
ということは、過去を取ってみても、未来を取ってみても、事実ではありません。
そもそも、岩塩層がある、それも非常に大規模な岩塩層があるということは、その地域が大昔は海であったということであり、岩塩層の存在自体が大規模な地殻変動があったという意味です。
何億年という期間、一定の広い地域が地殻変動を受けなかったという証明はできないはずです。例えば、ちょっとした石ころの年代測定はできるでしょう。またはある一定の狭い範囲、つまり、トレンチ調査で掘った幅数十メートル、長さ数百メートル、深さ数十メートル程度の範囲であれば、その地殻が過去数十万年からそれ以上の期間何らの地震を起こしていないという証明はいろいろな方法で可能かもしれません。しかし、この程度の広さの地域であれ、何億年という期間全く地殻変動がなかったという証明はできないのではないでしょうか。更に、もし、使用済み核燃料の保管施設として使うのであれば、より大規模な施設が必要になり、そのための深さと広さはトレンチとは比較にならないほど大きなものになります。
つまり、WIPPに保管をしているかどうかはかなり疑わしいということです。このことには、例えばフランスでWIPPと同様な施設があるかと言えば未だに存在していないことからも推測できるはずです。
なお、自分も先日気が付いたのですが、フランスもドイツもMOX燃料をかなり多量に使ってしまっていて、MOX燃料は地層処分前の水冷が必要な期間が格段に長く必要であるのにもかかわらず、そういった施設を作っていない様子です。
アメリカもフランスもドイツも、その他の原発保有国も、使用済み核燃料についてどう処分をするのかが政治的な課題として今後問題化するはずです。そして、その程度は、多分、アメリカよりもフランスやドイツの方が高いのではないでしょうか。つまり、MOX燃料の処分は相当程度に難しいということです。
日本は相当程度に注意しないと、フランスやドイツの使用済みMOX燃料の処分をする羽目になってしまうと思います。もちろんその場合は、アメリカの核廃棄物も受け入れるということになるのでしょうが。
現在起こっていることは、低線量被曝を日本政府の意向で日本国民にさせるということであり、将来、被曝被害を受けた一般市民と行政やマスコミが争うという内戦状態になるのではと危惧しています。
タイやエジプトを見ていると、上に書いたような状態に日本は誘導されているのではと考えざるを得ません。
03. 2014年2月27日 18:22:20 : LDktGm3rB2
>>02さん然り 悪屁がもし原発を輸出するなら
「廃棄物は日本で引き受ける」と
言っていると思うのが当然でしょう。
輸入国とすれば引き取り条件が無ければ原発を買う国は
皆無でしょうから。原発企業のちょうちん持ちに首相は
務まらないという証明です。
04. あっしら 2014年2月27日 18:48:14 : Mo7ApAlflbQ6s : rqMSrEU2OI
taked4700さん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
2年前、地下水があふれ出て12万本以上の金属容器を取り出さなければならなくなったドイツのアッセ「中間貯蔵施設」も、岩塩の採掘坑です。
英国では、ちょうど一年前、最終処分場として有力候補地であったカンブリア州(セラフィールド核施設も立地)が、膨大な支援金と雇用の約束を蹴って建設を拒否しました。
かつては、高濃度放射性物質を海洋に投棄していました。
原発は、始める時こそ科学技術信仰的勢いや短期の打算で踏み出すことができますが、動き始めた途端、核廃棄物の呪いに囚われることになります。
いずれにしろ、“相対的”“比較的”にリスクが少ない場所や方法で保管し、永遠とも言える時の経過を待つしかないと思っています。
05. taked4700 2014年2月27日 22:44:02 : 9XFNe/BiX575U : IXab4TZ7Ho
>>04
あっしらさん、こちらこそ、ご返事をいただけてありがたく思います。
>英国では、ちょうど一年前、最終処分場として有力候補地であったカンブリア州(セラフィールド核施設も立地)が、膨大な支援金と雇用の約束を蹴って建設を拒否しました。
このことを自分は知りませんでした。イギリスもやはり自国で処分するつもりはないのでしょうね。
>原発は、始める時こそ科学技術信仰的勢いや短期の打算で踏み出すことができますが、動き始めた途端、核廃棄物の呪いに囚われることになります。
>いずれにしろ、“相対的”“比較的”にリスクが少ない場所や方法で保管し、永遠とも言える時の経過を待つしかないと思っています。
本当に「行きはよいよい、帰りは恐い」と言った感じです。放射性のキセノンなどの毒性の研究がされていたはずですが、多分、全くネットには出てきていないはずです。こういった情報隠ぺいが「呪い」による囚われを一層苛酷なものにしていると思います。

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