1997年に制定された臓器移植法の改正案が昨年8月、国会に提出されたが、衆院解散に伴い審議入りせず廃案となっていた。このたび自民、公明両党の有志議員により二つの臓器移植法改正案として3月31日、衆院に提出された。自民、公明両党とも党議拘束はかけない見込み。
両案とも基本的に
「死ぬ権利、死なす権利、死ぬ義務」 で紹介した
町野案に沿った物だが、臓器の提供に本人の意思が必要かどうか、「脳死」を人の死とするかの考え方で意見が割れて纏まらず、別々に提出したもの。ドナーの意志が不明でも家族の同意で可能とする案と意思表示が必要だが、年齢制限を15歳から12歳に引き下げるという案の2案である。
また両案とも、親族に対する臓器の優先的な提供意思を示すことができるとされ、移植機会の公平性の観点からも疑問がある。
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1:河野太郎衆院議員(自民)、福島豊衆院議員(公明)らの案
「脳死は人の死」を原則とし、患者の意思が不明でも、家族の同意で年齢にかかわらず臓器提供を可能とする。
2:斉藤鉄夫衆院議員(公明)らの案
移植に限り「脳死は人の死」とし、提供者の意思表示を必要とする現行法の考えを踏まえたうえで、提供の年齢制限を「15歳以上」から「12歳以上」に緩める。
両案とも、親族に対する臓器の優先的な提供意思を示すことができる。
「脳死は人の死」とする考えに反対する民主、社民両党の有志議員も対案提出に向けて準備を進めている。民主党も党議拘束はかけない見通し。
現行の法律では、臓器提供に本人の書面による意思表示が必要であり、ドナーには15歳以上の年齢制限がある。
日本弁護士連合会は3月、「脳死は人の死」とする考えについて「社会的合意は成立していない」として、本人による意思表示と、現行より厳格な脳死判定を訴えている意見書を国会などに提出した。。
日本小児科学会は「小児患者の意思を親が代弁することは、子どもの人権尊重をうたう『児童の権利に関する条約』の精神に反するほか、児童虐待などのケースでは不適当」としている。
「脳死」者の生存期間は低年齢ほど長く、機能回復の可能性も高い。また本人意思の確認、「脳死」の判定もより困難である。
共謀罪、教育基本法とともに審議を注視する必要がある。
参考
「臓器移植医療と「脳死」判定」
「治療費を理由に臓器提供を要請」
「命を金儲けの道具としたアメリカ」
「生きたまま臓器摘出:中国での臓器移植」
脳死臓器移植に関する基礎資料
臓器移植法改正案に対する会長声明 日弁連

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