2010/5/27

マイケル・フランクスのドラゴンフライ・サマーを聞きながら今年の冷夏を思う・・・  木曜:Jazz & Classic Library


今年は冷夏になるという予想が出ています。
少なくとも中部地方を境に北と南ではこの数年季節感に格差があると思っています。
北側にあたる東京地方は例外なく冷たい季節。
昨日とは10℃も気温が下がっていったい何を着ればいいのか迷う日々。
しばらくはこの状態が続くようです。

1993年の記憶が残っている人には何となくあの年と同じような兆候を感じるでしょう。
秋口には米が無くなり大騒ぎになった、あの年。
緊急輸入されたタイ米。
僕はエスニック好きだったので安くタイ米が食べられるんで大喜びしたんですが、まぁ、ジャポニカ米のような食べ方しか眼中に無かった人には不評で、せっかく輸入されたタイ米が倉庫に余るという異常事態。

世界中の米の中では日本の米のようなジャポニカ米は少数で、大半が細長いインディカ米。つまりタイ米です。タイ料理はもちろん、中華料理、インド料理はもちろん、ギリシャ料理やスペイン料理、はたまたヨーロッパ各地のライスサラダと、インディカ米は世界中で食べられているのに、「まずい」「パサパサ」とか、こんな緊急事態に日本人はいったい何を能天気な事を言っているのだろう、、、と思ったものでした。緊急要請に応じてくれたタイ政府に対しても大変失礼な事をしている感じでしたね。

まぁ、93年と言うと、まだまだ世の中バブルの余韻覚めやらぬボケボケの時代だったのもあるでしょう。今の不況の時代で冷夏による米の緊急輸入が起こったとしたら、、、、もっと世界観を持ってあの時とは違って成長していてほしいものです。
そうでなければ、この先、生きて行けなくなるかもしれないのですから。

さて、なぜ1993年の話しになったかと言えば、もちろん昨晩辺りから冷夏のニュースが飛び交って1993年や1980年の冷夏がクローズアップされ始めたのもありますが、今夜手にしたアルバムが偶然にも1993年制作もの。


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『DRAGONFLY SUMMER/Michael Franks』(reprise/1993年)

今からもう17年も前になりますが、みなさんにとって1993年はどんな年として記憶に残っているでしょうか。
今思えば僕は“攻め”の時代でした。
世の中まだまだたくさんの広がりがあるのを実感しつつある時期で、今でも変わらずあるであろう若手とされるミュージシャンが抱える将来のビジョンと現実のギャップに多少頭を抱えつつも、どんな事にでも決してNoと言わず前進あるのみ。それは決して楽ではありませんでしたがとても楽しい時代でした。

くだんの米不足も逆にエスニック趣向が幸いしポジティブに堪能し、まあ、自分の音楽の事と現実に行う音楽の仕事で時間はあっという間に過ぎて行く感じでした。
その翌年(94年)は水飢饉の年で、夏のジャズフェス・ツアーで行く先々のホテルの水事情で大いに悩ませられましたが・・・・

そんな時、当時よく一緒に仕事をしていたファンハウス・レコードのKプロデューサーと本社の会議室で打ち合わせをしている時の事でした。

僕:「あれ、聞いた? マイケル・フランクスの新譜」
K氏:「いいっス。あれは」
僕:「だよね、いい」
K氏:「最高」

帰国直後から機会ある度にK氏と会う事があり、他の会社のプロデューサー氏と違って全然ぶっきらぼうな態度のK氏とは、何となく気がねなく付き合えるので仕事以外でも飲みに行ったりしてよく話しをした。
音楽プロデューサーでは珍しいフットボールで鍛えた完ぺきな体育会系の彼はジャズシーンでも名物(?)プロデューサーとして有名だった。そんな彼とは180度違うんだけど不思議と話しをすると共通するものがあった。物事に対する感性だ。

そんな二人して「あれはいい!」と太鼓判を押し、そしてその次に出た言葉は・・・

「でも、絶対ベストセラーにはならないね!(笑)」

世の中に名盤というものはゴロゴロあるけど、その大半はヒットして名が知れたアルバムである事が多い。ヒットするにはちゃんとした理由があるのだけど、中身だけで判断して名盤と呼ばれていない点が面白い。
そういうベストセラーとか、ヒット盤のような要件を全部満たしていなくても名盤と呼べるものが実にたくさんある。

1993年のバブルが弾けつつある空気の中で、少なくとも音楽業界に身を置く者二人が早々に太鼓判を押し切った凄いアルバム。それがこのアルバムだ。

マイケル・フランクのこの『ドラゴンフライ・サマー』はアルバムに収められた曲の中にシングルヒットがあるわけではない。

マイケル・フランクスという名前を知っている人なら必ず77年のアルバム『Sleeping Gypsy』がまず筆頭に浮かぶだろう。このアルバム全体からは当時のウエストコーストの香りがする。
僕もこのアルバムでマイケル・フランクスという音楽を知った。

もしも、アルバムの充実度でマイケル・フランクスを語るなら、このアルバムの次にリリースされた95年にアントニオ・カルロス・ジョビンに捧げた『ABANDONED GARDEN』を挙げるだろう。

でも、この『DRAGONFLY SUMMER』は上記二作品とは違うオーラにつつまれている。それが1993年という時代を上手に切り取って、そして少しも色褪せることなく今の時代の空気を振動させる。

たとえば。

1曲目の“Coming to life”は軽快なフルートのイントロから始まるアルバムの状況設定がイカしてる。
それが2曲目の“Soul mate”になるとムチムチとマッチョなファンクビートになってものの見事にニューヨークの憂鬱を醸し出す。
なるほどねぇ、と構えていると次の3曲目のタイトルチューン“Dragonfly summer”ではそれまでの都会のストレスと裏腹の重量感から開放されてガーデン・ミュージックのような清涼感。

元々マイケル・フランクスは『スリーピング・ジプシー』の例もあるようにLAサウンド、ウエストコースト的な音楽に特徴があった。作品を重ねて行く毎にやがてそれはアメリカのある階層の人達に趣向されるエレガントな衣装を身にまとうようになった。
それをこのアルバムで一つ、また一つと脱ぎ捨てて行くのだ。

4曲目“Monk's new tune”では完全にジャズフォームのスイング・タイム。こうなるとやはりニューヨークの香りもしてくるから不思議。

少し飛んで、愛すべき曲が6曲目にくる。1953年の“I love lucy”だ。
1950年代にアメリカで爆発的に人気があったTVコメディー「I love lucy」のテーマソングだ。
テレビではマーチテンポの賑やかな曲として演奏されていたが、ここではしっとりとしたバラード&スロー・ボサで演奏されている。
僕はこの後続の番組「ルーシー・ショー」を子供の頃に見た記憶がかすかにある。
アメリカに留学していた時にこの「アイ・ラヴ・ルーシー」がボストンの民放で何度も繰り返し放送されていたのでこのテーマ・ソングは耳覚えがあった。

この多様な構成はこのアルバムを4人のプロデューサーが分担してマイケル・フランクスと作り上げている事で成立している。

本当に1993年という時点のアメリカで聞こえる音楽がマイケル・フランクスというフィルターを通して抽出されているんだ。

ジャズ、ファンク、ガーデンミュージック、、、
それぞれのジャンルのオーソリティーがプロデュースしている。

ジェフ・ローバーは飛びっきりファンクでカッコいいサウンドを、イエロージャケットはガーデン・ミュージックから軽くフュージョンまで、ギル・ゴールドステインはジャズテイストに溢れた曲を、ベン・シドランはオールドタイマーとの夢の共演を。

そう、ベン・シドランがプロデュースした二曲の事をわすれちゃいけない。

9曲目“Keeping my eye on you”はフォークジャズの大御所シンガー、ダン・ヒックスとのデュエット。マイケル・フランクスのオリジナル・ソングながらヒックスのけだるいストローク・ギターと歌にピッタリ。

11曲目“You were meant for me”もフランクスの曲だが、これはジャズ界の女性シンガーの大御所ペギー・リーとのデュエット。スロー・ボサのエレジーがグッと泣かせる。ペギー・リーのオーラに包まれた一味も二味も違うトラックだ。
ウォーレン・バーンハード(p)ジョン・パティテュチ(b)アレックス・アクーニャ(ds)をリズムセクションに据えているのだから、もうこれは立派なジャズそのものだ。

マイケル・フランクス最大の魅力は、常に“時代の写し鏡”であること。

アルバム毎の入念に練り上げられたコンセプト、そして、時代の音。
遠く『スリーピング・ジプシー』の時代がLAを代表するジョー・サンプルらクルセイダースのリズムセクションにラリー・カールトン、デヴィッド・サンボーン、そしてマイケル・ブレッカーをキーパースンに配した時代の音であったのに対して、この1993年のアルバムでは、それぞれのプロデューサーが飛びきり時代を代表するミュージシャンをスタジオに集めている。

音楽は時代の写し鏡である事を実感させられる最上のジャズヴォーカル・アルバム。
そう言って僕はお薦めする。


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チェキラ!
タグ: Jazz ジャズ CD




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