2009/4/30

ケニー・ホイラーを忘れちゃいませんか・・・?  木曜:Jazz & Classic Library


70年代〜80年代のECMミュージックと言うと、キース・ジャレット、チック・コリア、ポール・ブレイ、ヤン・ガルバレク、ゲイリー・バートン、パット・メセニー、テリエ・リピタル、デイブ・ホーランド、エバーハード・ウェーバー、ジャック・ディジョネット、・・・・

アメリカ本国のレコード会社では作り得なかった新鮮な発想で生きたジャズを世界中に発信していた。
僕もそのピーク時にECMミュージックのファンになっていました。

70年代〜80年代は僕にとっては「良くも悪くもECM的」な時代。
「ブルーノート」と記されたレーベルマークの付いたアルバムなら何の抵抗も無く受け入れるブルーノート・ファンとまったく同じ心理。「ECM」と記されたアルバムが出るとまずはチェック、でした。

その時代が終わりを告げたのは、確か80年代の半ばを過ぎた頃。
パット・メセニーがアメリカのレーベル、ゲフィンに移籍したのと一致しています。

挙げるとキリがないほどにスラスラと名前とアルバムが浮かぶECMミュージック、今でも新しいアルバムにも興味を持って接していますが、かつてほどの衝撃はありません。

などと書くともうアンチECM派気取りもいいとこですが、そんな事はありません。

そして、まだまだECMを語り尽くせるような身分でもありません。
もしも音楽歴を書くなら、一般的な演奏経歴と並べて「ECMミュージック」と書きたいくらい。

さて、そんなECMミュージックで今までに一度も登場していない重鎮がいます。

しかもカナダ生まれで現在まで長年イギリスをベースに活躍をしているとなると・・・

もう・・・・

あの人しかいません。。

Kenny Wheeler

そして、心あるECMファンなら誰しもが彼のECM最高傑作として挙げるアルバム。
それが本日の1枚。

クリックすると元のサイズで表示します
『GNU HIGH/Kenny Wheeler』(ecm/1976年)

あの(1970年代半ば過ぎの)状況でこのアルバムを耳にした時はまったく未知の草原にでも放り出されたような、そんな衝撃にも似た感動がありました。
管楽器のアルバムでその種の感動をそれまで一度も味わった事がありませんでしたから。

だって管楽器の魅力って「肉声」じゃん、て。
それまで聞いていたジャズの中で抽象画にも似た空間を感じて楽しんだ管楽器のアルバムはありませんでした。
大好きだったマイルス・デイビスにさえ、その感覚はギル・エバンスとの共演盤の一瞬を除いて感じなかったのですから。

だからそれまでの全てをひっくり返してくれた管楽器奏者、それがケニー・ホイラーでもあります。

このアルバムはもちろんホイラーのECM最高傑作ですが、もう一つの魅力も秘めたアルバムなんです。

キース・ジャレット。

そう、あの、キース・ジャレットの演奏が冴え渡っているのです。

このアルバムのメンバーを先に記すと、

Kenny Wheeler(flh)
Keith Jarrett(p)
Dave Holland(b)
Jack DeJohnette(ds)

非の打ち所の無いメンバーで、非の打ち所の無い演奏を記録する、というのは、実は非常に難しく名盤とジャズ界で囁かれるアルバムでさえミュージシャン的な深層心理で聞くと100%ではないものばかりです。
たまたまリーダーの演奏で耳に付く(誰にでもわかるような)部分が良かったものが大半で、実際にはアンバランスな演奏も多いのです。

ところが、このアルバムのバランスといったら・・・

まず、もちろんホイラーのリーダー・アルバムではありますが、成功の鍵は全てキース・ジャレットが握っています。

天才ピアニストであるキース・ジャレット。

古くは60年代中盤から後半まで在籍したチャールス・ロイドのバンドでの演奏を聞くと一目瞭然。
この人は何かから「インスパイア」されると、演奏は留まるところを知りません。
発想に垣根というものがまったく無いのですね。

なので「何か」をこの「人」に与えられる存在がいると、バンドという(本人には)狭ッ苦しいフォームの中でも完全燃焼出来るのです。
賛否両論あるかも知れませんが、チャールス・ロイドを始め、マイルス・デイビスやゲイリー・バートン、ゲイリー・ピーコックとの共演はその成功例と言えるでしょう。

しかし、そうなると難しいのが自分がリーダーとなった時のバンド。
60年代のデビュー・アルバムは奇跡的にその采配がアルバムとして結実していましたが、その後しばらくの間はバンドというフォーマットに収めきれないような感じを受けてしまいます。

70年代に完全即興演奏によるピアノ・ソロという前人未到の分野で「天才」が開花すると、それまでのモヤモヤが一気に解消されたのですが、このアルバムはキースの名盤『ケルン・コンサート』の余韻の消えぬ内に制作されたというタイミングも成功に大きく影響しているのでしょう。

だから、ココでのキース・ジャレットは凄いよ!

そう、つまり、「天才サイドメン」(つまりキース)がガッツリとケニー・ホイラーの音楽にロックオンした状態が聴けるのです。

言い換えれば(きっと本人の頭の中は)キース・ジャレット・トリオ、フィーチャリング・ケニー・ホイラーとか・・・(笑)
いやいや、それくらいホイラーの音楽の中で燃焼しているキースなんです。

さて、このホイラーのアルバム『ヌー・ハイ』。
実に大らかに全3曲(笑)。

曲を聞かせる風潮が増えた近年のジャズとは違って、あくまでもその瞬間にしか存在しない演奏を聞かせるというジャズ本来の姿。
それを当時45分に制約されたLPアルバムで実現させてしまうところにECMレーベルがケニー・ホイラーとキース・ジャレットに賭けた期待の大きさが見て取れます。

軽快にワルツで始まる1曲目“Heyoke”。
伸びやかなホイラーのトーンとリリカルにジャンプするキースのカンピングを聞くだけでもこれから先に聞こえてくる音楽にワクワクさせられてしまう。
最後はまるでキースがしゃしゃり出てエンディングがそのまま「ケルンコンサート」に到達するかのようなピアノ・ソロの世界に突入。天才じゃなければカットアウトされてしまうくらいの完全燃焼。ききものデス!

アルバム中で一番コンパクトは2曲目“Smatter”。6分ちょっと(笑)しかない。
でも、一番聞きやすいからコンパクト・コンポジションの最たる物。
ホイラーのソロエンドで突然キースの初ソロアルバム『Facing You』に収められている“In Front”のワンフレーズが飛び出してくる辺り、やはりタダモノではありませんね。

3曲目の“Gnu Suite”。再び13分に及ぶ長丁場。だけどいろんなシーンが用意されているので退屈する事はない。ここに来てベースのデイブ・ホランドとドラムのジャック・ディジョネットとのコンビネーションが音のスペースを3倍にも4倍にも広げている事に気付く。

まったくマンフレット・アイヒャー(ECM社長兼プロデューサー)も凄いアルバムを1976年という時間に刻み込んだものだ、と、本当に思う。

ECMジャズの魅力って何?という人にキースの『ケルン・コンサート』と共にお薦めする逸品。
自宅のリビングや部屋をダウンライトで21世紀風ジャズカフェにしたい時のBGMに最適です。
いわばこれは今日標準となったジャズと言い切れるでしょう。

ケニー・ホイラーのドキュメンタリーがありました。
このアルバム発売直後の様子です。


キースとの映像はありませんでしたが、このアルバムの直後から共演を始めたピアニスト、ジョン・テイラーとの共演はこのアルバムを彷彿とさせます。またメンバーが70年代〜80年代ECMファンには感涙ものの豪華さ。

John Taylor(p) Kenny Wheeler(flh) John Abercrombie(g) Palle Danielsso(b) Peter Erskine(ds)




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タグ: Jazz ジャズ CD




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