2012/11/22

日常の狂気から瞑想の世界まで奏でられる天才!・・・  木曜:Jazz & Classic Library


東京に出て来て間もない頃、ある有名なジャズドラマーの方とお話しをしていた時の事だった。

「ところで、君はどんなドラマーが好きなのかい?」

23歳の若造ヴィブラフォン奏者がどんなドラマーに興味を持っているか質問されたのだ。
時代は1980年。僕と同じ世代のジャズ好きな若者なら、当時大ブームとなっていたドラマーのスティーヴ・ガッドやハービー・メイソンなど、いわゆるフュージョン系ドラマーの名前を口にするのが定石だった。

「アイアート・モレイラですねぇ」

一瞬空気がピクリとしたのを感じた。

「アイアートはパーカッショニストじゃないか?」

そうもっともな反応が返って来た。

「ですけど、初期のリターン・トゥ・フォーエバーのドラム好きなんです」

「・・・っ」

「軽快で好きなんですよ」

「・・・っ」

しばらくの沈黙の後にこう言われた。

「ジャズを知りたいならエルビン(ジョーンズ)聞きなさい」

この頃、他のドラマーと話していた時も「アイアート・モレイラみたいな軽快なのがいいなぁ」と言うと、皆怪訝な顔をされた。

どうやらパーカッショニストが叩くドラムはドラマーからみると興味の対象外のようだった。
ヴァイビストがレコーディングでピアノを弾くのと同じかもしれないが、例えばヴィクター・フェルドマンが弾くヴィブラフォンもピアノも僕は興味の対象なんだけどなぁ。


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『FREE/Airto』(cti/1972年)

1.Return to Forever (Chick Corea)
2.Flora's Song (Flora Purim)
3.Free (Airto Moreira)
4.Lucky Southern (Keith Jarrett)
5.Creek "Arroio"(Victor Brazil)

Airto - percussion, vocals
Joe Farrell - soprano saxophone, flute alto flute, bass flute, piccolo
Chick Corea - piano, electric piano
Stanley Clarke - electric bass
Flora Purim - vocals

Keith Jarrett - piano

Hubert Laws - flute
Burt Collins, Mel Davis, Alan Rubin - trumpet, flugelhorn
Wayne Andre, Garnett Brown, Joe Wallace - trombone
Nelson Ayres - electric piano
Jay Berliner - guitar
Ron Carter - bass

Don Sebesky - arranger

Recorded at Van Gelder Studio in Englewood Cliffs, New Jersey on March 23 and April 12, 13 & 20, 1972


天才と呼べる数少ないエリアにいる人にアイアート・モレイラがいる。
初めて耳にしたのは中学の頃、マイルス・デイビスの『Live at the Fillmore East』(cbs/1970年)、そして『Live-Evil』(cbs/1971年)でだった。

とにかくその時の衝撃と言うか衝動と言うか、日常の狂気から瞑想の世界まで、ありとあらゆるシーンを演出してしまうアイアート・モレイラというパーカッショニストの決定的な印象を僕はこの二つのマイルス・デイビスのアルバムで受けていた。

それまでのパーカッションと言うと、コンガやボンゴに代表されるリズミックなラテンパーカッションか、現代音楽に代表されるような空間的なパーカッションかの二種類に分化されていて、この二つが交わっているのを聞いた事がなかった。

それを、容易く飛び越えてしまったところに現れたのがこのアイアート・モレイラだった。

上記のマイルス・デイビスのアルバムでも、彼が奏でる「日常の狂気から瞑想の世界まで」がどれだけマイルス・デイビスの音楽に影響を与えていたか計り知れない。
ある時はニューヨークの街角の喧騒のようなシーンを演出するかと思えば、「Live-Evil」の"Nem Um Talvez"ではキース・ジャレットのオルガンとのコンビネーションでそれまでには無い方向性をマイルス・デイビスの音楽に齎していた。

そんなアイアート・モレイラがマイルス・デイビスのバンドを卒業し、同期と呼べるチック・コリアと組んでリターン・トゥ・フォーエバーを結成したのは時代としてとても自然な流れだったと思う。

そして聞こえて来たチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエバーは、僕らの世代のジャズの解釈を大きく広げてくれるゼネレーション・バイブルになった。

そんな経過の中で、本家リターン・トゥ・フォーエバーのレコーディングから三カ月後に行われたこのアイアート・モレイラのアルバム録音。
時代の潮流に乗っていざ船出となった様が記録されていて実に興味深い。

個人的にもジャズに一番未来を感じた曲でもある1曲目“Return to Forever”は本家チック・コリアのECM版との差別化を図るためか、ドン・セベスキーがホーン・アレンジを担当しているのだけど、これはちょっと「滑稽な」出来になってしまった感じがするのは僕だけではないだろう。
後の人気曲の別バージョンという意味合いもあるかと思うけど、途中で出て来るホーンは余計のひと言。
原曲の演奏をじっくり楽しめるので我慢するしかないのだけど・・・
ジョー・ファレルからチック・コリアへとソロが受け継がれるのも本家と同じ。
幾分パーカッションの音量が上がっているのはリーダーたらんとする証か。
聴き比べすると面白いかもしれない。

アンニュイな感じの雰囲気で始まるフローラ・プリムの“Flora's Song”。
キース・ジャレットのソロが登場するまでは状況設定に聞こえてしまうのも凄い。
それだけキース・ジャレットのソロのインパクトがあるという事なんだ。
何となく「せわしない」ギターはジョージ・ベンソン。イマイチ掴み所が無い内にキース・ジャレットが出て来て全て持って行ってしまう。いやぁ、やはりキース・ジャレットはケタ外れにピアノが上手い。

3曲目“Free”は時々刻々と変化するインスピレーションの世界を捉えたモノで、フリーだけどフリージャズにならないところがいい。常に閃きに沿って歌を繋いで行っているからだ。アイアート・モレイラのパーカッション・ワールドを表現する為に用意されたフォーマット。

4曲目はキース・ジャレットの“Lucky Southern”。この曲はバークリー時代からリアルブックでお馴染みで数え切れないほど演奏して来たが、ここにオリジナルがあったとは気付かなかった。
このアルバムのある意味メインとも言えるようなコンパクト・コンポジション。
キース・ジャレットやゲイリー・バートン達がこの時期やっていたジャズをコンパクトなジャズチューンという呼び方をしていいのなら正にお手本のような曲と演奏。
ダラダラと何十分も演奏するジャズもあれば、コンパクトにサラリとやってのけるジャズがあってもいい。
短くてもキャッチーで、印象に残る個性を持った曲のみが生き残る、ある意味非常に難しい作曲能力が必要となるジャンルで、その断片がテレビコマーシャルだった。
シングルカットして売ってもいいような快演で、これぞキース・ジャレットの本領発揮、と言いたい。
完璧なキース・ジャレットのソロは圧巻。
今のジャズに一番欠けているのがこのコンパクトさだね。

5曲目“Creek "Arroio"”はリズムを主体とするアイアートをフィーチャーした演奏。
パーカッションが細かいところまで彩を添える。チック・コリアのリターン・トゥ・フォーエバーのレパートリーとしても良さそうな、これまたコンパクト・コンポジション。ジョー・ファレルのソプラノサックスのソロに続いてチック・コリアがアコースティック・ピアノに持ち替えてソロを取る。ちょっぴりだけキース・ジャレットを意識しているかのように感じるのは僕だけか。マイルス・バンドでも一緒だったこの二人のキーボーディストがそれぞれの道に羽ばたいて行くほんの一瞬のクロスポイントをアイアート・モレイラが作った事になる。

ともあれ、アイアート・モレイラを軸とした新世代ジャズメンの共演は、清々しさに満ち溢れていて気持ち良いんです。


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TOSHIHIRO AKAMATSU(vib) meets HAKUEI KIM(p) w/TARO KOYAMA(ds) & KUNIO OINUMA(b) @ 25-25Presents Special Live Vol.6

25-25プレゼンツ・スペシャルライブVOL-6。
『“赤松敏弘meetsハクエイ・キム”with小山太郎+生沼邦夫』

Toshihiro Akamatsu(vib)
Hakuei Kim(p)
Kunio Oinuma(b)
Taro Koyama(ds)

Recorded live at KAMOME in Yokohama. Nov/23/2011

[YouTube版]※画像をクリックすると別窓で開きます

★第二部1曲目



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