2010/7/29

録音は誉められたものではないのが残念・・・・Richie Beirach(p)  木曜:Jazz & Classic Library


毎週木曜日がなぜJazz & Classic Libraryなのかを質問されました。
理由はとっても単純。

僕がジャズに興味を持ってヘビーリスナーだった中学から高校時代にかけて、毎週木曜日の夜8時から(その後夜10時になったり月曜日になったりもしましたが・・・)NHK-FMで放送されていた『ジャズフラッシュ』という番組に敬意を表して、なのです。番組の進行は児山紀芳さん他でした。
高校で音楽科の寮生活が始まって、実家とは生活環境がガラリと変わった時でも、この番組はずっと聴き続けました。
地方でジャズの情報をメディアで得られるメジャーな手段は「ジャズフラッシュ」と「マイディア・ライフ」くらいのものでした。

厳密に言えば、他にもAMでは日曜夜の「日立ミュージック・イン・ハイフォニック」は来日するジャズメンのステージがたくさん放送されていたし、FMでもNHKの夕方の番組「軽音楽をあなたに」では曜日によってジャズやフュージョン(当時はクロスオーバーと呼んでいた)を中心としたプログラムがあったり、民放では午後11時の定番「ジェット・ストリーム」もジャズ色の濃い番組でした。

が、やはり、その中でも、次々に飛び出してくる人名やサウンドで一番印象が残っているのが「ジャズフラッシュ」。

この世界に入った頃には当然ながらその時間帯にラジオを聴くなんて事が出来るはずもなく(その時間は本番中)、やがてラジオからジャズのエキスを受ける事も無くなってしまったのですが・・・

この秋にリリースするニューアルバム『Axis』(VEGA)では、ライナーノーツをその「ジャズフラッシュ」を担当されていた児山紀芳さんにお願いしている。児山さんによるライナーノーツは02年のアルバム『Six Intentions』(スリー・ブラインド・マイス)以来。

そんなこんなで、毎週木曜日はジャズのアルバムの紹介。

さて、本日。
まず最初に告げておくと、今夜紹介するアルバム。
録音に大変不満があり、パッケージとしての魅力は半減している。
だから、「いい音を聴きたい」と思っている人にはお薦めしません。

このレーベル、ドラムという楽器に何か誤解があるんじゃないの? と思うくらいドラムの音にまとまりがない。まるでワンポイント・マイクで録音したようなイビツな音がする。
あの、コンプレッサーでギザギザに押さえつけられて生音や生演奏とはほど遠い方向に片寄った録音は、聴いていて気持ち悪い。これならライブハウスの生演奏のほうが「聴きやすい」。
大好きなスティーヴ・キューンもこのレーベルから出しているアルバムは買って「やられた」と思った。
演奏はいいのに、録音でそれがマイナスなのはどうかと思うけど、これが好み、という人も世の中にいるのだろうから人の好みはわからないものです。ホント。

さて、録音状態はさておき、演奏に注目しながら今夜紹介するのは・・・

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『SUMMER NIGHT/Richi Beirach』(venus/2008年)

リッチー・バイラークというピアニストは偶然ながらデビュー当時の生演奏に触れていて、その時の印象はとても良かった。
1973年に来日したテナー・サックスの巨匠スタン・ゲッツはデイヴ・ホランド(b)ジャック・ディジョネット(ds)という、当時としてもジャズファンなら広く認知されていた若手メンバーに、聞き慣れない新人ピアニストを連れて来た。
僕は高校に入ったばかりで、音楽科の寮の同級で現在日フィルでファゴットを吹いているN森と一緒に岡山の市民会館まで観に行った。

「ニュースター」と紹介されて出て来たリッチー・バイラークはボサボサの髪でちょっぴりずんぐりした容姿で小走りにステージに登場し、お辞儀もそこそこにピアノの椅子にすわり、どこか落ち着きのない男に見えた。

ところが演奏が始まると、そのピアノのタッチが綺麗にホールに響き渡り、まったく外見とは裏腹に当時勉強していたクラシックのピアニストにも匹敵する音色と技術を披露してくれて好印象。
二部の最初にゲッツが一人で出て来てピアノに座り「月光」の導入部をシャレっぽく弾いてしきりにウケを狙っていたが(笑)、そんな「おちゃらけ」な空気もバイラークが登場して1音弾いただけでぶっ飛んでしまった。
あまりにバイラークの印象が強く、せっかくの初ホランドも、初ディジョネットも高校一年生の耳には普通のベースとドラムという程度の記憶しかない。

そんなバイラークは、ちょうど時期を同じくして来日していたマイルス・デイビスのバンドのデイブ・リーブマンとも親交があったようで、この二つのバンドが東京でオフの日(これだけでも凄い事だと思わない?)に、デイブ・リーブマンのレコーディングを行っている。
また、同時にヴォーカリスト、アビー・リンカーンのレコーディングも行っており、そちらのスタジオにはオフのマイルスがひょっこり顔を出す、としいうハプニングもあって大いに話題になった。

リーブマンのレコーディングは、リーブマン(sax)バイラーク(p)ホランド(b)ディジョネット(ds)で行われてアルバム『First Visit』が日本だけでリリース。マイルスのサイドメンのアルバムをゲッツのサイドメンが作る、と言うか全員がマイルス・バンドの新旧メンバーだった。
アルバムはもちろんリーブマンのシリアスな表現を的確に捉えたものだったけど、1曲目の軽快なサンバからしてバイラークのきらめくように美しいタッチのピアノが聞こえてきて、僕はリーブマンのアルバムという印象よりもバイラークのみずみずしい演奏が聴けるアルバムという印象のほうが強い。

一方アビー・リンカーンのアルバムはリーブマン(sax)コルゲンさん(p)稲葉国光(b)アル・フォスター(ds)という日米混合メンバー。

どちらにしても、マイルス・デイビスのバンドとスタン・ゲッツのバンドが同時期に東京に滞在しているなんて夢のような出来事で、その夢の一部がこれらのアルバムとして残されている。
いかに70年代の日本のジャズシーンは盛り上がっていたか、だ。

だって地方で暮らす高校生でも、ちょっと足を伸ばせばスタン・ゲッツを岡山で、その直後にマイルス・デイビスを広島と大阪で、キース・ジャレットに至っては地元の松山で、観られたのだから。

さて、そんなデビュー当時の「落ち着きのない男」バイラークの名前を再び耳にしたのは、周りのミュージシャンが誰でも知っているバイラークの傑作『ELM』(ecm/1979年)。
最初に聴いたのが生演奏という数少ない海外ピアニストなのでこのECMとのコラボレーションは時代背景も加味するとバイラークにぴったりだったと思う。

その後ECMレーベルの代表マンフレッド・アイヒャーと対立し(スタンダード・ジャズを演奏するなというアイヒャーの御達しを守らなかったらしい)、同レーベルにバイラークが残した全てのリーダー作が廃盤にされ封印されるという(アイヒャーもアイヒャーで近年のECMではスイングビートものも解禁されているのだけどねぇ・・・まぁ、70年代当時の気質としてノンポリはあり得なかったという事か。。)とんでもない幕引きがあり、80年代半ばには、酒浸りで「もう、バイラークは終わっているらしい」という噂まで聞こえてきた。

確かにその時期に何処の国のレーベルだかわからないような小さなレーベルからリリースされたバイラークのアルバムと言うのを聴いた事があるが、お世辞にもデビュー当時の印象や「ELM」の頃のような輝きは無かった。

そんなバイラーク。
それでも最初にデビューした国が日本という事もあり、何かと日本では支持されている。
本国で強制廃盤とされた『ELM』も、日本では正式に販売され続けているくらいだ。

なので、冒頭で述べた通り、このレーベルの音が悪いのは百も承知でこのアルバムを買った。
四半世紀ぶりだろうか。

購入の動機となったのはこのアルバムのタイトル曲“Summer Night”。
この曲と言えば、最初に浮かぶ名演がある。
マイルス・デイビスのギル・エバンスとのコラボレーションの一枚である『QUIET NIGHTS』(cbs/1963年)。他のギルとのコラボレーションと比べて一般的には評価の低いこのアルバムだけど僕はギルとのコラボの最高水準作品だと思う。特にギル・エバンスのアレンジ手法の確立という点で。
そのアルバムの最後に、まるでグリコのおまけ、みたいに収録されていたピアノのヴィクター・フェルドマンとのハリウッド・セッションのカルテットで演奏されていたのがこの“Summer Night”。イントロではフェルドマンを彷彿とさせ、テーマに入ると軽快なスイングに(マイルスは終始ワルツで演奏)。

この曲をトップに据えるミュージシャンも珍しいが、ミュージシャンがピンと来るものは洋の東西とは関係がないものだと思った。僕に限らずこの曲を好んで演奏していたミュージシャンは多く、それらは皆マイルスが残した“あの”サウンドとセットになっているのだ。誰に「聴け!」と命令されたわけでもなく、またジャズ雑誌でしきりに「名演」と書かれていたわけでもない、そういう曲を実はミュージシャンは皆どこかから聴き出して、後の演奏活動で共通言語にしているのです。
この点では評論家の人達が唱える「ジャズの名盤」とはまったく違う必聴アイテムをミュージシャンは持っているのですね。

続く“All Of You”もマイルス・デイビスのレパートリー。
この有名スタンダードをパーツに分解して自在に組み合わせたのもマイルス・デイビスのアルバム『MY FUNNY VALENTINE/Miles Davis In Concert』(cbs/1964年)が源。
僕はこのアルバムが大好きでこのブログの木曜初回に紹介。

→2006年3月23日木曜ブログ第一回http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20060323/archive

ちなみに同じ日のコンサートからテンポの速い曲を集めてリリースしているのが『Four and More/Miles Davis』(cbs/1964年)。同じ日の演奏を別のアルバムとして発売するほど、当時のマイルス・バンドは充実していたのだろう。
さて、バイラークのこの演奏もマイルスのバージョンに沿ってリハモされたテーマのフォームと循環コードのセクションを組み合わせていて、如何に彼にとってマイルスがアイドルだったかがわかる。

“Solar”はそのマイルスの作品。他にも“All Blues”、“Milestones”、“So What”とマイルスへのトリビュートがズラリ。
ほとんど同じ作品を聴いて育った僕はバイラークの音楽の一部分だけど、とてもよくわかる気がする。

まるであの傑作ELMの種明かしをするようなイントロ・アレンジによる“Siciliano”はバッハ。途中マイルスの“Nefertiti”(作曲はウェイン・ショーター)が出て来るのは御愛嬌。
まぁ、そこまでマイルス・モードにならなくても、、、ねぇ(笑)

“Impressions Intimas”はスペインの作曲家、フェデリコ・モンポウの作品。解説によればモンポウの作品を近年バイラークが好んで取り上げているようだ。確かにモンポウのような綺麗なメロディーはバイラークに合うのかもしれない。

こうして、あの、まだ二十代半ばの初々しい、さっきトイレから出て来て手を拭こうと思ったらハンカチが見当たらず、ステージでは名前コールされちゃってるしぃ、、、いいやズボンで拭いちゃえ風に(例えですよ、たとえ!)慌ててステージに飛び出して来た「落ち着きの無い男」とピアノのタッチも音楽的センスも「美しい男」とのギャップがたまらなかったバイラークの、最近の音像が聴けて満足。

それにしても、録音が悪い。
その悪さは演奏しているミュージシャンのモニタリング環境にも影響しているようで、ところどころ相手が聴き辛い事に起因すると思われる演奏上の誤差を生んでしまっている。
こういうところに細心の注意を払うのが、制作側の責任と、音楽やミュージシャンに対する“愛”だと、僕は痛感する次第。


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チェキラ!
タグ: Jazz ジャズ CD




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