2013/10/25
【演奏講座】ヴィブラフォン、マリンバ、今さら聞けないコードの秘密/ブルーノートとオルタードの蜜月 金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック
毎週金曜日はVibraphoneやMarimbaをやっている人向けのお話し。
金曜第三百三十三回目の今日は演奏講座の理論編。
先週の続きで『ヴィブラフォン、マリンバ、今さら聞けないコードの秘密/ブルーノートとオルタードスケールの蜜月!』と言うお話し。
途中からの人は先週の『【奏法講座】『ヴィブラフォン、マリンバ、今さら聞けないコードの秘密/クリシェからブルーノートへ進もう!』( http://sun.ap.teacup.com/applet/vibstation/20131018/archive )から読んでくださいね。
また、ココまでの金曜クリニックをご覧になりたい人は左のカテゴリー(またはこの記事のタイトル右側にある)「金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック」をクリック。この記事に続いて過去の記事全てを見る事が出来ます。チェキラ!



先週も書いた通り、ブルースは苦手です。真正面からどうにも。。。
この言葉の裏には、拒絶ではなくどうすれば肯定的にブルースに触れられるか、という意味もあります。
好きな物は放っておいても大丈夫ですが、嫌いなものは放っておくと一生取り上げようともしません。
と、言うのもジャズに関わっていると、まことしやかにこんな言葉が聞こえてくるからです。
「ブルースはジャズの起源のようなもの」・・・
そうかな?
へそ曲がりの僕はどうにもそれが信じ難かった。
いや、今でもそれは変わらないと思う。
先週挙げたように、子供の頃から教会の礼拝に行ってゴスペルを歌うような幼年期を過ごしてはいないから。
ただね、どうやらこれはブルースの一派らしいというハーモニー上の仲間と出会うと、それはとても心地よい響きを持った連中なんだという認識が生れた事からブルースというものの見方が変わって行った。
ジャズのトレーニングの順序として、楽器を(歌も含む)始めて間もない段階で「よし、じゃ、ブルースでセッションしてみよう」というやり方がある。
これは、たぶんそれまでに多少のコードをギターなりピアノなりで奏でた経験がある人か、ブルースが大好きな人なら面白いと感じるはずだ。
ところが、これが苦痛でしか無いという人間も実はいるのだ。
単純にブルースが嫌いだから、という人もいれば、習い始めたコード理論と著しく矛盾する点で抵抗を持つ人もいる。ブルースというのは特殊なブルース・スケールで演奏するからだ。
せっかく頭に叩き込んだばかりの理論をその特殊な音階に容易く覆されてしまうのだ。何が辛いってこれほど辛いものは無い。これから新境地を拓こうとして縋る思いで勉強している理論が一瞬でパーになるような気がするからだ。
こんな時にあまり意味のわかっていない奴にかかると「頭デッカチになっちゃイケないよ」な〜んて見当違いの事を言われたりもする(笑)。
アメリカに行ってこの点で我々が大きなギャップを持っている事を知らさせた。
ひとつには、彼等は大学でジャズの勉強をしようとするならそれまでの学校生活の中で自然にコードやブルースに触れている事だ。だからブルースは“簡単な応用”という範疇で捉えられる点。
もう一つは、初期の段階にブルース・セッションが組み込まれる要因の一つに「他人の音を聴きながら演奏する訓練」というのがある事。つまり多少のコードを知っているなら“後ろ”の音を聴きながら今何処をやっているのか、とか、何コーラス(リピート数)という周回を演奏しながらカウントするとか、要するに「取りあえずこの音階(ブルーススケール)の音を出しておけば、後は周りのいろんな事を察知しながら演奏する為のステップ」でもある点だ。
“ながら”で演奏。
もしも日本の音楽教育で何か欠けているとしたら間違いなくコレだな(笑)
そんななので、ブルースにはいささかの矛盾点が入りこむ余地が実にたくさんあるのだけれど、それを寛容に受け入れてしまえるところにブルースの凄いところもある。
ただ、僕らが言っているブルースというのは音楽の様式(フォーム/form)である場合が多いので、本当のブルースを追及している方達とは異なった部分がある事は予め承知しておいてほしい。
さて、
ブルースを根源に持たなくてジャズは出来ないのか?
そんな事はない。
僕はブルースの代わりにボサノヴァを根源に据えた。
実は聞こえ方こそ違うものの、初期のボサノヴァの曲はなかなか寛容で理論通りに説明がつかない物も多いのだが、それがいい場合がある。
たぶん、僕はそちらの「いい」には素直に順応出来るようだったのでブルースの代わりにボサノヴァを選んだ。
それと、ポルトガル語などまったくわからないにも関わらず、ボサノヴァの歌を聞くのが大好きでしかも何となく歌詞の意図するところを察知出来てしまう場合も多く、これなら立派にブルースの代用になるだろう、と。
不思議でしょ?
歌詞を翻訳出来るわけでもないのにメッセージが伝わる。
たぶん、これはポルトガル語と日本語には発音上の表現に共通するニアンスが英語よりも多く存在しているからだと思うのですね。
だから感情表現として理解しやすいのではないか、と。
もちろんこれは僕にとって、という事ですが・・・・
で、
ブルースが苦手という事は、その影響下にあるモノにも幾許かの抵抗を持って最初は接するもの。
その代表がオルタード・スケール(altered scale)。
たぶん、ブルースが好きな人はオルタード・スケールも好き。
ブルースが苦手な人はオルタード・スケールも苦手。
そもそもコードにみられる「alt」とはどんな意味なのでしょう。
「そりゃ、決まってるだろ“alt”って書いてたらオルタード・スケールって事じゃん」
まぁ、そう言うのは簡単ですが、
「じゃ、聞くけど。なんでオルタード・スケールってあるの? なきゃイケない理由って挙げられる?」
さっきまで勢いのあった人がシュンとなる瞬間です。
「本に書いてあったから」とか「ネットの電脳辞典に載ってたから」では説明になりませんね。
そういうのを“鵜呑み”といいます(笑)
そもそも、なんでオルタード・スケールコードは、コードとしては確定要素の高い完全五度の音程をコードトーンに持てないのでしょうか?
実は本来altは“Altered chord”、つまり「変形したコード」という意味でジャズでもAltered Dominant chordと呼ばれるものの中の一つとしてオルタード・スケールコードはあるわけです。
「変形」とは、長調の五度の音を根音として出来るドミナント・コードのコードスケールを基本として、そこから半音の変化が起こる全てのコードスケールを差します。
その変異は根音の隣りの音を基準として、
(1) 9th族・・・・主に#11thを含むもの
(2) b9th族・・・主にb13thを含むもの
(3) #9th族・・・主にb9th、#11thを含むもの
の三種が軸。
これらはコードを確定する完全五度を含むが、これらに該当しないものとして、
(4) altered scale chord・・・Maj7コードの根音以外が全て変異したもの
変異はまだまだ#5thコード等もありこれらを総称してalterationと呼ぶカテゴリーなのです。
なので、オルタード・スケールというのは、本当にオルタード・スケールが該当する箇所でしかワークしないものなのですね。
そこに、実はブルースとの蜜月な関係があるのです。
先週解説した“Basin Street Blues”でその関係を暴きましょう。
■ブルースとオルタードの蜜月な関係の考察
Basin Street Blues (1小節目 - 4 小節目)

(クリックで別窓拡大/以下同じ)
この部分の1小節目に注目。
元々この曲のキーはCメジャーですからコードトーンの隙間にはCメジャーの音階が隠れています。
その中でトニックのコード“C”では4thのFがアヴォイド・ノートに該当するので省略した六つの音(白玉)が使えます。
それにブルーノート・スケールの特徴ある #9th=D# と b7th=Bb を加えたスケールを連想する事でブルース風のサウンドを奏でる事が出来ます。
そして・・・

次のコード、Gb7も同じように元々の調“Cメジャー”の音階上に、まずどの音がどのように変化すればGb7というコードが描けるかを考えます。
なるべく元の“Cメジャー”の音階を残すようにして・・・
まずコードの根音Gbは文字通りGにフラットを付ける手もありますが、Cのコードの時にアヴォイドした4th=Fの音を有効に使うと考えるとシャープを付けてF#とすると無駄な音の変異を防げます。
コードの3rdのBb=A#は前のコードでブルーノートとしたBbを選択する事で成立しますね。
問題は5thの音です。
音で言えば C# or Db になるのですが、この音は先のCのコードにも、Cで連想したブルーノートを加えたコードスケールにもありません。
すると、これは完全五度に相当する音を入れない音階のほうが、元の調との兼ね合いが良くなるという事にもなります。
つまり、この時点でこのGb7には完全五度を持たない音階である、オルタード・スケールの該当が考えられるのです。
ちなみに七度はb7thのEが元の調のスケールにあるのでそのまま使えます。
ブルーノートを含むトニックを持つと仮定したこの曲のGb7は、このような理由からオルタード・スケールを選択する事も出来るわけです。
しかし、何事にも検証はつきもの。
また、定石だけに頼ってもイケないのが音楽。
バリエーションとしてGb7というコードをb9thが存在するalterationで可能性を探ってみましょう。
■alterationを活用した演奏検証
この曲のGb7の部分をコード理論的に可能性を広げると最低でも次の二つのスケールを持つオルタード・コードが連想出来るでしょう。

この二つの案は完全五度を持つ確定的なドミナントコードをアレンジ要素を強めて置き換えたものです。
つまり、先のオルタード・スケールコードは元々のCという調を基調にブルーノート・スケールを組み立てた上で解明しているのに対して、この二つのコードは次に来るコードBm7を仮のターゲット・コード(この場合はマイナー・ケーデンスを適用)の五度と仮定したコードという理論的な解釈から生れているものです。
さぁ、先のオルタード・スケールと並べて最初の4小節のソロにどのような違いが生れるでしょうか。
実は、僕はブルーノートに抵抗があった時期はSpanish phrygianをこのような箇所に当てはめて凌いでいました。たぶん、自分ではその方が心地よかったのでしょうね。
(以下、次回)

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『レパートリーで学ぶジャズマリンバ&ヴィブラフォン/赤松著』(ヤマハ出版)



【配信追加情報】
ご要望の多かったiTunes StoreやAmazon.co.jpでのアルバム『AXIS』の配信が2013年9月4日より始まりました。

『AXIS/赤松敏弘』
1. Return To Forever (Chick Corea)10:51
2. Over Again (Toshihiro Akamatsu)7:53
3. Sound Of Focus (Toshihiro Akamatsu)8:23
4. Axis (Toshihiro Akamatsu)07:49**
5. Silent Butler (Toshihiro Akamatsu)5:18
6. Cheerful Flight (Hideo Ichikawa)6:09
7. Havona (Jaco Pastorius)7:19
8. I Thought About You (J.Mercer-J / Van Heusen)4:47**
Toshihiro Akamatsu(vib)
Koichi Sato(p)
Masahiro Sawada(b)
Kodai Higuchi(ds)
**guest : Nanami Morikawa(vo)
発売元:(株)ベガ・ミュージックエンタテインメント(VEGA)
★iTunes Store 赤松敏弘ディレクトリー

iTunes storeでは6アルバムからセレクトされた44曲を配信中
★Amazon 赤松敏弘 MP3専用ディレクトリー

amazon.co.jp MP3ストアーではアルバム『Axis』収録全8曲を配信中
全曲試聴可。
若手メンバーとのフレッシュな演奏を、DSDレコーディングによる最良の音質でお楽しみください。

赤松敏弘(ヴィブラフォン)佐藤浩一(ピアノ)澤田将弘(ベース)樋口広大(ドラムス)
どうぞ御利用ください!



★CDを“ドスドス”探したい人の味方!

■ジャズ全体http://www.hmv.co.jp/artist/rank/0/genre/800/
【楽器別】
■ヴォーカル
■トランペット
■トロンボーン
■サックス
■フルート
■クラリネット
■ピアノ
■オルガン
■ビブラフォン
■ギター
■ベース
■ドラム
★☆★ 2012 BEST LIVE (動画) ★☆★
Nov/14〜15/2012
Toshihiro Akamatsu (vibraphone)
Hakuei Kim (piano)
1st set (9:30pm〜10:50pm)
1.Winter Festival---by Hakuei Kim
2.The Gleaner-----by Toshihiro Akamatsu
3.Stella by Starlight
4.White Forest-----by Hakuei Kim
5.Nagi Moca suite---by Toshihiro Akamatsu
6.Newtown--------by Hakuei Kim
7.Silent Butler-----by Toshihiro Akamatsu
8.(encore)O Grande Amor
2nd set (0:48am〜2:09am)
1.Winter Festival---by Hakuei Kim
2.The Gleaner-----by Toshihiro Akamatsu
3.Stella by Starlight
4.White Forest-----by Hakuei Kim
5.Nagi Moca suite---by Toshihiro Akamatsu
6.Newtown--------by Hakuei Kim
7.Silent Butler-----by Toshihiro Akamatsu
8.(encore)On Green Dolphin St
Rec, Nov/14〜15/2012 @ Okaido"COLORFUL", Matsuyama, Ehime, JP
※赤文字の演奏動画を公開しています



ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)
2012年11月14日四国・松山でのライブ第二部のもので第一部と同じ曲の深夜の演奏です。
まったく違うイントロから始まった瞬間から純粋な即興演奏に突入しました。
デュオという最小公約数にして最大の自由度を持つアンサンブルでしか出来ない衝動の記録となりました。
ソフトのアップロード時間制限の為に10分未満の暫定バージョンを年末にアップしていましたが今回フルバージョンに更新。



ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)
あらゆる意味で刺激的だったこの日のライブの最終アンコール。時刻は午前2時です。
第二部の会場は半分以上が地元のミュージシャンやピアニスト、音楽関係者で埋まっていましたから二人ともよりアグレッシヴなOn Green Dolphin Stに。午前二時にこんなガチンコなライブをやる街は日本でも珍しいでしょう。さすがは我が故郷です(笑)



ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)
赤松・ハクエイDUOでのStella by Starlight。
このバージョンは2012年11月14日四国・松山でのライブ第一部のものです。
前月の横浜ジャズプロムナード2012でも評判だったこのスタイルのデュオがさらに一歩踏み込んだところでの演奏に。次の深夜のステージの演奏と比較するとまったく別の曲です。ジャズライブの楽しみ方で僕らはとても大きな事にこの時気付いたのでした。



ハクエイ・キム(p)赤松敏弘(vib)
四国・松山でのライブ第一部でのオリジナル曲The Gleaner。この日は入替え制という事もあり第一部も第二部も同じプログラム(アンコールを除く)でしたが、考えてみればクラシックのコンサートやポップスのコンサートとジャズのコンサートが大きく異なるのは、たとえ同じ曲を一日に二度演奏したとしてもまったく違う演奏になるのが当たり前。このライブではその当たり前な事を随分長い間僕らは忘れていた事に気づかされて、久しぶりに達成感で満たされたのを覚えています。
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『BEST LIVE 2011(動画)』

TOSHIHIRO AKAMATSU(vib) meets HAKUEI KIM(p) w/TARO KOYAMA(ds) & KUNIO OINUMA(b) @ 25-25Presents Special Live Vol.6
25-25プレゼンツ・スペシャルライブVOL-6。
『“赤松敏弘meetsハクエイ・キム”with小山太郎+生沼邦夫』
Toshihiro Akamatsu(vib)
Hakuei Kim(p)
Kunio Oinuma(b)
Taro Koyama(ds)
Recorded live at KAMOME in Yokohama. Nov/23/2011
[YouTube版]※画像をクリックすると別窓で開きます
★第二部1曲目

★第二部二曲目[Tribute to 1964's Miles-vol.1]

★第二部三曲目[Tribute to 1964's Miles-Vol.2]

ガンバレ東北!
がんばろうニッポン!

■New Album『AXIS/赤松敏弘』(VEGA)

VGDBRZ-0044/3.000円(税込)
赤松敏弘(vib)The NewQuartet
guest:森川奈菜美(vo)

■Tower Record
■HMV
■amazon.co.jp
■disk UNION
■山野楽器
■新星堂
■ベガ・ミュージック・エンタテインメント
■Yahoo!ショッピング
■楽天市場
■ヤマダ電機WEB.COM
■セブンイレブンネットショップ
他
どうぞご利用ください。










■赤松敏弘MySpace
そして、コチラはオフィシャルサイト
■赤松敏弘Vibraphone Connection
掲示板に替わって登場、オフィシャルな(?)つぶやきTwitter
■赤松敏弘 Vibstation's Twitter
新しく追加のコミュニティー
■赤松敏弘facebook

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