2006/6/29

北欧の怪人を誰も語ろうとしないので語りたくなってしまった  木曜:Jazz & Classic Library

今や懐かしいジャズライターの草分け、故・植草甚一さん風の長いタイトルで
今夜はJazz & Classic Library

60年代から70年代のスイングジャーナルは面白かった。アルバムレビューのところなんか「このアルバムは評価に値しない」とか書かれてあって評点のマスコット“スイングおじさん”が消されてるものまで堂々と載せられていて、一体ジャズとはどんな世界なんだろう?と四国の片隅で多少ビビリながらも中学生は毎月愛読していた。そんな中で植草甚一さんの書く「長〜い」表題のついたエッセイは毎回何よりも楽しみだった。当時でもかなりの御高齢であったのに、自分の論点を絶対に誤魔化さない、それでいて読者を不思議とスイングさせる文章だった


さて、今夜は北欧のベーシスト、エバーハード・ウェーバー(Eberhard Weber)

E.ウェーバー氏はドイツの“ブランド”レーベルECMの看板アーチスト。それは今も昔も変らない。
数あるウェーバー氏の作品の中から今夜御紹介するのはコレ

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『CHORUS/Eberhard Weber』(ECM/1984年録音)

サックス+ベース+ドラムというジャズではありきたりの編成ながら展開される音楽はシンプルかつエモーショナルなウェーバー氏独特のもの。サウンドをより明確にする為に本人がキーボードを使っている。
面白いのが、通常ベースが担当するべきエリアをキーボードのハーモニーで描き、ベース、サックス、ドラムは適材適所に出てくる。それでいて中途半端に懲り過ぎてグチャグチャになるような野暮とは無縁で、ベーシストのアルバムなのに低音域にスペースが生まれているから不思議だ。ソファーに深く身を委ねて落着いて聴けば聴くほど味わいのあるアルバム。変な言い方だけど、少し前に流行ったスムースジャズのような計算された空間が心地よいジャズ。
また、ウェーバーと同じくECMの看板サクソフォンプレーヤー、ヤン・ガルバレク(Jan Garbarek)が随所でスリリングな演奏を聴かせてくれる。

こんな北欧の怪人、エバーハード・ウェーバーの名前をいち早く教えてくれたのは誰あろうヴィブラフォンのゲイリー・バートン氏。
1974年、バートン氏は自己のクィンテットにウェーバー氏を入れてレコーディングした。そのクィンテットは合わせてギターのパット・メセニー氏のレコーディングデビュー作でもあった。

北欧の怪人がキーパースンとなる1974年の二つのアルバム
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左/「The Colours Of Chloe/Eberhard Weber」(ECM/1973年録音)
右/「Ring/Gary Burton Quintet with Eberhard Weber」(ECM/1974年録音)

74年、来日したバートン氏の演奏を見た余韻の残る内にリリースされたRingを聴いた途端にウェーバー氏の“あの”ベースの音とメセニー氏の“あの”ギターの音が飛込んできた。新鮮で斬新だった。
と、そこでウェーバー氏のベースの“あの”音になぜか聞き覚えがあり、レコードを探してみたら、、、、、
やっぱりありました

日本では「レフト・アローン」のヒットで知られるピアニスト、マル・ウォルドロン氏の異色のアルバム「The Call」(1971年)。マル氏はフェンダーローズではない独特の残響がするエレクトリック・ピアノを弾いているんです。A面B面一曲ずつジャズロック、ファンク風というこれもマル氏を知る人には謎のアルバム。そこですでに“あの”ベースの音で弾いていたのがウェーバー氏だったのです。ちょうどマル氏のアルバムを集めた頃に無意識に買ったものでサウンドが異質な為その後「おくら入り」していたのですが、その録音の音質がすこぶる斬新でゾクゾクするような音の記憶がありました。よく見ると“ECM”原盤と書かれていて納得したのを覚えています。

戻ります。

右側のウェーバー氏の初リーダー作を入手し聴いたところ、その音楽の響きや構成に惹かれてしまいました。何と言ってもハーモニーの使い方がスムーズ&ドラマチック、ちょっとダークサイドなんですが、吸い込まれて行くようなサウンド・カラーがあります。ちょうど前年に発売されたチック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー」(ECM/1972年)といい、次々にジャズに新風を吹き込んでくるECM、と言うよりも、その大きな流れは世界で同時進行している事を窺わせました。ドキドキ、ワクワクの連続です。

再び北欧の怪人がキーパースンとなる二つのアルバム

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左/「Silent Feet/Eberhard Weber」(ECM/1977年録音)
右/「Watercolors/Pat Metheny」(ECM/1977年録音)

「Colours」と名乗るウェーバー氏のバンドのこの作品はそれまでのどのアルバムよりも熱い衝動と完成された構成が作品に反映されたものでした。そして続いて発売されたメセニー氏のリーダー作は実は随分後になって購入したのですが(アメリカン・ガレージの後に)、ここで、僕は“ふと”感じました。初期のメセニー・グループ(PMG)や、このWatercolorsは、ライル・メイズ氏が語った「初期のPMGの音楽コンセプトはゲイリー・バートン・クァルテットだった」に、僕は北欧の怪人も付け加えたくなってしまうのでした。

紹介した「CHORUS」の中で一番好きな曲は、最終章VIIです。アンビエントなキーボードに乗せて歌うサックス、この曲でやっと定位置にあるベース、時のパルスを刻むドラム。最後の最後に極楽なジャズへと誘ってくれます。

おしまい



2006/6/30  4:17

投稿者:あかまつとしひろ

>YELLさん
「ワケワンンエぇ」とは? 今の音楽雑誌は広告を軸にし
た記事に変ってしまいましたね。この間のバートン氏の
ライブだってあれだけネットで話題になってるのに白黒
見開きだけ。ネットの普及で現状と記事が一致しなくな
りつつあるのかもしれませんね。裏付けがあって面白い
と思う記事こそが今の音楽誌に必要なのではないか
なぁ。

>e-アファリさん
お小遣いは足りているので大丈夫です(笑)

>裕子さん
嬉しいですねぇ、植草じんいち爺さんのエッセイがわか
る人も見てくれてるとは(^^,
本当にあの人の文章は飽きないです。コロコロ転がされ
るのが気持ち良い。コメントありがとう!

2006/6/30  0:32

投稿者:裕子

あかまつさん、わたしも植草甚一さんのコラムだいすきです♪とても爽やかな文ですよね!わたしはリアルタイムで読めてないけど、再発行されているものや、古本屋さんで見つけたものを読んでいます。

2006/6/29  13:11

投稿者:YELL

スイングジャーナルを横目に新譜ジャーナルを買って
いたあの頃。
あの頃の音楽雑誌は確かの面白かった。
今の若者に言わせたら「ワケワンンエぇ」って企画が
たくさんあって。


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