「GM大豆の生産性の伸びは停滞し、Non-GMOが有利。なぜGMO独占が進むのか?:印鑰 智哉氏」
農業問題
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遺伝子組み換えは生産性を上げるというのは神話だが固く信じる人がいるのでちょっと数字をあげてみた。
Non-GMOの米の方が生産性は伸びている。GM大豆の生産性の伸びは停滞し、Non-GMOが有利。なぜGMO独占が進むのか?
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バイエルによるモンサントの買収に隠れて、もう1つの重大な買収問題がある。モンサントのデジタル農業技術子会社が買収され、種子、農薬だけでなく、その農法、農機具、農業情報まで独占される時代がやってくるかもしれない。
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アマゾンのアグロエコロジーをテーマに執筆中。ちょっと脱線して、データを見ていたらおもしろくなったので、ちょこっと紹介。
ブラジルの大豆の生産性、ブラジル政府の統計から取ってみた。遺伝子組み換えが生産性の向上には貢献しているだろうか? ブラジルで遺伝子組み換えが始まるのは非合法下で1998年から、完全合法となったのは2005年からなのだけどそれほどの顕著な生産性の上昇を見せていない(1980/81年と2015/16年の比較でわずか1.6倍。
2005/06年との比較だと1.2倍のみ。最大と最小で比較しても2.5倍)。上がっているじゃないか、と言いたい人は米の生産性の推移と比較してみるといい。米はもちろん、Non-GMOだ。その差は明らか(米は最大4.9倍上がっている)。ブラジルでは米は大豆のように政府が生産を奨励しているわけでもなく、目立たない、あまり注目を浴びない作物だ。大豆は大豆粕も加えるとブラジルの最大の輸出産品となる、農業の花形的存在でブラジルの穀物作付面積のなんと49%を占める。一方、米はわずかに3.3%を占めているだけだ。投資の額も大きな差がある。それなのに生産性の増加はNon-GMOの米の方がずっと大きい。もちろん、同じ大豆でGMOとNon-GMOの生産性を比較すべきなのだけど、経年比較できるものが今ないので、サンパウロ大学でのNon-GM大豆と二種類のGM大豆との生産性の比較の研究があるので参考までに掲げておく。
それならば生産性もNon-GMOの方が高いのにどうして93%の大豆がGMOになってしまうんだ(ブラジルの2015/16年データ)、生産性が本当に高ければみな農民は高い方を選ぶだろうという反論が来るだろう。もしGMOとNon-GMOが両立できて、農民がどちらかを選べるのであればNon-GMOはもっと増えているだろう。しかし、Non-GM大豆の耕作はそう容易ではなくなっている。その理由の1つに種子会社の独占によりNon-GM大豆の種子が入手しにくくなっている。入手できたとしても今度は農薬もGMO用のものばかりで入手しにくい。まわりがGM大豆を植えており、その農薬が流出してくるのでそれに耐性のあるGM大豆でないと被害が出てしまう。そしてせっかくNon-GM大豆を苦労して育てても、その売り手がいない。通常のルートで運ぶとGM大豆と混じってしまうのでGM大豆としてしか売れない。Non-GM大豆として売るためには専用のサイロ、専用のトラック、専用の船が確保できないとNon-GM大豆として売ることはできない。要するにGMOとNon-GMOの共存が困難で、インフラをGMOに独占されたところではNon-GMOの耕作自体が難しくなってしまう。GM大豆が優秀だからシェアが広がったというより、気がついた時には引き返せないほど独占が進んでしまったということだ。
どうにも遺伝子組み換え農業は生産性を上げるという神話が繰り返されるが、現在耕作されている遺伝子組み換え品種で遺伝子操作によって収量が上げられた品種は存在しない(早く成長するユーカリや鮭は開発されているけど、まだ商業生産は始まっていない)。収量の向上ではなく、雑草管理や害虫管理によって、収穫がダメになることを避けることでマイナス分を減らすことで、結果としての生産性が向上するということでしか期待できないのだが、それも耐性雑草や害虫の出現でかえって損失が増えたりするから、結局、遺伝子組み換えによって生産性を上げるというのは根拠がない。
あの保守的な米国科学アカデミーもGMOで生産性があがるという説をついに今年、否定した。それにも関わらず、日本のマスコミではGMOが生産性高いと繰り返し語られる。わからないで書いているのか、それとも意図的に読者をだますつもりなのか。
だから「GMOは生産性が高い、だから食料難の時代には不可欠だ」と固く信じて疑わない人たちが少なくないので、それは事実とは違うことは強調しておく必要があると思う。

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