2009/2/27

ファンの回ったヴィブラフォンの事など  金曜:vibraphoneやmarimbaの為のジャズクリニック


毎週金曜日はvibraphoneやmarimbaをやっている人向けのお話し。金曜第百二十七回目の今日は「ファンの回ったヴィブラフォンのお話し」。

先週はファン(ヴィブラートを付ける為にパイプに仕込まれたプロペラ)が停まった歴史をゲイリー・バートンの初期のアルバムを元に検証してみました。

基本的にはファンを回さない奏法、4マレット奏法について書いていますが、実際にその歴史はまだ短く、これまでにココで解説しているヴィブラフォンの奏法や練習を生かすには楽器の歴史や演奏に触れておく必要があります。
ジャズや過去のヴィブラフォンの演奏を聴かずして得るものはありません。

やはり“耳”から得る情報は何よりも優るのです。

理論展開の前に、ファンを回すヴィブラフォン奏法についても書いておきます。

元々ヴィブラフォンはメタルフォン(メタル鍵盤のマリンバ)を開発中にパイプの中に電動による回転翼を仕込んでトレモロ効果を上げたのが原型で、後に余韻の長いアルミ合金の鍵盤に載せ換えて、長い余韻をピアノと同じようにペダルで操作するダンパーペダルを装着した瞬間に生まれました。

マリンバは打楽器、ピアノは鍵盤楽器、ヴィブラフォンはちょうどその中間にあたる性質を持った楽器なので、奏者も打楽器方面からヴィブラフォンに到達するタイプとピアノなどの鍵盤楽器から到達するタイプに分かれます。

オーソドックスなスタイルの奏者では、ライオネル・ハンプトン、ミルト・ジャクソンなどがヴィブラフォン以外を聞くジャズファンにも広く認知されています。

その後様々な演奏スタイルが生まれ、ゲイリー・バートン、マイク・マイニエリ、ロイ・エアーズ、ボビー・ハッチャーソンなどが一般に知られた奏者の代表でしょう。これらの奏者が注目を集めたのが1960年代。音楽の変化と共にヴィブラフォンの演奏も進化して今日に至ります。

さて、今でこそファンを回すスタイルと回さないスタイルが半々のヴィブラフォンですが、ゲイリー・バートンが1963年以降ファンを停めたスタイルを確立する以前は殆どファンを回すのが通常とされていました。

ハンプトン氏やジャクソン氏の演奏は今でも耳にする機会が多いと思うので、今回はそれ以外の奏者にスポットを当ててみました。


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『A JAZZ BAND BALL』(mode/1957年)

前にココで書いたと思うのですが、僕はあまりセピア色の録音が好きじゃありません。セピア色というのは写真のモノトーンのような録音です。なので紹介するには何がいいかな?と随分悩んだのですが、録音の状態といい内容といい、このアルバムを一番に掲げたくなりました。

このアルバムには三人のヴィブラフォン奏者が参加しています。
テリー・ギブス、ヴィクター・フェルドマン、ラリー・バンカーの三人です。

テリー・ギブスを除けばヴィクター・フェルドマンはピアニストとして、ラリー・バンカーはドラマーとして有名なジャズメンなんですが、演奏を聴けばわかると思いますが、それぞれの演奏にピアニストだから、とかドラマーだから、という前置きが必要ないほどヴィブラフォンが軽快にスイングしています。

三人ともファンを回していますが、奏者の違いは音色、すなわち使うマレットで表現されています。

テリー・ギブスは中では一番軽量硬質のマレットでアタック重視のスタイルでペダルの使い方はやや早めの(回転)ヴィブラートを聞かせるように長めの余韻で、ヴィクター・フェルドマンはアタックと倍音が鋭いマレットによってハーフぺダリングを使ってニアンスを、ラリー・バンカーはミディアムのマレットで三人の中では一番音色はソフトに。
もちろん使われた楽器の固体差もありますが・・・

この中で興味深いのがラリー・バンカーの演奏。
ギブスとフェルドマンの音色はヒットした鍵盤の8割にヴァイブレーションが感じられるのに対してバンカーの音色は3〜4割程度しかヴァイブレーションが聞こえてきません。
ぺダリングも常にドライで残響に対して他の二人とは考え方に違いがあるようです。実際に見たわけではありませんが、7曲目の“Softly as in a morning sunrise”のバンカーのソロの冒頭ではマレットダンプニングかそれに類ずるぺダリング等のミュート奏法を駆使しています。

先週のゲイリー・バートンの項でゲイリーとラリー・バンカーの出会いもファンを停めたヴィブラフォン奏法スタイルの一因になっている予測に繋がります。

ヴィブラフォンの軽快さを楽しむだけでもこのアルバムを聞く価値はありますが、やがて訪れるヴィブラフォンの大改革に向けてこの頃から奏法の開拓は進んでいた事も検証できます。

また、このアルバムでは三人の内誰かがシロフォンやマリンバに持ち替えて演奏しているテイクもあり、それらの楽器でのジャズ奏法がその後確立されていないので大いに参考になるでしょう。


さて、もう一枚。

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『VIC FELDMAN ON VIBES』(mode/1957年)

さきのアルバムにも参加していたヴィクター・フェルドマンの“ヴィブラフォンの”アルバム。
フェルドマンはマイルス・デイビスのバンドでピアニストと作曲家として有名になっていますが、元々はドラマーとしてわずか7歳でデビューした神童。9歳からピアノ、14歳からヴィブラフォンを始めたイギリスの神憑り的な存在で、アメリカのジャズシーンに乗り込んで後年はウエストコーストのスタジオミュージシャンの代表格となった人物。

もちろんファンを回しての演奏ですが、このアルバムを聞くと、フェルドマンがドラムとピアノの長所をヴィブラフォンに持ち込んでいる事が聞き取れて面白いのです。

例えば、1曲目のブルースなどでは、片手による細かいフレージングが聞こえてきたり、2曲目ではミュートによるアクセントが聞こえてきたりと、なかなか油断できない小技(笑)が満載なのですね。

振動する鍵盤を直接触れて効果を出す、というのはドラマーのシンバルや皮物の奏法に起源があると思えるし、片手によるニアンスはピアニスト的な発想でしょう。

それらが嫌味なく使われているところにフェルドマンのセンスが光っています。

ヴィクター・フェルドマンは1ヴィブラフォン奏者に留まらず、ピアニスト、作曲家として彼のセンスを生かせるものなら何でも消化して行きました。

ヴィブラフォン奏者としてのフェルドマンの映像をYouTubeで見つけました。→コチラ(victor feldman group)

恐ろしくモダンでコンテンポラリーな彼のハーモニック・センスが光る映像もYouTubeで見つけました。60年台初めにマイルス・デイビスが彼を雇った事が納得できるピアニストとしてのフェルドマンです。当時マイルスがハービー・ハンコックに「ヴィクターのようなハーモニーを弾け」と指示していたのは有名な逸話です。40年以上前のサウンドとはとても思えないモダンなものです。 →コチラ(roni scott and victor feldman/1965年)

さて、本日はヴィブラートを使ったヴィブラフォンのお話し。
同じヴィブラートを使った奏者でも様々なニアンスを演奏に注入しています。
やがてダンプニング等はもっとも効果が上がる方法としてヴィブラートの停止という結論も生まれました。
また、ヴィブラートの速度(回転)ひとつ取ってみても、それぞれの奏者にこだわりがあります。

個人的な経験では、楽器のビブラートは使わないくせに、エフェクターのコーラスを使った時は自分で新しい世界が開けた感じもしました。

人工的な音響装置でしかないヴィブラートも、人間の技とセンスでかくもヒューマンな響きとなるものなのか、いろいろと検証する必要があるでしょう。

それらと奏法理論が合体して、あなただけのオリジナルなスタイルが生まれる事がヴィブラフォンやマリンバの世界を広げる事に繋がるのですね。

耳から得る情報に優るものなし!
これを機会に歴史に残る様々なジャズのヴィブラフォン奏者のアルバムを聞いてみてください。
きっと発見があるはずです。


スペシャルライブのお知らせ
★2009年3月15日17:00開演(開場15:45)
○会場:横浜・関内「KAMOME」

http://www.yokohama-kamome.com/
○出演者:赤松敏弘/vib 川嶋哲郎/ts 生沼邦夫/b 小山太郎/ds
○チャージ:¥4,000
ご予約・お問い合わせは、主催者・森本まで。  
(TEL)046-248-8185
(e-mail) m22327@beach.ocn.ne.jp
taka2525@s2.dion.ne.jp

★25-25プレゼンツ・ライブ第5弾! 「赤松敏弘meets 川嶋哲郎、with 小山太郎、生沼邦夫」
赤松敏弘と、 テナー・サックスの雄、川嶋哲郎の初共演です。 どんな展開になりますやら!乞うご期待!

[アクセス] 市営地下鉄 関内駅 徒歩3分。 東急東横線直通 みなとみらい線 馬車道駅 徒歩5分。 JR 関内駅 徒歩5分。横浜市中区住吉町6-76


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