3系数 3分節 三角形
3の数の含意と符合するシンボルや形而上学的概念ないし具体的なしるし。
一般に生成のシンボルとみなされるこの数は、相反するないし補完的な、そして一方は能動的、他方は受動的な2つの力(3系数)、さらに第3項によって協和する力の均衡を明確に示す。そのかぎりにおいて、3系数は、「相反するものの一致」として今日まで伝わり、そこから明らかに原初的な両性具有の神話が派生した。古代の伝統を解く鍵でもある。すぐれて神聖なシンボルでもある3係数(例えば聖三位一体)は、伝統的に最初の流出をついて3つずつ結びついた一連の出現を明示する。いわばそれは天上世界の頂点に位置する神性の原初の流出、もしくは既に流出していた神性とは無縁の出現を演出する。いずれの場合でも、一性ないしそうみなされるものは2係数のうちで倍加するが、そのためには第3の働きが必要となる。
おそらく三角形は3系数のもっとも一般的な目に見える翻訳であるが、それ以外の表象としてはたとえばカドウケスや、[2本の直線が第3の線で結びつけられている]AやHなどがある。だが、3系数はさまざまな解釈が可能であり、その混乱ゆえにこれまで多くの考察がなされ、多くの論争が生まれてきた。あるいはこうした3系数は以下のような2通りのグループに分類すべきかもしれない。
1 ▽ 「同類的」グループ 父、母、息子。命題、反対命題、総括[ヘーゲルの弁証法では、順に正、反。合]。このグループは、地上的あるいは少なくとも宇宙発生論的な出現のシンボリズムに該当する。男性的かつ能動的な原理と女性的かつ受動的な原理の結合から、第3項とでもいうべき生産物が発生する。3幅対の大部分、たとえばエジプトのオシリス+イシス=ホルス、中国の天+地=人、ヒンドゥー教のプルシャ(我[原人、根本精神])+プラクリティ(原初の自然[根本原理]=化身、ピュタゴラス派のモナド[単子]+ダイアド[対]=3幅対、ケルトのOIW(オユヌ、隠れた存在)+マンレッド(光)=モドゥラン・アワズ(世界)、さらにネオ・グノーシス派の父+聖霊=キリストなどはこのグループに属する。ただし、ここで取り上げたのは最もよくしられた例に過ぎない。このタイプの3系数は象徴的にいえば上述したケルトの3幅対を除いて、いずれも上方へ広がっており、そこでは2つの補完的な原理、すなわち能動的なるものと受動的なるものが、原初の一性を欠いている。しかし、下方は閉ざされていて、その第3項が過程の目的を表している。
2 △ 反対に第2のグループは上方が閉ざされているが、下方に広がっている。これは上述の第一原理を表し、この原理からは第2原理からは、ついで補完的(子と聖霊)であると同時に対立的(善と悪)でもありうる第3項が発生する。[上昇する(上向きの)]三角形[心臓、ヘクサグラム、目]に象徴されるこのグループは、本質的に天上の3系数にほかならない。普遍的な、そして宇宙的なものの出現は、全てそれにもとづくからである。
キリスト教の聖三位一体は、ゾロアスター教の根本的な三位一体(無限なるものとしてのゼルアーネ=アケレネ、善神オルムズド、悪神アーリマン)や、カバラのセフィロト樹に置けるいくつかの3幅対のようにこうした3系数のカテゴリーに属している。ここではさらにケルトの前述した組み合わせとは別の3幅対を指摘しておこう。それはOIW(オユヌ、無限なるもの)から生まれた善のドルグ、そのなかで動く神ドゥエ、そして悪魔シタラウルが支配する悪マズからなる三幅対である。これらの2通りの3系数をまとめてみれば、神性と創造の関係をめぐる秘教的な考えが残らず見事に要約できる。それは天上の三位一体から流出した宇宙発生論的な3幅対、つまり底辺で結びついた2つの三角形のシンボルが上下どちらも閉ざされている、という考えである。以上のことから、ただちにもう一つの数のシンボル体系が立ち現れてくる。神とその宇宙的な投影を同時に表す4系数のそれである。
さて2つの三角形ないし2通りの3系数は、たがいに交差しながらマクロコスモスとミクロコスモスとが合体した、いわゆるソロモンの印章ないし6本の枝を持つ6茫星形[ヘクサグラム]を形作る。その中心に挿入されたスワスティカは運動する4系数、つまり世界創造と宇宙的なるものの出現に関する伝統的な表現を思い起こさせる。
3系数にはさらに多様な意味がある。マクロコスモスとミクロコスモスとの間に類似の法則ーーー「下にあるものが上にある」や「わが姿に似せて人間をつくれ」と命じたヤーウェの言葉などーーーがみられることから、人間の本質と世界創造のうちには3系数があるともいう。「天上には3人の証人がいる。父とロゴスと聖霊である。地上にも同数の証人がいる。気と水と血である」。エリファス・レヴィが指摘するところによれば、このバトモス島のヨハネの神秘的な言葉は、ソロモンの印章の二重になった3系数に当てはまるという。レヴィはまた、ヘルメス主義的な大いなる作業が、硫黄と水銀と塩という三種の要素を用いて、3段階に分けてなされているとも強調している。いっぽう錬金術師たちの三位一体は、母体(原初のカオス)と太陽と月からなる。
(エルヴェ・マソン,「世界秘儀秘教事典」,蔵持不三也訳,原書房)
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