2010/3/5

曲を二度美味しくする方法・・メロディック・アナライズ+ハーモニック・アナライズ  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。
金曜第百六十六回目の今日は、インプロ(アドリブ)をやる時の発想とボキャブラリーを増やすアナライズのお話し。

ジャズの演奏をしていると、その日の出来、不出来は様々で、二度と出来ないような成功もあれば、二度としたくないような失敗もあります。
これは前もって「おさらい」して本番に臨むクラシック・スタイルと一番大きな違いで、ステージの上で「その時にどうするか?」を選択しながら演奏するジャズ特有の経験でしょう。

自分に起因した成功の素もあれば、共演者が発した一音によって閃いた成功も。また、自分が思う方向と共演者の意識が異なった方向を向いた場合の失敗も。
失敗は成功の素。元。もと。
失敗したからと言って落ち込む必要などないのです。
その反対に成功したからと言って明日も同じ成功が約束されているとは限らないわけです。

ただ、こういう演奏は時間の経過が音で表されるべきで、成功している時も失敗している時も経過を辿る事は出来ます。

「えーっ? 今やった事なんか覚えてないよー」

本気でそう言ってる人がいるとしたら、それは大問題(笑)
プロと名の付くレベルでジャズを演奏しているミュージシャンは自分がやった事は鮮明に覚えています。ポップスのレコーディングなどでソロを録音する時は、さっきやった自分のインプロの途中から別テイクで演奏を重ねて(繋いで)より明確なソロに修正する事もあります。
ジャズのアルバムはソロの時間経過が「命」ですが、ポップスなどの間奏でのソロは、如何に完結にその音楽に躍動感や立体感を与えるか、が「命」。
楽器の音色と一緒にミュージシャンに望まれるのはそういうセンスで、その作業もスピーディーでスマートでなければなりません。

「自分がさっき何をやったか」を覚えていて、いつでも再演出来る状態であれば、もしも一聴した時に「問題点がある」とすれば「何処の時間軸からか。それをどこから録り直すか」を明確にエンジニアに伝えなければなりません。モタモタしていたら、時間辺りウン万円のスタジオのコストが増すばかりで仕事としても成立しません。
バックグラウンドとのバランスに問題が無ければ、だいたい演奏しながら三つくらいのアイデアが閃きながら作業をするので二つくらいのストーリーの異なるテイクを残して帰る場合もあります。(後はプロデューサーやアーチストが好みで採用テイクを決める)

さて、そのアイデア、というものの根幹。
それはやはりコードミュージックに於けるストーリー作り、そこから始まるわけで今日はその入口となるアナライズについて。

■メロディック・アナライズとハーモニック・アナライズの違いを活用せよ!

チック・コリアほどジャズメンに愛される曲を多く輩出している現役ミュージシャンはいないでしょう。
「スペイン」や「ラ・フィエスタ」などラテン色の強い曲は、ジャズメンを目指しているなら、これまでに一度は何処かで演奏した事があるはずです。

そんなチック・コリアの初期のミュージシャンズ・スタンダードにこんな曲があります。

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“LITHA”という曲の冒頭の部分で、この後途中でリズムが急速調のスイングに変わりちょっぴりトリッキーな構成となっています。チック・コリアの『INNER SPACE』というアルバムやスタン・ゲッツのアルバムでオリジナル演奏を聞く事が出来ます。

さて、この冒頭の部分でソロをやりましょう。

まず、この時代から譜面の書き方で大きく変わったのが、調号を振らない点。
それまでのジャズは細分化されたII-Vも含めてある一つの調の中でグルグルと回っていました。
それがこの時代からは「どんどん転調して行く」スタイルに。

そうなると調号は殆ど意味を成しません。おそらく臨時記号で溢れた譜面を前に途方に暮れるでしょう。
そこで調号は省く事として基本的に臨時記号で書き表すタイプの曲が従来の物に加わりました。

譜面は左から右に読みますから途中のシャープとフラットの読み替えを何処にするのかでまず悩みます。さらにメロディーは「なるべくコードネームと連動する表記」を求められます。

と、言うのも、転調が連続するので「今、何処(何調)にいるのかがわかりやすい譜面」が必要なのです。

これらから像出来るように、連続する臨時記号の何処までを何調と判定するかで演奏は大きく異なってきます。

逆に言えば、アナライズ能力に長けたミュージシャンは「明確なストーリーに支えられてストレスなくインプロを作り出す」という結果に。
従来のII-Vや決まりきったフレーズではインプロにならなくなって来たけわです。

(1)メロディーの動きだけて「センター」となるサウンド(コード)をアナライズしてみよう

単旋律のメロディー。そこに使われる音と、そこで振られた臨時記号、これらを集めてそのメロディーがどのようなサウンド(コード)を想像できるか、をアナライズ。
これはクラシック系のアナリーゼと同じで、恐らくクラシック系の教育を受けた人は得意ではないかと思います。ただし、メロディーだけではどうしても情報が不足する部分や、決定的な決め手に欠ける部分は該当箇所のコードネームを考慮に入れます。

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1-2小節目はシャープ系の調の中にいるのは確実ですから、まず調号にシャープを振る順番に何個のシャープがあると仮定できるか連想してみましょう。するとF#-C#-G#-D#-A#までのシャープ5つという事になります。この時点で判断するとキーはBメジャー。しかし、2小節目最後の音は次の小節の音とする事も出来るのでその場合はキーはEメジャー。コードはEMaj7。
取りあえず、この場合メロディーのA#は最後にしか出て来ないので次の小節の音とします。

3-4小節目はフラット系の調の中にいるのは確実。
A#=Bb、D#=Eb。そう読み替えればBb-Eb-Ab。コードネームを見るとBbm7とあるのでもう一つフラットを増やす必要があるのでBb-Eb-Ab-Db。それ以上はフラットを増やす理由が見つからないのでこの部分はBbm7。

5-6小節はフラットが一つしかない。これ以上メロディーには情報が無いのでコードネームを見るとGm7があるのでフラット一つのスケールを想定。

7-8小節目はメロディーはEのみ。
コードを見るとFMaj7。しかも#11th指定とあるので何も調号の付かないリディアン・スケールと判断。

さて、どうだろう?

ここで改めて原曲のコードネームをメロディック・アナライズと照合してみると、いくつかの矛盾点が。。。

[原曲]
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[メロディック・アナライズ]
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メロディック・アナライズによって仮定されたコードスケールはスタートする音をなるべく近いレンジの音に設定。これは先週の「エッジ」の話しで触れたサウンドの変化を実感できるように比較対象となりやすい形にコードスケールを並べるという事を適用。従ってスケールの最初の音が必ずしもコードの根音とは限らない。

最初の小節はコードネームがDMaj7とあるのでD#は含まれない。
この部分のメロディーはEメジャー色が濃い事をメロディーのアナライズで分析済みなのでG#の音をそのまま残したDのリディアン・スケールであることがわかる。

同じ事が5小節目でも言える。この部分のメロディーは限りなくGマイナーのドリアンスケール、又はFメジャーに近い。そこでコードネームにAbMaj7とある5小節目は最低必要限(確実に変化が認められる箇所)で、AbMaj7というコードのrootであるAにフラット、同じくコードの5thであるEにフラットを足しただけのAbリディアン・スケールと考える。

もっと大きな矛盾に気が付いた人もいるでしょう。
3小節目。

メロディーだけなら完全にBbm7がピッタリなのだが、コードネームを見るとBMaj7となっている。
おかしい、、、BMaj7にメロディーCはあり得ない。

全体としてはBbm7というコードがピタリと当てはまるメロディーだった事を思い出し、この部分は次の小節のBbm7のメロディーが前倒しされていることと仮定する。
するとこの小節の冒頭はBMaj7と言う事になり、メロディーに振られた臨時記号のシャープはBMaj7の音、フラットが振られたメロディーは次の小節と同じコードスケール、という風に譜面で書き表していた事に気付く。

さて、これで全小節のアナライズが完了したので、インプロを行ってみよう。

メロディー・アナライズと同じように小節を二小節単位に繋いで簡単なメロディーを作る練習。
望ましいのは、全てをなるべく同じ音型に揃えて練習すること。サウンドの比較をメロディーを作りながら体得するためだ。
これは先週のメロディーのエッヂのところで触れた練習方法と同じ。
単純に音型を組み立てるだけでコードサウンドの変化をリアルに体得できる。
きっとハーモニーを出せない楽器の心理がわかるだろう。
でも逆に言えば、ハーモニーで誤魔化さなくとも単旋律で明確に表現する練習に繋がるわけ。

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さて、この発想はメロディーのアナライズがベーシックにある。
しかし、このやり方ではコードとの整合性に欠けた部分があったのも事実。

では、ハーモニーの流れを軸としたインプロの組み立て方は?

それは次回に続く。


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チェキラ!





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