政府債務残高は限界点を超えています :小泉改革の真の目的はいったい何なのか?から続きます。
あえて、あしゅらさんに異議をとなえる。日本政府の債務がそれほど問題ですか?
日本には3兆ドルの海外資産があります。
もちろんそれは日本政府の管轄にあるわけではありませんが、そうした海外資産のほとんどが流動性の高い金融資産です。
現在FEDの利率が4%ですからこの日本の海外資産に年間7%の利子がつくと考えてもおかしくないでしょう。
この利子額は日本政府の毎年の利子支払い額に匹敵します。。
極端にいえば日本は何もしなくてもよいのであり、財政赤字はアメリカがきちんとうめてくれます。反論をお待ちします。
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Re:海外金融資産と日本国債 投稿者 あっしら 日時 2002 年 5 月 22 日
楽観派さん、こんにちわ。
レスありがとうございます。
日本経済(国民生活)の行く末が手の施しようがなくもうどうしようもない状況だとは思っていません。
しかし、現在の政策や今志向している政策を推し進めていけば、そのような状況になると考えています。
(それはそれで仕方のないことだと思っていますが...)
海外金融資産を根拠にした日本国債の安全性について、簡単な反論を書き込みます。
アメリカの国債・株式市場・債券市場の危うさはここでは取り上げず、それらは中立的(現状維持的)に機能するという前提に立ちます。
● 海外金融資産に多く含まれる国内金融資産
3兆ドルという海外金融資産が、個人や事業法人といういわゆる非金融経済主体によってほとんど保有されているのであれば、500兆円(海外資産との対応で言えば1,400兆円や2,000兆円のほうがいいでしょう)に3兆ドル(およそ375兆円)がプラスされていることになり、拠り強固な金融資産だと言えるでしょう。
しかし、3兆ドルの海外金融資産が銀行・生保など金融経済主体によって保有されているのであれば、それは国内金融資産が海外に移転したことを意味します。
例えば、海外金融資産のうち2兆ドルが金融経済主体の保有であれば、国内金融資産2,000兆円のうちおよそ250兆円が海外にあるということです。
海外金融資産3兆ドルと国内金融資産2,000兆円は、全部とは言いませんがほとんどがダブルカウントされていることになります。
(エンロンの“巨大債権”=超優良会社神話は、これに似た手法でデッチ上げられたものです)
本来的所有者が預貯金や保険料というかたちで金融経済主体に引き渡した金融資産の一部が、金融経済主体のポートフォリオ戦略として海外の金融資産に投じられたということです。
金融経済主体が保有している海外金融資産は、収益部分を除けば、国内の金融債務(預貯金者や保険料支払い者に対する)で相殺されてしまうものです。
預金の払い戻しや保険の解約があり、それが手持ち資金で対応できないときは、国内もしくは海外に投じている流動性の高い金融資産を売却して充当させることになります。
(銀行は不良債権の償却原資を保有国債や海外債券の売却によっても捻出しています。生保も同じようなことを行っています。国内株式は含み損を抱えていますが、日本国債や海外債券は含み益をもっています。海外金融資産が「デフレ不況」のなかで生じているこのような後処理に“貢献している”ことは事実です)
このような意味で、海外金融資産を、国内金融資産とは別枠のものだと考えることはできません。
別枠として考えられるのは、本来的所有者(個人や法人)が海外向けに投じて保有している金融資産のみです。これであれば、ダブルカウントされることはありません。
● 国債問題と海外金融資産
金融経済主体が海外にも投資をするのは、資金運用の分散をはかり安全性と収益性をうまく高めるという意図のもとで行われています。
しかし、これを「国債サイクル」の観点から見れば、海外に向けられる金融資産は国債のサイクルの原資から外れた金融資産になります。
現状の「国債サイクル」は、今年度の新規国債発行高が30兆円であるのに全国債発行高が100兆円という現実に見られるように、新たな借金で昔の借金を返済したり利子を支払うというものになっています。
(3年後には、100兆円以上の国債が昔の借金を返済したり利子を支払うために発行される見通しです)
これは、現在の金融資産で過去に消費してしまった金融資産の穴埋めをするということを意味します。
国債発行残高が増大しているということは、将来の金融資産で穴埋めしなければならない金額が増大しているということです。
下記の表は、91年以降の国債発行残高の推移です。
国債発行残高
1991年174兆円
1992年181兆円( 7兆円増)
1993年195兆円( 6兆円増)
1994年209兆円(14兆円増)
1995年228兆円(19兆円増)
1996年248兆円(20兆円増)
1997年274兆円(26兆円増)
1998年311兆円(37兆円増)
1999年343兆円(32兆円増)
2000年381兆円(38兆円増)
2001年432兆円(51兆円増)
このように、現在の金融資産で穴埋めしなければならない“過去の金融資産の消費額”は、年を追って増大しています。
しかも、「デフレ不況」という税収減少・通貨価値上昇のなかでの増大です。
(緩やかなインフレ状況での経済成長という国民経済であれば、負担は軽減される)
海外に向けられる金融資産が増えるということは、より多く必要になる穴埋め用金融資産が減少することを意味します。
穴埋めできなければデフォルトに踏み切るか、国債利回りを上昇させる(金利上昇)か、日銀が日銀券を増刷して国債を引き受けるかのいずかを選択しなければなりません。
(国債利回りを上昇させても引受額が少なければ、日銀の引き受けになります)
海外投資が投資主体のヘッジになることは認めても、国債のヘッジにはなることは認められません。
(本来的所有者のヘッジにもなりません。銀行や生保が破綻したとき、自分が預けた(支払った)お金が海外に投資されていたという個別的主張はできませんからね)
逆に、国内金融資産の国外流出は、国債問題の噴出を早めるものです。
(これは、国内の金融資本が雪崩をうって海外に逃避するという極端な海外投資状況を思い浮かべてもらうとわかりやすいでしょう)
このようなことから、海外金融資産が、日本国債の安全性を保ったり、穴埋めしてくれることはないと考えています。
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続:海外金融資産と日本国債に続きます。

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