2008/10/23

美学・・・・Miles Davis  木曜:Jazz & Classic Library

ジャズでは管楽器奏者の場合、その多くの演奏にはメロディー・フェイクの延長上にあるフレーズやアルぺジオの発展形としてのリックをどのようにスリリングな表現と結び付けるか、があると思う。

ジャズの歴史の中でそれらは後進のプレーヤーによって分析しつくされ、やがてマニアル化した部分もあるが、まったくそれと別の形でジャズを作り上げていた人がいる。

個人的な見解でその何人かを挙げると、スタン・ゲッツ(ts)、エリック・ドルフィー(as)、チャールス・ミンガス(b)、ジャコ・パストリアス(b)、、、、

そして、最も大きな存在がマイルス・デイビス(tp)。

今日紹介するアルバムはコレ

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『PANGAEA/Miles Davis』(cbs/1975年)

徹底した美学を放っていたマイルス・デイビスのアルバムはそのままジャズの歴史と正比例するでしょう。
古くは「クールの誕生」や「カインド・オブ・ブルー」、スタンダードへのアプローチが意欲的な「マイ・ファニー・バレンタイン」、混迷していたジャズに一筋の道を示した「ビッチェズ・ブリュー」、ワールドミュージックとの接点となった「オン・ジ・コーナー」など、その時代の旬を明確に表わしたアルバムにいつも衝撃を持って接した。

そんなマイルス美学の頂点と思えるのがこの70年代中盤に率いていたバンドの音楽だと思う人は案外少ない。

Miles Davis(tp,org)
Sonny Fortune(ss,as)
Michael Henderson(b)
Pete Cosey(g)
Reggie Lucus(g)
Al Foster(ds)
Mtume(perc)

偶然にもこのアルバの公演を高校生の時に大阪フェスティバルホールで目撃した。
「アガルタ」というアルバムが午後4時からの昼の部で、こちらが夜の部を納めたもの。
その2年ほど前の来日公演も広島郵便貯金ホールで目撃したが、サックスがデイブ・リーブマンからソニー・フォーチュンに代わった以外は同一だった。

でもバンドの音楽は格段に変わっていた。

昼の部では1 st setの中ごろに突然ボサノヴァ風の曲(後にアイシャという曲名でクレジット)が聞こえてきた時には鳥肌が立った。
夜の部(このアルバム)では昼の部の上を行くパワーに圧倒された。
明らかにバンドが毎回違うアプローチを行う事を実践してくれた。

これら一連の「70年代中盤バンド」にはマイルス本人以外バンドの中にスタープレーヤーがいません(もちろん他の音楽では皆一目おかれる存在)。ここにはショーターもハンコックもジャレットもコリアもいない。
マイルス・デイビスの長いキャリアの中でもこれは意外な人選と言えます。
必ず自分の他に新人のスタープレーヤーを入れていたマイルス・バンドの歴史の中でも異端な形かもしれないね。(この後しばらく怪我によるブランクを経て再起したバンドには再びスタープレーヤーを入れた)

元々マイルス・デイビスのトランペットが奏でる音楽には他のプレーヤーが常用するフレーズやリックは少なかった。
ノン・ビブラートとハーモン・ミュートというスタイルにはそれらが必要なかったからでしょう。
音色そのものの魅力に加え、この人のハーモニー感覚に優れたアイデアがミックスされて音楽を形成したいた事が容易に想像出来ます。

ハーモニーは細かなフレーズやリックと違ってリズム(つまりはビート)を選ばない。
だからバラードでも、スイングでも、ロックでも何でも自在に自分のものとする事が出来るわけです。
ココに着眼していた管楽器奏者は少ない。
冒頭でスタン・ゲッツもその仲間として挙げたのも、そこに理由があるんですね。

逆にリズムには流行り廃れがあります。
爆発的にヒットしたリズムほど数年経ってから聞くと古く感じられるでしょ。
つまりは音楽の三要素の内、唯一古くならないのがハーモニーという事。
それをマイルス・デイビスは巧みに取り入れながら音楽を進化させていたのですね。

これは凄いと思いました。

この70年代中盤のバンドが頂点と思うのはそのハーモニーをどのように聞かせるかに徹底していたからです。
その為に、出したアイデアに対してすぐに既存のジャズの手法に頼る、叉は感覚としてジャズ的に集約しないミュージシャンを選んでいたのでしょう。

ある意味で途中で演奏が混線している部分もあります。
もしもジャズ・ミュージシャンを集めると様々な手法から器用に混線からの回避を果してくれるわけですが、このバンドでは敢えてそのままにしているんですね。
その瞬間に全員が同じ位置で物事を聴き合いながら考えるというスタンスを崩さないという、これはとても勇気のいる事でメンバーに信頼がなければ出来ない事です。
ステージを見ながらそれを実感しました。

マイルス・デイビスの発言は過激なものとして受け止められがちですが、殆どの場合「相手の発言や音をちゃんと聴いていない連中」に向けて放っているものですね。

この当時、ジャズの専門誌などでは「電化マイルス」とか「単調なビート」ばかりに鉾先が向いてこのバンドに関する正当な文章が露見していませんでしたが、実際に目撃するとステージの上はとても良い環境にあったと思います。

思いきった言い方をすれば、これはマイルス・デイビス・オーケストラと呼んでもいいでしょう。クラシックの世界でもオーケストラの団員には優秀なメンバーが必要だけどスタープレーヤーは必要としません。
それと同じ事がこの時期のマイルス・バンドに唯一当てはまるのですね。

音楽は一見リズム(ビート)が先行するように聞こえますが、その中でレジー・ルーカスが放つハーモニーや、マイルス・デイビスがリードするシーンを聴くと、ハーモニーのエッヂを彼等が如何に研ぎ澄まそうとしていたかを知る事が出来ます。

また、ソニー・フォーチュンの参加によって前回の来日時よりもステージの上がグッとジャズっぽくなった、という当時の印象を忘れる事が出来ません。


いよいよ明日から〜!

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今週の金曜日(24日午後5時30分〜)と土曜日(25日午後3時〜)から、新宿で2daysコンサートがあります。
青梅街道沿いに聳える「西新宿」の西新宿三井ビル1階・内側の特設会場。

初日は若手新人ピアニスト佐藤浩一君との初デュオ。
二日目はマリンバの松島美紀さん率いるユニットとの共演。

(株)三井不動産さん主催の無料コンサートです。(お席は先着順/整理券等はありません)
場所等詳しくは新ホームページのインフォを。
みなさまお誘いあわせの上ご来場ください。
新宿西口の三井ビルではありませんからお間違えの無いように!(毎年間違える人がいますよ〜)

赤松敏弘MySpace
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おしまい




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