2010/6/25

ヘッドフォン練習のすすめ・・・  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


毎週金曜日はvibraphoneやmarimbaをやっている人向けのお話し。
金曜第百八十一回目の今日はレコーディング中につき特別編を。

そうそう、コメントをいただいたma.comcast.netさん。
コメントのリンクがシステムエラーを起こすので残念ながら削除しました。
お手数ですがリンクを外して連絡を。

今週はワールドカップとiPhone4に沸く週末のようですね。




生楽器を勉強しているとついつい忘れがちになるのがヘッドフォンと仲良くすること。

「生の音を出しているのに何でヘッドフォンなんか・・・ふむ。」

と怪訝な顔をする人もいるでしょう。わかります。
生の楽器から如何に思い通りの音色を発声させるか、が楽器演奏の第一歩ですからごもっともです。

しかし、この世に音楽を伝える媒体として「生演奏」以外の機会がある限り、生の音の出し方を勉強しただけでは楽器の演奏の半分しか習得していない事になります。

「上手い演奏者は聴き手に伝わりやすい音の出し方を知っている」

これ、すなわち、マイクに乗りやすい(マイクが拾いやすい)音の出し方を知っている、という事になります。

楽器によって録音の時のマイクとの関係は様々。
また、スタジオによってもセッティングも様々。

大きなホールの音響というのは、実は「残響」であって厳密な意味での音響とは言いがたい。
ある意味でこの言葉が示す意味がわかる人なら、今日の話題はきっとピンとくるはず。

芝居の世界で、大きなステージでの演技は一つ一つの動作を大きくはっきりと、という基本があります。
ちょっとした仕草でも、日常やっている仕草の数倍のアクションを行わないと客席には伝わらない、というのです。
逆に、その動きのままテレビに出演すると「ただのオーバーアクション」になってしまう、と。

ホールの客席はグッと「引き」の状態で遠くから演ずるものを見ているわけです。
テレビになると今度はカメラがズームを使って必要な部分をクローズアップして視聴者に訴えかけますから出演者はカメラマンが「抜き」やすい演技を求められます。
テレビでとび跳ね回られるとカメラマンは動作を追い切れず、グッと「引き」にしてしまいます。

ホールの演奏とレコーディングの演奏に置き換えると、レコーディングは正にテレビと同じ環境なのです。



我々マレット・キーボード(ヴィブラフォンやマリンバなど鍵盤打楽器と呼ばれる楽器の総称)はそのメカニズムから鍵盤の真上に音が上がる仕組みになっている。
鍵盤直下のパイプで増幅された音がそのまま真上に上がるからだ。
従って音を記録するマイクは鍵盤の上方にセットされる事が多い。

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west side studio @ May 2010(角松敏生さんのレコーディングで)

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crescente studio @ June 2010(ニューアルバムのレコーディングにて)

これがピアノだと楽器に備え付けられた音響板(つまりピアノの蓋)によって演奏者の前方右側に音が飛んで行く。だからピアニストは自分が発する楽器の音を随分遠くに聴いている事になる。

ヴィブラフォンやマリンバはパイプで増幅された音の前に鍵盤そのものをヒットした打撃音(アタック)も重要な音色の要素で、録音では特にこのアタック音が綺麗なマレットを使う事になる。(マイクも同様にアタック音が綺麗に収音出来るマイクを使う)

ここで、ヴィブラフォンとマリンバでは大きな違いが出て来る事も知っておく必要がある。
ヴィブラフォンの音域は3オクターブが基本。全楽器の中では中音域の楽器となる。
ところがマリンバに関しては実は近年楽器の音域が増幅された為にまとまりのない楽器になってしまった。

本来のマリンバと呼ばれる音域はヴィブラフォンとほぼ同じで上下にオクターブ程度延長されたものだったのだけど、現在は5オクターブに拡大されて一つの楽器の中に3つくらいの性質の異なる楽器が連結されている感じだ。

従ってマリンバの録音に関してはスタジオ・エンジニア毎に見解が異なるので次週のレコーディングで実際にマリンバを使うので改めて書くことにします。

「まとまり」というのは、楽器の発音という意味で楽器本体という意味ではないので誤解のないように。

さて、ヴィブラフォンであれピアノであれベースであれドラムであれ、録音する時は必ずヘッドフォンのお世話になります。



ヴィブラフォンでのスタジオの仕事の場合、最近はオーバーダビングが多いので録音されたオケを聴きながらあれこれと考えつつ一人で録音するシーンが殆ど。
つまりリズムセクションと呼ばれるドラム、ベース、コード楽器(ピアノやギター)は同時に録音する事があるのに対して、僕らのように譜面を見ながら指定された所でソロを演奏したりするパートは出来上がったリズムトラックを聴きながら後で音を重ねるわけです。
時にはヴィブラフォンがピアノやギターの役割を果たすレコーディングもありますが、回数は少ない。

ポップス系ではシンガーソングライター村上ゆきさんのアルバムレコーディングでvib+b+dsというリズムトラックを先に録音しています。http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20080916/archive

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村上ゆきさんレコーディング時のセッティング @ Yamaha Epicurus Studio


ジャズではポップスと違って演奏者がバラバラに録音するレコーディングは少なく、全員が同時に演奏したものを録音します。
しかしそれぞれの楽器の音色を整えたり、細かい修正を行ったりする関係でそれぞれがブースという小部屋に入って互いの音を遮断した中でヘッドフォンを介して演奏するのです。

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只今進行中のアルバム・レコーディング @ crescente studio

このような小部屋(ブース)はいくつかの部屋が隣り合って並んでいて、互いの様子はそれぞれのドアや壁がガラス貼りで視覚的に見渡せるようになっている。

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ヴィブラフォンのブースの右側(楽器正面から)を見たところ。ガラス窓のむこうはベースのブース。同じような窓がこちら側(ドラムのブース側)にもあり、楽器前面のガラス貼りのドアと合わせて三方向とのアイコンタクトが出来る。実は本来ならメインアーチストは一番大きなメインフロアに楽器をセットするものだけど、僕はブースという小部屋が上手く楽器の音をまとめてくれるのでわざわざこの狭い所を選ぶ。人によって好みがわかれるところだけど。

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クレッセント・スタジオではヴィブラフォンの左側のブースにベースをセット(澤田将弘/b)

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右側のブースにドラムをセット(樋口広大/ds)

それぞれのブースのドア(ガラス貼り)が面した一番大きなメインブースがあり、そこにはピアノやヴォーカル、マリンバなどをセットする。

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死角が出来る場合にはカメラとモニターを使って視覚的なコンタクトをフォロー。これはそのカメラのモニター画面でヴォーカルの正面に見えるガラス貼りのドアがヴィブラフォンのブースになっている(森川奈菜美/vo)。

さて、当然の事ながらお互いの音も自分の音も全て一度マイクを介してコンソールルームに集められ、それらがヘッドフォンに「返って」くる仕組みだ。

面白いもので、マイクやそのスタジオの録音システムによって、本当に微妙なのだけどディレイを感じる事もある。殆どわからないくらいのものだけど、アタックを伴う楽器なのでそのレスポンスの速度に差がある事を知っておかないと自分がパニックになる。

通常ヴィブラフォンの録音に使われるノイマンというマイクは「ザックリ」だけど全体の音をまんべんなく拾ってくれるのでスタジオではお馴染みだ。
レスポンスはこれよりも良い(速い)マイクもあるが、演奏している側からするとタイムラインとしてはノイマンが無難という風に感じる。これは僕ごときの一人の意見ではなくこれまでの数限りないレコーディングが積み上げた実績から言える事だ。

さて、そんなだからヘッドフォンに慣れていないとスタジオで本来の自分の実力が発揮出来ない場合だってある。

ヘッドフォンにどうすれば慣れるの?



単純な事だけど、日常音楽を聴く時にヘッドフォンで聴く時間を持つといい。
それも耳に直接突っ込むタイプのイヤーフォン・タイプではなく耳を覆ってかけるタイプのいわゆるヘッドフォンで聴く。

音を耳元に集約して聴く練習だと思えばいい。
その中でそこに足される自分の音をイメージ出来ればヘッドフォンを装着した演奏もすぐに慣れるはず。

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で、ここで一つ秘密を(笑)

実は僕はヘッドフォンには中学の放送部の頃から慣れていたのでこの世界に入った時には何の抵抗も無かったのだけど、ただ一つだけヘッドフォンを着けた演奏で困った事があった。

それは・・・

スタジオの仕事の時は冷静だからそんなにフンコーしてこの問題が勃発するような事はないのだが、自分のアルバムや超メインとなるとライブと同じようにフンコーしながら演奏するものだから、このヘッドフォンとコンソールルームから音を送って来るキューボックスとの間を繋ぐシールドが腕にからまったり、時々踏んづけてしまったりするのですね。

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キューボックスとヘッドフォンを繋ぐジャックが・・・・

しかも・・・

運悪く、シールドを踏んづけた勢いでヘッドフォンジャックがキューボックスからスッポリと抜けてしまう事だってあるんです。(涙)
するとどーなると思う?

「・・・・」

突然耳元から全ての音が聞こえなくなってしまう。。。
これが実に恐怖なんだ・・

せっかく「さいこー」な演奏が出来ていても、その瞬間から先は真っ暗闇・・・
これで何度泣いた事か・・

で、

レコーディング中は・・・・

ヘッドフォンのシールドを背中にガムテープで貼り付けて床に垂れないようにする。
だからこうやって正面や斜め前からは写真に撮れるけど、後ろ姿は見せられたもんじゃない。

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当然、ガムテープなんかペタペタ貼るのだから「よそ行き」の格好なんて出来ない。
ガムテ貼ってもいーけんねTシャツが関の山。
ドレッシーなんて無縁な現場だ。

一度、「逆にシールドが長ければ踏んづけても抜けないんじゃないか」と超長めのシールドを着けたヘッドフォンを使ったら・・・・・

一通り演奏が終わってコンソールルームを見たら知り合いのエンジニア氏が怒ったような顔をしてる。

「どーして? なかなか快適に演奏出来たと思ったのになぁ。。」

と思ってコンソールルームに戻ったら、うむを言わさず「これを聴け!」とばかりにヴィブラフォンだけソロで再生。。

なんと、演奏する音と同時に床をズルズルと擦るシールドの音、時々こちらが動くのかパチパチとシールドを床に叩きつけるような音、、、、ありゃりゃ・・・

没!
却下!
撤収!

当然録り直しーーー!

なので今は普通の長さのシールドが床に垂れないように背中にガムテープで貼り付けている(笑)

だから、僕が去ったブースの中には、、

無数の千切れたガムテープがいたるところにペタペタと貼られているのでありました。
(一度使うと粘着性が劣化するので次々に新しいガムテープを使うから)



ヘッドフォンを使った演奏。
慣れておくと将来「慣れててよかったー」という事、請け合いです。


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チェキラ!




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