君のことを考えながらチョコレートケーキを食べた
雨が降り出して少し経ってからのことだ
どこにでもあるファミレスの
どこにでもある窓際の席で
僕は
めったにないことなのだけれど
チョコレートケーキを食べた
ケーキの中にはすっぱいジャムが入っていて
電線には
僕には名前のわからない鳥が
とまっていた
彼らがもしさえずっているとしても
店内に流れるBGMでそれはすっかりかき消されてしまう
チョコレートケーキはぱさぱさとしていて
僕はコーヒーをオカワリした
店内には多くの人がいて
男も女も
どっちもたくさんいて
笑ったりしゃべったりただ向きあわせだったりしている
僕は時々それを見ては
電線の鳥を眺めて
心の中では君のことを考えていた
どうしようもない時間はどこにでもあって
今日は僕の手元にある
昨日は一通の手紙の中に 今とおんなじ匂いがあった
雨が少し小降りになったような気がした
僕は店を出た
でも
鳥は決してさえずってなんかいなかった。
遠くを
電柱の丈に見合った遠くを眺めて
その姿は僕の時間に似ていた
僕が君の家の小さな魚だったとして
君は僕と一緒に水草の影で夢を見るのだろうか
空はどんよりとして
水をいっぱいに含んだ雲があって
僕は魚としてそこを泳いで君の住む家に行くよ
でも今日の日差しじゃ
きっと水草の影は緑じゃないかもしれないな
あの鳥の羽のような色合いの
水中の日かげで
僕は急にあの鳥のかわりに
君とさえずりたくなったんだ
たくさんの泡の中にたぶん消えてしまうようなどうでもいい
そんな声でね